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KASABIAN

 

KASABIAN

Writer 山本 真由

2020年、強烈なキャラクターと求心力で人気を集めていた、フロントマン Tom Meighanがバンドを去ったことで、KASABIANの将来を案じたファンも多かったのではないだろうか。しかし翌2021年、ADELEやSam Smithなどを手掛けたヒットメーカー、Fraser T Smithがプロデュースしたニュー・シングル「Alygatyr」を発表し、見事にその不安を払拭してくれた。これまでもソングライティング、ギターだけでなくバッキング・ヴォーカルも担当し、バンドの頭脳として活躍してきたSerge Pizzornoがリード・ヴォーカルも務めたことにより、KASABIANのKASABIANたる要素が欠けることなく、うまく前に進んだ印象を与えてくれたのだった。

そして、そんな彼らが今年の夏、新体制初のアルバム『The Alchemist's Euphoria』をリリースし、"SONICMANIA"(東京)&"SUMMER SONIC 2022"(大阪)で5年ぶりの来日を果たす。今回は、期待が高まる来日公演とその新作をより楽しむために、彼らの活躍を今一度振り返りつつ、ライヴでぜひ聴きたい名曲を紹介していこうと思う。

1997年に英レスターで、Serge PizzornoとTom Meighanを中心にバンドを結成。その後、2004年にデビュー・アルバム『Kasabian』をリリースすると、瞬く間に人気バンドの仲間入りを果たす。大ヒットしたシングル「Club Foot」「L.S.F.」など、キャッチーでありながらダークな音楽性と、妖しい神秘性を持ったメンバーのルックスも相まって、個性的なバンドが数多く登場した当時のUKロック・シーンの中でも、異質な存在として輝いて見えたのだ。また、アンセミックな楽曲と、PRIMAL SCREAMとも比較されるダンサブルなビートも相まって、ロックの新時代を示すバンドとして多くの音楽ファンを熱狂させた。そして、2006年リリースの2ndアルバム『Empire』では、初登場全英1位を獲得。「Empire」や「Shoot The Runner」といったシングル曲もヒットし、一発屋では終わらないその実力の確かさを世に知らしめた。

その後もコンスタントに新作を発表し、3rdアルバム『West Ryder Pauper Lunatic Asylum』(2009年)、4thアルバム『Velociraptor!』(2011年)、5thアルバム『48:13』(2014年)と、連続でプラチナ・アルバムを獲得。ヒット曲を出し続け、大規模フェスでのヘッドライナーを務めるバンドへと成長した。さらに、2017年リリースの前作『For Crying Out Loud』では、それまでのKASABIANらしさは残しつつも冒険心のある幅広い楽曲を詰め込み、バンドの成熟とさらなる進化を感じさせている。

そして、今作『The Alchemist's Euphoria』。やはり印象的なのは、Tomの不在がまったくマイナスになっていないバンドとしてのまとまりだ。これまでは、Tomというある種の異分子的な個性を持ったヴォーカルが、絶妙なバランスでバンドのサウンドを乗りこなすスリルのようなものが潜在的にあって、空気感を作り出していたのだな、となんとなく気づかされた。今作では、バンドのソングライティングの肝を握るSergeがヴォーカルを務めていることによって、不思議と"しっくりくる"サウンドになっている。もともとコーラスを担当していたし、Sergeがリード・ヴォーカルをとる楽曲もあったのだから、違和感は有るはずもなく、むしろ最初からこうだったのではという感覚になる。

そして、今作のもうひとつの聴きどころは、モダンなエレクトロ・サウンドを意識したアレンジだ。これは、プロデューサー Fraser T Smithの手腕もあるだろう。これまでのエッジの効いたサウンドももちろん彼らの魅力のひとつではあるが、丸みのあるサウンドは洗練された印象を与え、"インディー・ロック"と言われることを嫌ってきたバンドにとっては、目指していた方向性へ辿り着いたと言えるのかもしれない。

そんな新作を引っ提げ、"SUMMER SONIC"の舞台に帰ってくるKASABIAN。今年の夏は、久々に大規模なフェスに参加するという方も多いだろうし、5年ぶりの来日公演には否応なしに期待が高まる。デビュー以来、ダンサブルなグルーヴと攻撃的なサウンドで、型破りなロック・スタイルを貫いてきたKASABIANの、進化した姿をぜひその目で見届けてほしい。


ライヴで聴きたい! KASABIANの名曲10選


①「Club Foot」

バンドの人気を決定づけたデビュー・アルバムを代表するシングル曲。


②「L.S.F.」

広い会場でライヴ映えする壮大さのある、初期の代表曲のひとつ。


③「Empire」

ドラマチックな展開が魅力の、2ndアルバム代表曲。


④「Fire」

ライヴの終盤で聴きたい定番の人気楽曲。
▼MV

▼新体制でのライヴ映像


⑤「Underdog」

耳に残るギター・リフに中毒性あり。爆音で楽しみたい曲。


⑥「Eez-eh」

ダンサブルなビートに盛り上がること間違いなしの1曲。


⑦「Ill Ray (The King)」

アップテンポで踊れる、前作の人気曲。


⑧「You're In Love With A Psycho」

ポップでキャッチー、ちょっとレトロな感じがお洒落な楽曲。


⑨「Chemicals」

疾走感があり、スタジアム・ライヴ映えしそうな新曲。
▼MV

▼新体制でのライヴ映像


⑩「Alygatyr」

これぞKASABIAN! という強烈なビートとギターで彩られた新アンセム




▼リリース情報
KASABIAN
ニュー・アルバム
『The Alchemist's Euphoria』
kasabian_the_alchemists_euphoria.jpg
国内盤:NOW ON SALE
SICP-6473/¥2,640(税込)
amazon TOWER RECORDS HMV

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