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INTERVIEW

Overseas

THE VACCINES

2015年06月号掲載

THE VACCINES

Member:Freddie Cowan (Gt)

Interviewer:山口 智男

プロデューサーの人選からもTHE VACCINESが大ヒットした前2作からの飛躍を求めていることは明らかだった。轟音サーフ・ロックが歓迎され、デビューするやいなや"ギター・ロックの救世主"と謳われたロンドンの4人組。今回、3年ぶりにリリースする『English Graffiti』はシンセやピアノを使った脱ギター・ロックを思わせるものながら、インタビューに答えてくれたFreddie Cowan(Gt)によると、ギター・ロックの可能性をとことん押し広げる試みと言ってもいいかもしれない。その意味では、THE VACCINESらしさはこれっぽっちも失われていない。

-3年ぶりとなる新作『English Graffiti』のリリースを目前に控えた現在の心境は?

実は発売日(UKの発売日5月25日)が父親の誕生日なんだよ。俺からのプレゼントなんだ。ちょっと安上がりになっちゃうけど(笑)。

-今回は前2作で打ち出したロックンロール・バンドというイメージから2歩も3歩も踏み出した作品ですね。

そうだね。自分たちでかけていた制約を全部振りほどいて作ったような感じなんだ。しっくりくるまでじっくり時間もかけたしね。十分いいと思えるようになるまでは諦めちゃいけないと思って、それで何度も発売を延期したんだ。でも、仕上がりは本当に誇りに思っているよ。間違いなく、今までで1番長い間、録音コンソールの前にいたね。2月にやっと完成したんだ。そんなに長い時間をかけるのには慣れていなかったから、もうずっと前から発売されていたような気すらする。ほとんどの人がまだ聴いたことがないと思うとすごく不思議だよ。

-リリース後の反応がこれまでよりも楽しみなのでは?

俺はかなりナーヴァスになっているけど、みんながどう思うかは本当に気になるね。俺たちのことを信じてくれているから、それを裏切ったり、悲しませたりしてはいけないと思うんだ。

-アルバムの完成は2月だったとのことですが、今年1月、NMEのインタビューでJustin (Young/Vo/Gt)は"音的にも感情的にも2015年を物語る作品を作りたかった"と語っていましたが、アルバムが完成した現在、そういう作品になったと考えていますか?

そう思う。音的には、今しか作れないものがたくさんあるしね。必ずしも2015年にしか作れないものじゃないかもしれないけど、21世紀の音だ。現在のテクノロジーを使って、それまでとはまったく違う音を作っているからね。例えばギターもギターっぽい音じゃなくて、別のものみたいな音にしたいと思ってそういう音を作ったんだ。感情的には、今の世の中を、危機感を持って見ているような感じだね。

-2015年を代表するレコードを作るため、今回、バンドが実践したこと、および挑戦したこともあったでしょうね。

もちろん! 当然だよ。いつでも自分の能力をギリギリまで駆使しないといけないと思う。でないと、面白いものにはならないからね。いつでも自分をその先へ、その先へとプッシュする。それがクリエイティビティってものじゃないかな。例えば3コードしか知らなかったら、その3コードで何ができるかをとことん追求してみるんだ。ものすごく重要なことだと思う。自分の能力をギリギリまで駆使してベストを尽くしたときには必ず面白いものができると思うんだ。それができなくて、自分が心地いい範囲で満足してしまうと、面白味が減ってしまう。だから、歳を取ると昔ほどいいアルバムが作れなくなってしまうバンドがいるんだと思う。そういう奴らは自分の限界を押し広げたがらない。居心地いい環境の中で安住してしまうんだ。切羽詰った感がないと言うかね。俺たちは限界まで自分たちの能力をプッシュしていこうという意識があった。

-新作のサウンドは前2作とかなり違うものですが、そういうサウンドを作るため、Dave FridmannとCole M.G.N.を共同プロデューサーとして起用した? それとも、ふたりを起用したからそういうサウンドになった?

両方じゃないかな。彼らが助けてくれたからこういうサウンドになったという面もあるけど、こういうサウンドにしたいというのをまず俺たちから伝えたからね。Coleがとてもモダンなアプローチをしてくれたのが良かった。音がまばらな感じでね。外科医みたいにいろいろな要素を切り刻んだり削ぎ落としたりしていたよ。Daveも最高だったよ。彼はエキサイティングなことしかやらないから、俺たちが能力をギリギリまで駆使するのにとても力になってくれた。彼が退屈したら、それは面白くないってことだから(笑)。俺たち自身も、自分たちでやっていて面白いことを追求していった感じだね。でないと意味がない。

-ふたりが過去に手がけた作品で、ふたりを起用するきっかけになったものがあったんでしょうか?

Daveの場合は、特に興味を持ったのがTHE FLAMING LIPSやTAME IMPALAの作品だね。TAME IMPALAの作品は大好きだし、MERCURY REVのも良かった。MGMTもそうだし、彼が手がけたことで有名なコラボは多分全部大好きだと思う。Coleは......Ariel Pinkを手がけたし、NITE JEWELやBECKともやっている。今回思ったのは、彼らが作ってきたもののすべての要素を俺たちが取り入れてひとつのアルバムにすることができたら、俺たちの望み通りのものができるってことだったんだ。