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INTERVIEW

Overseas

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2015年10月号掲載

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Member:Nic Offer(Vo)

Interviewer:山元 翔一

-近年のあなたたちのサウンドは単に衝動的な熱量があるというよりは、知性のあるダンス・ミュージックを基盤にした、どこか禁欲的な熱を帯びた音像だと感じました。実際、バンドはどういったモードにあるのでしょうか?

歌詞もだんだん知的になってきているし、今作はもっと賢いレコードにはなってきていると思う。その知性は、これからも保っていきたいと思っているんだ。それは俺たちにとってやりがいのある挑戦でもあるし、今後もっと賢くなって、より大人なレコードを作れたらとは思うね。俺には、あまりその意見はわからないけど、「All U Writers」や「Sick Ass Moon」(Track.2)、「I Feel So Free」(Track.11)のようなトラックは、ある意味少し冷たい感じに聴こえるかもしれない。でも同時に、「All The Way」や「Ooo」(Track.5)、「Every Little Bit Counts」(Track.3)のようなトラックは衝動的で熱意がこもっている。このレコードには、そんなふうに様々なフィーリングが詰まっているんだ。俺たちは、ダンスというジャンルから始まって、その哲学を保ちつつ、境界線を押し広げようと努めてきた。傘をどんどん大きくしていっているんだよ。このレコードでは、より生音を使い、エッジを利かせたサウンドを使うことによってパンクの側面を持たせてもいるし、ダンス・ミュージック自体も変化してきている今、その側面も表現しているんだ。ダンスは常に大きなコンセプトだから、俺たちも、それをすべて詰め込めるよう、自分たちの傘を広げていっているんだよ。

-前作は、Jim Enoをプロデューサーに迎えて"洗練"や"シンプル化"といったことを命題として掲げていたと感じるのですが、今作において一貫して据えられたコンセプトなどはあったのでしょうか?

コンセプトをひとつに絞るには要素が幅広すぎる。俺たちは最初、このレコードのために40曲書いて、そのうち20曲をレコーディングして、最終的にはその中から11曲を選んだ。選んだ基準は、その中でどれがベストかということだけだった。40曲すべてにひとつの大きなテーマを持たせるっていうのは難しいしね。「All U Writers」、「Ooo」、「Every Little Nit Counts」、「Bam City」(Track.8)、すべてがまったく異なる作品なんだよ。どちらかと言えば、ショート・ストーリーのコレクションといった感じだな。このレコードでは、いろいろなストーリーが語られているんだ。

-今作は、"Trax"や"Dancemania"といったレーベルによる90年代初期のハウス・レコードから哲学的な影響を受けたと説明していますよね。それは自分たちが惚れ込んだ音を粗削りな方法で鳴らすというある種のパンク的な方法論に通じることかと思いますが、今作でその作品性にも大きく影響を与えるその"哲学"を取り込むことにいたった経緯を教えてください。

すごくシンプルだったよ。みんな俺たちをダンス・パンク・グループだと思っている。俺たちにとっては、パンクを作ることは退屈なんだけど、"パンク=粋な姿勢"だと捉えて、それを取り入れることはすごくエキサイティングなんだ。90年代初期のハウスなんかを聴いていると、ドラム・マシーンをミキシング・ボードにぶち込んでレコーディングするだけという、サウンドそのものを活かしたものが多い。すべてを完璧に磨き上げるのではなく、その瞬間に生まれるエキサイティングなサウンドをそのまま残しているんだ。例えば"Dancemania"のトラックだと、ベストな方法ではなくても、ヴォーカルをMPC上で切ってサッとレコーディングされているのを楽しむことができる。それこそが、俺たちが取り込みたかった部分。あれは哲学だと思うんだ。最近は、あらゆるジャンルの音楽に対して"パンク"という言葉が使われているだろ?"ジャズは現代のパンクだ"とか、"あれはブロンクスのパンクだ"とか。パンクという言葉は、粋で、その瞬間をそのまま捉えたものを表現する言葉として使われているんだよ。そういう意味で、ハウス・ミュージックは"パンク"だった時期があると俺たちは思っていて、それが90年代初期というわけ。

-ある意味、すごく実験的だったというわけですね?

