Japanese
GOING UNDER GROUND
2010年11月号掲載
Writer 島根 希実
キーボード・伊藤洋一の脱退、そしてレーベル移籍後初のシングルとなった前作『LISTEN TO THE STEREO!!』。この曲は、まさに“新生GOING UNDER GROUND”の始動を打ち鳴らす開放感に満ちていた。まるで、スタートの合図を、ピストルを打ち鳴らすやいなや、フライング気味に走り出し全力疾走するかのごとく、バンドを取り巻く状況の全てを蹴散らし、打ちあがろうとする意思表示のようだった。そしてそれは、「もういいじゃない、そろそろ音楽の話しをしようぜ!ひと盛り上がりしようぜ!」というバンドからの呼びかけでもあった。深刻な、重い宣誓ではなく、扉をあけたらいきなりそこはサプライズのパーティー会場で、こちらとしては、状況はまったく分からないが、ただただ楽しいというような、実に彼ららしい次への進め方。感傷的な状況から、その方向を一気に180度変えたわけだ。
そして新生GOING UNDER GROUNDのシングル第二弾が本作『LONG WAY TO GO』。まだ“新生”と言わせてください。なぜならパーティーはまだ続いているのだから。事実彼らも歌っている。“パーティーはNEVER ENDING”と。そう、この底抜けに明るいロック・チューンでもって、ただ音楽を楽しもうというシンプルな喜びをゴーイングは再び宣誓したのだ。
『LISTEN TO THE STEREO!!』と『LONG WAY TO GO』は地続きの物語といえる。2つで一つとでもいおうか。まずは、前作の前だけ向いていこうという希望に満ちたシンプルなメッセージ、その勢いと圧倒的な明るさが、全てのセンチメンタルを吹き消し、一気に音楽へと引き戻してくれた。つまり、前作は、とりあえず体全体で帰ってきたGOING UNDER GROUNDを感じようというウォームアップだった。そして、ようやく呼吸も整い、そもそもパーティーの主宰者は誰なのか、テーブルにはどんなご馳走が並んでいるのかと、周囲の状況も見えるようになったところで、次の曲「LONG WAY TO GO」が流れてきたわけだ。こういうことを言うと、じゃあ前作は本腰いれてなかったっていうのかよ!?と誤解を招きそうだが、いえいえ、とんでもない。“新しい何か”が求められる局面にある中で、バンドは自身を奮い立たせるのみならず、私たちも明るいほうへと導くきっかけをくれたのだ。
ただきっかけはきっかけ。まだ、彼らの真髄である“あのメロディ”は、まだ聞こえてこなかった。自分の中に、ありもしないドラマが生まれる。それがGOING UNDER GROUNDなのだ。人生なんてそんなにドラマチックなもんじゃない。学生時代、スポットライトを浴びるのはクラスのほんの一部、イケてるグループだけだったし。あとはそいつらの存在を際立たせるサブキャラにすぎない。地味な女子が、メガネをとったら美少女だったとか、朝ぶつかったあの子が転校生としてやってきたとか、そんなことがあるわけないじゃないか。本や映画になるような、波乱万丈なんて人生そうそうありはしない。
それでも「STAND BY ME」を聴けば泣けてくるのはどういうことか。いきなり心の弱いところをがっとわしづかみにするイントロ。そして次に聴こえてくる、歌いだし「重ねた年月が僕たちを離してゆく所です」のワンフレーズを聴いた瞬間、もう涙で前が見えない。
そうやって、自分の中に“特別”を見いだすことができるのが彼ら。何もないはずなのに、何かがきらきらと輝き出すように、GOING UNDER GROUNDのメロディと言葉には、全ての思い出を特別として肯定し、特別なドラマだったのだと思わせてくれる、優しいポジティブが溢れている。
本作『LONG WAY TO GO』を聴いて、思わず「おかえり」と言いたくなった。心ごとかっさらうスピード感と、その清々しいメロディの中にあるセンチメンタルは、何度も心を締めつけ、涙線を僅かに刺激しながら通り過ぎていく。あとに残るのは、胸がきゅんとする感覚。この曲は、確かに『LISTEN TO THE STEREO!!』と地続きであり、新たなステージの幕開けの曲であるが、最初の歌いだし、そのふりきれたテンションの向こうには、確かに“あのメロディ”が溢れている。眩しい思い出たちが目の前をちらついて、思わず泣きだしそうになった時、“あぁこれがゴーイングだ”と思った。本当に、おかえりGOING UNDER GROUND!!
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