Overseas
THE VACCINES
Skream! マガジン 2013年02月号掲載
2013.01.17 @SHIBUYA-AX
Writer 山口 智男
今回のライヴでその不満が解消されたから打ち明けると、前回(2012年2月)の単独公演はライヴそのものはよかったのだけれど、UKギター・ロックの救世主と謳われているにもかかわらず、Freddie Cowanのギターの音が思いの外、小さめで正直、やや物足りなさが残ったのだった。
そのリヴェンジを期待していた今回も1曲目の「No Hope」ではJustin Yong(Vo/Gt)のギターがギャンギャン鳴っている割にFreddieのギターがあまり聴こえてこないからどうなることかと思ったら、Freddieがギャーンと轟音を1発かましてから始まった「Wreckin’ Bar (Ra Ra Ra)」からちゃんと聴こえてきたので、これでライヴに集中できると、ほっと一安心。その「Wreckin’ Bar (Ra Ra Ra)」ではいきなり観客がJustinと一緒に歌い、ライヴは加速度的に盛り上がっていった。
SUMMER SONIC 2012から約5ヶ月。ロンドンの4人組、THE VACCINESが全英No.1ヒットになった2ndアルバム『The Vaccines Come Of Age』をひっさげ、早くも4度目の来日を実現させた。ついこの間観たばかりだよ、というファンがいたのか、満員御礼とまでは行かなかったものの、逆に言えば、この日、SHIBUYA-AXに集まったのはTHE VACCINESなら何度でも観たいというファンにちがいない。
だからなのか1stアルバムからの曲をたたみかけた前半から、もう盛り上がりが尋常ではなかった。途中、観客の盛り上がりに圧倒されたJustinが“ちょ、ちょっと待って。水ぐらい飲ませてよ”と訴えかける1コマも。そして、グビッと1口飲んだペットボトルを客席に放り投げると、“キャー!”と悲鳴に近い歓声が上がったもんだから、Justinは“おいおい、ただの水じゃないか”と苦笑い。
そんな観客の熱気に煽られたのか、これぞTHE VACCINES節と言いたい2作目からの1stシングル「Teenage Icon」から、インプロビゼーションっぽいバンドの演奏を挟んで「Under Your Thumb」につなげていった中盤から確実にギアが入れかわり、どんどんと熱度を増していった。
本番前のインタビューで、2作目のアルバムを作ることで、デビュー・アルバムの頃とは違うレベルのギタリストに成長できたと語ったFreddieは、ぐっとテンポを落とした「Aftershave Ocean」ではギターをかき鳴らす狂おしいプレイを聴かせ、「Ghost Town」ではTHE CRAMPSを連想させるあやしいフレーズを披露した。
大音量や音圧で圧倒するのではなく、生々しいサウンドにこだわり、カッティングや繊細なフレーズといった、どちらかと言うと技やニュアンスで聴かせるFreddieのギター・プレイは、デビュー当時の轟音ギター・バンドという短絡的なイメージを改めるという意味でも、UKギター・ロックの救世主という称賛にふさわしいという意味でも、今回のライヴの大きな聴きどころだったにちがいない。
アンコールの1曲目に演奏した「Bad Mood」は、バンドの成長を物語るメンバーお気に入りの1曲。そこで聴かせた、ひきつるようなギター・プレイは、さらなるバンドの成長と変化を予感させるものだった。
最後の最後に演奏した「Norgaard」では再び観客が大合唱。10分押しでスタートしたライヴが終わった時には5分巻いていた。もちろん、バンドが曲を飛ばしたわけでも手を抜いたわけでもない。前のめりになるぐらいノッていたということだろう。ロックンロールを基調にしたギター・ロック・バンドだから、もちろん大きな変化はないものの、そんなところからもバンドの成長と現在の勢いが感じられた。
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