Japanese
NOMELON NOLEMON
2022年09月号掲載
Writer 石角 友香
自身の表現の純度を下げないために、バンド経験を経てボカロPに活動の場を移したクリエイターは2000年代に胎動し、2010年代にはロック以上にロックが元来持っていた攻撃性やリアリティを発現させた。その実感を持って、他者と作品を作ることを選び取るクリエイターが増えた2020年代。NOMELON NOLEMON(以下:ノーメロ)の頭脳ですべてのコンポーズと作詞やアレンジ、楽曲の骨子を作るツミキもそんな出自の持ち主だ。一方、シンガー・ソングライターとして活動していたみきまりあは、スキルフルで様々なジャンルを消化できるヴォーカリスト。ふたりの出会いは必然であり、約1年前の8月、「INAZMA」で鮮烈なデビューを果たしてから、ほどなく2022年1月に1stフル・アルバム『POP』をリリース。現在進行形のJ-POPを体現するというアグレッシヴな意思が多彩な楽曲に封じ込められた、"強い"作品になった。生身の人間に再現不可能なボカロ表現に限りなく近く、且つ、スキルだけではない生身のヒューマニティを獲得したノーメロ。だが、その革新性はエクストリームな音楽性だけではない。ツミキが描く感情の機微の言語化能力であり、それをドラマチックに、リアルな具体として届けるみきまりあのヴォーカリゼーションの融合あってこそだったのだ。
アルバム・リリース後はツミキがReolの「赤裸裸」をコライト。他アーティストとのコライト自体、ツミキにとって初めての経験だったが、近いルーツを持ちながら、どちらかといえばヒップホップ的な楽曲に軸足を置いていたReolにとって新鮮な切り口をもたらしたと言えるだろう。一方のみきまりあはソロで「裸足のステップ」をリリース。歌い続けたいというシンガー・ソングライターとしての等身大の自身が綴られており、歌唱も愛らしい。これだけプロとして表現の振り幅を持っているふたりだからこそ、ノーメロで実現したい作風や世界観を確実に構築できるのだろう。
クリエイター・ユニットだからこそ、現実の音像でリスナーをいい意味で刺すことができるノーメロ。デビューから1年強となる9月14日に1st EP『感覚派』をリリースする。すでに配信されている3rdシングル「タッチ」や、8月22日に先行配信された「SUGAR」も含む全5曲は、ツミキの言葉を借りると"全A面シングル"。つまりどこを切っても現在地の勝負曲ということだ。
では具体的に1曲ずつ聴いていこう。EPの幕開きは先行配信曲でもある「SUGAR」。何より歪み系のギター・リフが耳に飛び込んでくる。そして和テイストなシンセ・フレーズから、少し懐かしささえある四つ打ちギター・ロックの肌触りを残しつつ、ビートの質感はデジタルな印象も。ツミキのルーツであるバンド・サウンドから、断続的なギターのコードをチョイスし、シンセ・ストリングスもうっすら聴こえる。あくまでもダンス・ミュージックやR&Bを経由してきたギター・ロックという音像が今の彼らしい。歌詞面では1Aでは今の自分は苦味が支配してるけれど、砂糖で誤魔化せばいいと開き直り、2Aでは"劣等とエゴの食い違い/誰の言葉に流されてんだ"、"こころに着火していこうぜ自らの為"と自身を鼓舞する。ちなみにこの楽曲はエナジー・ドリンク"ZONe"コラボ曲で、"ZONe"がアーティストを応援する"IMMERSIVE SONG PROJECT"の一環で、同プロジェクトではこれまでもYOASOBI(「ハルジオン」)、yama(「あるいは映画のような」、「血流」)、花譜(「危ノーマル」)らのアーティストとコラボし、"IMMERSIVE=没入"をテーマにした楽曲が多く生み出されてきた。ノーメロの没入感はつまりライヴ感なんじゃないだろうか。というのも、具体的にライヴで盛り上がりそうなだけでなく、MVは演奏シーンで構成。赤いグレッチを弾くまりあとタイトなドラムを叩くツミキは、まるで逆THE WHITE STRIPES。シンプルにライヴへの期待値が上がる仕上がりだ。
リスナーに楽曲の主人公の体感を疑似体験させるような音像と言葉へのこだわりと進化
