Japanese
アーバンギャルド
2014年06月号掲載
Member:浜崎 容子 (Vo) 松永 天馬 (Vo) 瀬々 信 (Gt) 鍵山 喬一 (Dr)
Interviewer:荒金 良介
-今作でもそれを意識しました?
松永:そうですね。それはサウンドにも言えて、以前ドラムは打ち込みだったけど、メジャーで出した2枚のアルバムで生ドラムになって、僕たちなりにバンド感にこだわったんですね。だけど今回はバンド感を前提にしつつ、それをザッピングしたり、コラージュする要素も入ってるんですよ。だから、生音とそれを冷静に見て再編集した面白味のある楽曲群が揃ったなと。すごく厚いギターを入れてるけど、それをエディットして打ち込みみたいにしてる曲もあったりとか。それと今回はサポート・ミュージシャンやスタッフとの連携がしっかりできた。外部の血が導入されてもアーバンはアーバンであり続けられる余裕が出てきたということかもしれない。昨年ベスト・アルバムを作る上で、新曲を佐久間(正英)さんにプロデュースしてもらったんですが、その経験が自信に繋がった部分もあります。
-というのは?
瀬々:必要あるもの、ないもののチョイスの仕方や混ぜ方ですね。いままではガチャガチャ電子音があって、生音が後ろに引っ込む感じだったけど。佐久間さんは弦楽器をやってる方なので、生楽器を中心に持ってきて、それに対してキラキラしたものをくっつける。そのアレンジのやり方は勉強になりました。
-1曲1曲聴かせどころがはっきりしてますよね。
松永:歌詞に関しては、ちゃんと聴こえないと言われることがあって。今回のヴォーカル・レコーディングは、ディレクターの意向もあってものすごく綿密に時間をかけました。だから、浜崎のヴォーカルもこれまでと段違いで、言葉の意味を伝える力が強くなったと思います。
浜崎:歌詞カードを見なくても、聞き取れる感じというか。言葉がダイレクトに入ってくる感じにこだわって、ちょっと滑舌が悪かったり、ちょっと発音が弱いと、何度も録り直しました。1曲に対して1日かける感じで、みんなで1000本ノックと言って笑ってたんですけど(笑)。ほんとに1000本ノックをやらせてもらって、昔なら自分でテイクを選んでいたけど、ディレクターから俺を信用してくれと言われて、完全にお任せしました。それで1番ベストに聴こえるテイクを選んでくれたから凄いなと。自分の声じゃないみたいといったらヘンだけど、こんな聴こえ方をするんだ、こんな歌い方してるんだって思いました。引き出し方もうまくて"この歌詞はどう思って歌ってるの?"とか全部聞いてくださるんですよ。それで歌詞の世界にも没頭することができたから、とても楽しかったです。
-ある意味言葉の殺傷力は増してますね。
浜崎:狙い通りです。狙い撃ち(笑)。
-山本リンダですか。
浜崎:ははははは。
-アートワークは現代芸術家の会田誠さんの絵の一部を使用してますけど、アルバムを作る上でテーマにしたのは?
松永:日本の伝統文化や現代をテーマにしているので、あからさまに和風のメロディを使ってるところもあります。それと今の日本ってガラパゴスと言われてますけど、音楽的にもそれは言えますよね。世界的にはEDMがキてますが、日本ではボカロやアイドルが流行ってて、今回はEDMとボカロとアイドルをバンドでやってみたという印象。ヴォーカルはボカロみたいにザッピングしてるし、アイドル・ソングのようなテンションもあるし、エレクトロだけで聴かせる曲もある。かといって、全曲通して聴くといままでの中で1番ギターが聴こえてきたりもする。僕は正直、憤ってるんですよ。EDM、ボカロ、アイドル、バンド・サウンドが思ったよりも攪拌しないから。だからこそそれらをミックスした新しい音楽を作ろうと。今回は歌詞や見た目だけでなく、純粋に音楽として面白いものが作れたと思います。
-「君にハラキリ」は松田聖子を彷彿させる80'Sアイドル・ポップのようなニュアンスがあり、「自撮入門」は言葉の響きにドキッとしますが、今作の中でも1番コミカルな仕上がりですね。
松永:アーバンギャルドには主観性と客観性の両方のファクターがあるので、「自撮入門」も当事者が書いていたら、私は悲しい苦しいという曲になるかもしれない。けど、ユーモア・センスを用いて、笑う視点を持てたら楽になれると思うんですよ。心の闇を抱えながらも、それをシリアスに捉えるんじゃなく、笑いながら受け止めたいというポジティヴな考えを持ってる人も多いと思うので、そういう人にはストライクじゃないかなと。「君にハラキリ」はウェディング・ソングのつもりで書いたけど、ここまで爽やかな曲になるとは思わなかった(笑)。
-あと、ラスト曲「僕が世」の歌詞はラヴ・ソングのようですね。
松永:国をテーマにしてますけど、共同体ってその向こうに人が見えないと、愛せないと思うんですよ。あなたがいるから自分自身が存在できる。そういう曲ですね。歌詞はアルバムを通して喪失と再生、出会いと別れについて歌った曲が多くて、それも日本人の美的センスだと思います。桜は出会いと別れの象徴だし、"桜の樹の下には屍体が埋まっている"と梶井基次郎は言いましたけど、生と死が混在してるものに日本人は惹かれるのかなと。だから、いつにも増してそういう歌詞になったと思います。アルバム名もダブル・ミーニングですけど、この国は理想と現実のギャップにフタをする風潮があるので、それを明らかにしたかったんですよね。変な使命感に駆られながら!
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