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LIVE REPORT

Japanese

GOING UNDER GROUND

2011.05.04 @日比谷野外大音楽堂

Writer 伊藤 洋輔

こんなにも力強いパフォーマンスを観たのはいつぶりだろう。GOING UNDER GROUNDのツアー・ファイナル、日比谷野音公演。今回のツアーは新作『稲川くん』のリリースとメジャー・デビュー10周年記念が重なるものだが、キーワードとしては「再生」や「復活」という言葉が想い浮かぶ。そう、前作『LUCKY STAR』制作時からバンド活動はどうにも息詰まり、そこからメンバー脱退、レーベル移籍、個々のソロ活動と紆余曲折を経て辿り着いた……いや、初期の瑞々しい境地を取り戻すことができたからこそ浮かび上がるのだ。フロントマン松本素生(Vo&Gt)は迷いなく叫んだ、“新生GOING UNDER GROUNDをよろしく!”と。そんな想いはお天道様にも届いたのか、聖地野音には春と夏の狭間の心地良い空気が漂っている。こんな絶好のコンディションには、彼らの持ち味である爽快なメロディがよりいっそう映えるのだ。ステージから放たれたものは、澄んだ空をどこまでも飛翔するように響き渡っていく。いつもと変わらないズッコケMCの笑いも含め、この日の勇姿に、詰めかけた多くのオーディエンスは数え切れないほどぐっときただろう。そして、オープニングで中澤(Gt&Vo)がステージに登場するなり、おどけながらも叫んだ言葉を幾度となく噛み締めたのでは――“帰って来たぜぇ!”

1曲目は「Heavenly」、しっとりと聴かせながらジワジワと空間を染め上げる。そして松本の「いくぜ!」で飛び出したのがゴーイングの青春性を象徴したキラー・チューン「トワイライト」!いきなりの蒼い閃光が心を鷲づかむ。この流れでのっけからアンセミックな一体感が生まれ、空間の熱が一気に急上昇した。その熱のまま「虹ヶ丘」へ。まさに野音映えする小気味良いピアノのフレーズが走り、自ずと身体が揺れてしまう。3曲終え、中澤は「今日はいいとこテンコ盛りでいくから!」とますます意気込み全体を煽る。そして、松本は印象的な宣言をした。「俺は今後10年このバンドやるって決めたから。そして10年後にまたここでライヴやるとき、あの時の野音を観てるんだぜって自慢できるライヴに今日はするからさ」。そうして披露されたのは新作から「所帯持ちのロードムービー」。この楽曲の“そこへゆけ!からだひとつ持って 超えてゆけ!笑えるならいいさ”という一節は感慨深く響いた。“そこ”とはまさに松本が宣言した10年後の未来のようで、これから起こる困難にも“笑える”なら立ち向かっていこう、と。その歌声は優しくも力強く、そして伸びやかにゴーイングが新作で培った強固な意志を伝えるようだった。この想いはメンバーも共有しているのだろう。重厚なビートを紡ぐ鉄壁のアンサンブルが光る。それはバンド初期の楽曲「ピアノを弾けば」に「ダイアリー」、そして「夕暮れ白書」にも表れるが、技術的な云々と言うより、なにより純真に楽しんでいる想いが満ちているのだ。これこそ、今だからこその迷いなき輝きなのかもしれない。

陽が傾く。時折冷たい風が吹き抜け肌寒さを感じるが、フォーク調の「詩人にラブソングを」が抱きしめるような暖かみを与えてくれる。同様に、「ジョニーさん」や「ベッドタウンズチャイム」で手拍子やコール&レスポンスでピースフルな高揚感を喚起させ、中盤に入っても熱は冷めない。そんな中、タイトル通りの煌めきをみせた「夜の宝石」は素晴らしいパフォーマンスだった。まるで哀愁と情熱が入り混じるような叙情性を醸し、繊細でありながらどこまでも突き抜ける歌声とメロディが轟く。そのグルーヴ感に心地良く揺れていたオーディエンスに冷水ならぬ熱湯を注ぐような、再び蒼い閃光が走る!アンセム・ナンバー「ボーイズライフ」!拳を掲げすべてのオーディエンスが熱唱する。その光景は“おぉ、熱いぜゴーイング!”“待ってました!”“おかえり!”なんてひとつひとつの拳が語っているようだ。その熱気に「LISTEN TO THE STEREO!!」~「RAW LIFE」と新作のパンキッシュなナンバーが続く。もちろん、バンドもオーディエンスもテンションはアガる一方だ。間髪容れずに軽快なピアノが躍る「My Treasure」、中澤が熱唱した「ショートバケイション」、お馴染みタオル回しで空間が弾けた「Holiday」、シンガロングの嵐にさながらフーリガン!?と盛り上がった「LONG WAY TO GO」と繰り広げ、本編ラストはエモさ爆発「ハートビート」!せつないメロディに乗せて大合唱が沸き起こり、普遍性の高さをまざまざと見せつけられた。新生ゴーイングを祝すように、いつまでも拍手が鳴り止まない。すでにお腹いっぱい楽しませてもらったが、さらなる反則技がアンコールで待っていた――。

辺りはすっかり闇夜に包まれた。アンコール1曲目、「新曲ができまくっている」というMCから披露されたのは未発表曲「Shining」。流麗なメロディは現在の良好なバンド状況をそのまま反映させたかのようで、気持ちのいい作風だ。そして、この夜のハイライトはここに――「今日、洋一がライヴ観に来るって言ってくれて、単純に嬉しかったね。だから1曲だけセッションしたいと思います!」と松本が叫びなんと脱退した伊藤洋一がステージに登場し「グラフティー」に突入!えぇ~!これには悲鳴に近い声が全体から上がる。イントロのシンセが鳴り拳を突き上げる洋一、ちょっと苦笑混じりに見つめる松本……なんだか涙腺が緩むなぁ。想えば、2年前のここ野音のステージが5人でのラスト・ライヴだった。松本は単純に嬉しかったからなんて言ってたけど、これは2年間あらゆる葛藤と戦い続け、苦心して手に入れた『稲川くん』という答えがあったからこそできる過去の清算だ。そして、真意としてバンドの第2章のスタートを意味付けたかったのだろう。最後はふたり、ガッチリと抱擁して洋一はステージを去るが、そこにセンチメンタルな空気などなく、清々しいほどの笑顔がメンバーに、そして多くのファンにもあった。大ラスは新作から「さよなら僕のハックルベリー」。何度目だ?されど繊細なメロディに力強い歌声が蒼い閃光となり心を突き抜けた。

最後の最後まで躍らされ、叫ばされ、笑わしてもくれた。ここにきてGOING UNDER GROUNDというバンドがこれほどまでに強くなるとは誰が想像しただろうか?その姿を観るにつけ、まさに悟りを会得した感じ……というより、そんな小難しい表現じゃなくて、スーパー・サイヤ人になれたってこと!うん、こっちのほうがピッタリだ。新作までの2年間というのはバンド史に残る重要なターニング・ポイントとなった。バンド結成から考えるともうすぐ20年にもなる。そんなバンドがデビューから青春性を醸し走り続けるというのは、やっぱりすごいことなのだ。まだまだ、彼らは何かをやらかしてくれるだろう。そう希望の持てるパフォーマンスだった。そして10年後、ここにいた多くのファンがこの日の野音公演を自慢するだろう。“あの日はヤバイくらいすごかったぜ!”って……。


[ 2011.06.15 UP DATE] ライター:道明 利友によるレポートはこちら

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