一転して2曲目の「ウィスパー・シティ」は、シンセ・リフとシンセ・ベースで再構築した現代のシティ・ポップの趣きだ。まりあとツミキが地メロを交互に歌い、デュエットも存在。一人称だがふたりの人間が登場することで奥行きが増す。子供の頃は聴こえなかったノイズも、静寂の気づきも"夜のミュージック"が救う。器楽的に展開する歌メロも抑えめなヴォーカルで耳に心地よい。続く「フイルム」はフィルムを"フイルム"と表記する。実はそちらが正しい表記なのだが、どことなく懐かしさを表記にも込めた印象のある、ミニマルな音像のミディアム・チューン。浮遊系のシンセ・サウンドとフィンガー・スナップのエディットだけのシンプルなトラックに乗る、"ねえ/あたしがいつの日か化石になっても"という歌い出しはただ切ないだけではなく、現実に生きるということは終わりに向かっているのだというフラットな視線を感じる。ツミキの言語感覚の冴えは"モノクロでもカラフルでもない/こころで視た色のこと"という部分に顕著で、目に見えるものではなく、記憶のことを表現しているのだろうと思う。来世で会えるかどうかはわからないし、表現者は作品を残すことで存在した痕跡を残すのだと想像するが、そんなことを思わせるほど、単に恋愛における別れを歌った楽曲ではない何かが残る。そして、複雑なメロディを得意とするノーメロにあって、これほどひとつひとつの言葉をポツポツと発する楽曲も珍しく、そのことがまりあの声の個性を逆に引き出している。少し90年代後期の小林武史的なエヴァーグリーン感も思い出させる淡いアレンジと、コラージュ的なトラックの融合にノーメロの新しいステージを見る思いがした。
4曲目は絶賛上映中の橋本環奈主演映画"バイオレンスアクション"の挿入歌としても話題の「タッチ」。ヒロインが殺し屋のバイトをする専門学校生という設定に見事にハマった、ハードボイルドなジャズ・テイスト。聴きどころはノイジーなギターと、過去にないほど生きるか死ぬかのスリルを渇望するわかりやすい歌詞にある。しかもアクションを伴い、トンデモな設定な映画同様、アレンジにも歌詞にも激しく動きがあるのが特徴だ。ノーメロのこれまでを知らないリスナーも思わずリズムをとってしまいそうな、ポップスとしての完成度の高さが随所に仕掛けられている。ラストはBPM的には疾走しているのに、タイトルの"線香金魚"というワードからイメージできるように、命の儚さ、そしてその場所から出ることができない関係が描かれている。爽快なのにどこかこもった音像で終わることも象徴的で、細部にわたり、リスナーが主人公の体感を疑似体験できるようなアレンジが施されているようだ。もうひとつの大事なメタファーは匂い。人間のそれもそうだが、夏の匂いも同時に浮かび上がるような、五感に訴える音像と言葉選びのハマりが最高にいい。
冒頭にもツミキの言葉を引用したが、まさにこのEPはどの曲もシングルになり得る、ノーメロの多角的な側面を一曲一曲に色濃く反映した5曲だ。アルバム『POP』も曲の強度は高かったが、J-POPにこそ時代のリアリティを込めようとする力業が横溢していて、自分たちの存在意義を表明していた印象だった。だが、今のノーメロは奇をてらわず、より現在のJ-POPを具現化している。もうひとつ言えば、ライヴで映えそうなフィジカルを意識した楽曲が増えたことも、この1年の変化かもしれない。9月に東京と大阪で開催される初のワンマン・ライヴ"シャッターチャンス"の東京公演はすでにソールド・アウト(※8月下旬時点)。「SUGAR」のMVを観る限り、バンド然としたステージが予測できるが、これまでのレパートリーを考えると、想像できない部分も実は多い。EPリリース前だがおそらく新曲も多く盛り込まれるのではないだろうか。いよいよ生身のNOMELON NOLEMONが動き出す。
▼リリース情報
NOMELON NOLEMON
1st EP
『感覚派』
UXCL-290/¥2,000
[Sony Music Entertainment]
2022.9.14 ON SALE
amazon
TOWER RECORDS
HMV
1. SUGAR
2. ウィスパー・シティ
3. フイルム
4. タッチ
5. 線香金魚
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