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LIVE REPORT

Japanese

NOMELON NOLEMON

Skream! マガジン 2023年03月号掲載

2023.02.19 @KANDA SQUARE HALL

Writer 石角 友香 Photographer:Kato Shumpei

NOMELON NOLEMONがライヴを行う意義を2度目のワンマンでさらに明示した。昨年12月から3ヶ月連続で"朝昼夜"をテーマに「透明水曜日」、「ダダ」、「バッド・ラヴ」とジャンル感の異なる3作を配信リリース。その集大成となるのが今回のライヴだ。前回のWWW Xの約1.5倍のキャパシティとなるKANDA SQUARE HALLは、ソールド・アウトの大盛況で、ステージもスケールアップした様子に開演前から静かに熱い視線が送られる。

前回の"NOMELON NOLEMON 1st ONE-MAN LIVE 『シャッターチャンス』"から地続きなイメージの段差のあるステージ・セットだが、今回は時間をテーマにしているだけあり、オープニングは背景のLEDヴィジョンに"19:00"の文字が映し出されてカウントが始まり、0:00ジャストを告げるアナウンスとともに、この日のためにリアレンジされた「cocoon」でスタート。ツミキが優しい音像の鍵盤を弾き、みきまりあも抑えた歌唱で、前回とは真逆なアプローチを見せる。続いてツミキもまりあも白い衣装に白いギターで、それがオリジナルな生命体のように見えることで曲の印象を強める「night draw」。お馴染みになったサポート、尋瀬ロル(Ba)とれあい(Gt/Dr)の演奏がフィジカルな強さを増すと同時に、エメラルド・グリーンのレーザーが放出され、夜の中にポツンと残される体感の中、ライヴの軸のひとつである「透明水曜日」が学校生活を想起させる映像を背景に歌われる。丁寧な手書き文字による歌詞が下にスクロールされていくユニークな映像もまた、時間の経過を印象づけた。疾走感もあり爽やかな曲だが、交わらない気持ちや儚さも同時に湧き上がる見事な演出だ。さらにエレクトロニックなシーケンスが効果的な「線香金魚」に繋ぎ、繊細なタームを作り出した。

MCでは満員のフロアと声出しが可能になったことに感激をあらわにするふたり。関西弁で素の会話をするようになったこともグッとファンと距離を縮めた感じだ。ツミキがスタンディングで、チルなR&BテイストのヴォーカルでAメロを歌い出すのも新鮮な「プーループ」では、まりあは階段状のセットの半ばで歌う。どこか演劇的な表現がいい。ラヴ・ソングのデュエットでありつつ、ふたりの衣装のせいもあって寓話的に響くのもNOMELON NOLEMONらしさだ。ふわっとした声の重なりを堪能させてくれたあと、いったんふたりはステージ袖に下がり、サポート・メンバーがハウス・ミュージックの同期の上に生音を重ねて、シームレスに時間帯を変えていく。短時間でグッとカジュアルな衣装にチェンジして再登場したふたりは、アクティヴなダンス・チューン「ダダ」で、トークするように切れのいいヴォーカルを交互に繰り出す。ローの効いたベース・サウンドでここまでとまったく違う空間に転送された気分で、体感での時間の流れを生み出している感じだ。さらにソリッドでスキルフルなまりあのヴォーカルが冴え渡る「rem swimming」へ突入。相変わらずローが身体を直撃しつつ、ツミキの鋭いギター・リフも明快に聴こえる。彼のルーツにあるであろうダンス×ロックを体現する姿はとりわけ楽しそうだ。

再びのMCではまりあが"声が出せるっていいですね。人間! って感じで"と、素直な心情なのだが笑いも起こす。衣装の早変わりでも"朝昼夜"を表現したかった主旨も伝えていた。そう。1回のワンマンにかける熱量や準備が恐ろしく高いのがNOMELON NOLEMONの特徴であり、今回はステージ・セットやセットリストに加え、まりあがデザイナーやスタイリストと衣装を念入りに作り上げたことも大きな見どころだ。