その通り。あの時代は、すべてに対してオープンだったんだ。みんなが自分たちにできるすべてのことに目を向けていた。パンクと呼ばれるTHE CLASHやTHE SLITS、SEX PISTOLS、みんなそれぞれ違う個性を持ったグループだったけど、彼らは共通して様々なことにオープンだっただろ? 様々なことに挑戦することに対してオープンで、実際にそれを達成するというのはすごくクールだと思う。俺たちは、このレコードでそれをやりたかったんだ。すべてのことに目を向けて、できる限りいろいろなことを試したかったんだよ。

-これまでの作品は作品性に関係深いタイトルを掲げていましたが、今作に"As If"というタイトルを名づけた経緯を教えてください。どういった意味を込めていますか?

このアルバムには、曲によってそれぞれ異なるいろいろな"キャラ(特性)"があるんだけど、例えば、"as if motown=まるでモータウンみたいな"とか、90年代のハウス・レコードみたいな、とか、テクノ・プロジェクトみたいな、とか、そういった感じで曲を作っていったから、このタイトルにしたんだ。"As if"のあとに来る言葉を自分で想像できるというか。あともうひとつは、"As if!=そんなの気にしてられるか!"って意味のスラングだね。このタイトルには、そのふたつの意味があるんだ。

-ジャケット写真もこれまでの作品とは異なるテイストですね。今作の硬派な音楽性とは結びつかないある種のハッピーさがあり、むしろシニカルさがあるとも感じたのですが、どういった意図を含んでいるのでしょうか?

まず猿の顔の見た目が好きだったのと、このアルバムには採用されなかった曲の歌詞に少し繋がる部分があったからかな。バカなヤツらがたくさんいると、"猿どもがたくさんいる"みたいな言い方をするときがある。でもジャケットの猿は、"As if!!(=そんなの気にしない!)"という態度をとってるんだ。あと同時に、猿という自分たちの原始的な面に触れることも自分たちにとっては大切だと思ったから。自分たちの本能、直感と共に生きることも大切だしね。ちょっと生意気な感じのジャケットだけど、そういうわけで猿をカバーに使ったんだ。

-今作はライヴ・セットに近づけるという意図もあったとのことですが、時間の経過や情景の変化など、作品を通して何か具体的なイメージを提示しようという意図はありましたか?

いや特に。バンドの力強さが伝わればそれでよかった。希望を持った力強いレコードが作れればそれでよかったね。自分たちをさらに前進させて、自分たちが何を見つけることができるかを試したかった。自分たちが挑戦できそうな新境地に足を踏み入れたかっただけさ。そこから自分たちは何を達成できるか。それが表現されたのがこのレコードなんだ。

-いくつかの楽曲についてお聞きします。Track.1「All U Writers」は今作のサウンドの方向性を提示するハウスやミニマル的なエレクトロ・サウンドが基調となっていますね。あなた方はハウスやミニマルのどういったところに惹かれてますか? そしてそういった部分を楽曲に落とし込む際にはどういったことを意識しますか?

グルーヴが大きな役割を果たしているところかな。グルーヴは、俺たちにとってすごくエキサイティングな要素なんだ。身体が跳ね上がるような感覚を与えてくれる。落とし込むときは......特別な事は意識していないよ。とにかく自分たちも興奮するようなサウンドを作ろうとするだけ。グルーヴが1度生まれると、それが次に作るサウンドを導き出すんだ。「Sick Ass Moon」も「Bam City」も、グルーヴに導かれてあのサウンドができていった。グルーヴという基盤から自然と広がっていったから、そういった曲がどうやって広がっていったかは、言葉では説明できないんだよ。