ツミキがドラムにスイッチしての「ゴーストキッス」は、バンド・アンサンブルの屈強さを見せ、ゲーム・ミュージック風のシンセ・リフが響く「ゴー・トゥ・ヘヴン」ではまりあのモノローグっぽいヴォーカルが孤独の色を深め、サビの擬音語パートではオーディエンスも振りを合わせて踊る。シリアスなだけでは終わらない、現状をひっくり返すしたたかなセンスを持つ歌詞に頼もしさを感じる場面だった。そしてまりあがグレッチを携えると、それだけで情景が変わり、音像もザクザク切り込むハード・チューンに切り替わる「SUGAR」。ツミキのタイトなドラミングも四つ打ちのアッパーな体感を加速させる。実に魅せるドラマーだ。ツミキだけでなく、サポートのれあいも楽器をスイッチすることが、NOMELON NOLEMONのライヴの醍醐味を生み出している。しかもたびたびツミキとまりあは1段低いフロアに近い場所にも下りてきて、オーディエンスを煽ることで、高さも奥行きも目いっぱい使う立体的な演出で楽しませるのだ。演劇的な部分と生身を感じさせるライヴらしい部分を行き来する手法がさらに濃密になり、それが楽曲の方向性とシンクロする面白み。このユニットの稀有な部分がますます視覚化されている。

背景が夕陽から雲間の月に変わり、またふたりがステージ袖に捌けている間はサポートがベース・ソロとギター・ソロを展開し、ふたりの紹介にもあてられていた。衣装替えしたツミキは蛍光色をあしらったブルゾン、まりあは豪華な装飾をあしらった赤いスカートが映える。階段の一番上から登場したまりあが歌い始めたのは最新曲「バッド・ラヴ」。現代風にアップデートされたシティ・ポップで、彼らの新しい側面を演出やまりあの振りでも明確にした感じだ。続く「syrup」のラテンが融合したミクスチャー・ロック感をスラップ・ベースが引き立て、続いても馴染み深い「イエロウ」ではツミキがピアノへ移動し、ステージ上でまりあと向き合う。ステージが大きくなってもしっかりベッドルーム・ポップ感を醸し出すあたり、人混みから逃れて部屋へ帰る時間の流れができていた。

感情を揺さぶりながらも、一連の時間の経過を描いてきたライヴの終盤に、ツミキがなぜ"24"というテーマを掲げたかを話す。いわく、ライヴはここにいる人と時間を共有できる現実であり、よく夢の世界から現実へ戻ると喩えられるけれど、彼はライヴは紛れもない現実だと言い切った。だからこそ、この90分を分かち合えることに意味があるのだと誰より強く認識しているのは、ツミキ自身だろう。

なんのギミックもないシンプルでメロディのいい「moonshadow」が、彼らのライヴに対する想いを聞いたあと、より沁みた。明けてほしくない夜に名残がありつつ、その先の昼間の世界を生きてくためのアンセムとして、実質的なラスト・ナンバーと言える「INAZMA」がタフに鳴らされる。ライヴで宣言するように歌われる"歪さを叫ぶことこそが/ロックンロールの正体。"というフレーズでは、誰もが自分の言葉のように手を上げ、ステージにエネルギーを送っていた。そして本編のみで勝負する彼ららしく、ラストは1曲目でも演奏した「cocoon」のオリジナル・バージョン。マーチング・ドラムで始まり、肉体性を取り戻したかのように重低音とシューゲイズ・ギターの轟音で空間を染め上げる。ツミキが言ったように、これは一瞬の夢ではなく間違いなく身体にも記憶にも残る現実の時間。ひとつひとつ、新しい武器を増やしながらオリジナルなライヴ・パフォーマンスを強化していく、NOMELON NOLEMONの現在地を見た。


[Setlist]
1. cocoon
2. night draw
3. 透明水曜日
4. 線香金魚
5. プーループ
6. ダダ
7. rem swimming
8. ゴーストキッス
9. ゴー・トゥ・ヘヴン
10. SUGAR
11. バッド・ラヴ
12. syrup
13. イエロウ
14. moonshadow
15. INAZMA
16. cocoon

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