Japanese
ドレスコーズ
Skream! マガジン 2021年08月号掲載
2021.06.29 @川崎CLUB CITTA'
Writer 石角 友香 Photo by 森好弘
サブスクリプションでのリリース形態を最大限に活用し、限りなく生まれたてに近い状態から歌が加わり、もしくは演奏者が変わり、楽器が増えミックスのバランスが変わっていく――ドレスコーズの新作『バイエル』はその過程も都度の音源もすべてが作品であり、"音楽を聴く、解釈する"ことの幅を今一度、再考する装置(志磨遼平は"ラボ"と呼んだが)として大いに機能した。だが、この"変奏"と題されたツアーこそが、更新の最たるものだったのだ。
会場の川崎CLUB CITTA'のこの日の様相は普段とは異なり、開場してからも無音。ステージ中央のおそらく志磨が立つであろうマイク・スタンドを、斜め後ろからピンスポットが照らしているだけだ。静かにステージを見守っていると、暗転後、アルバムのピアノ曲「スコラ」が流れる中、今回公募で集まったメンバーである田代祐也(Gt)、原元由紀(Ba/Fagotto)、ミズグチハルキ(Dr/Per/Pf)、成澤美陽(Cello)が場内からステージに上がる。それぞれの活動をしているミュージシャンではあるけれど、我々オーディエンスの中から参加した勇敢な人物という印象を受ける演出である。4人のキャラクターや服装がその人個人のものであることも、小さな社会のようで非常にワクワクしてしまう。
ライヴは『バイエル』の曲順どおり進行していくのだが、それが筋だと感じる。曲のアレンジは変化していったが、曲順は歌詞が持つ思考の経過を辿っているように思うからだ。アコギを抱えた志磨が登場し、ごく少ない音数のアコギとミズグチのスレイベル、合唱による「大疫病の年に」で厳かに始まった。未だ日常は取り戻せていないけれど、祈りのようなこの始まりに集中力が高まる。メンバーがオーケストラのチューニングのように音を鳴らして始まった「はなれている」で、田代の定石にとらわれない、それでいてエレキ・ギターでしか鳴らせないスタイルや、ミズグチのバスドラムを使用しないフロア・タムの効果的な使い方など、メンバー4人の演奏を必死で耳と目で追う自分に気づく。志磨のヴォーカルには深いエコーがかかっており、そこでようやくフロントマンの存在にも目をやるほどだったのだ。曲間にインプロビゼーション的な田代のギターが聴こえ、歌始まりの「ちがいをみとめる」ではフロア・タムとスネアがオールディーズのような、もしくは甘いサイケデリアを醸すTHE JESUS AND MARY CHAINのような響き。この5人で『バイエル』は明らかに生まれ変わっている。
ユニークなのに違和感がなかったのは、原元が鍵盤ハーモニカを手にして始まった「不良になる」。リフの印象はチェロの存在感が大きい。チェロの存在は続く「ローレライ」のイントロでの旋律でさらに増幅。こうして思い返しても、志磨のヴォーカルやアクションも印象に残っているはずだが、すべてを記憶に刻むことはできないのだなというのも、今回のライヴでの発見だ。が、この曲で"きずつけた ぶんだけ ぼくをきずつけていいから"と歌いながら、腕を切る志磨の仕草は、触れることが人を傷つけてしまうかもしれない疫病の事実を思わせた。この作品はとてもリアルだ。フリーキーなギターとチェロのアウトロをずっと聴いていたかった。「しずかなせんそう」では荒涼とした――例えば、焼け野原で歌しか残っていないような印象のアレンジ。ミズグチのまっすぐなコーラスが一条の光に思えた。本当に2ヶ月で初めて出会ってからリハーサルをし、ツアーを経てここまで人間は息を合わせられるのか。しかも、4人はテンポや曲の尺こそ決まっているだろうが、その人でしかない演奏をしているように見えた。これは楽器の型にハマらない編成もひとつの理由だろう。それはおそらく志磨の慧眼なのだ。
"ドレスコーズとしては2年ぶりのツアーになりました。バンドマンとして2年ツアーしなかったのは初めてで、この前のツアーは「THE END OF THE WORLD PARTY」、世界が終わる前にパーティーをしようってツアーをしたらこんなご時世になりましたけど、みんなに会えて良かった。僕もひとり家に籠もってピアノを覚え、そこから見える風景をスケッチしてできたのが『バイエル』というアルバムで。でも、完成形はあえて余白を残していて、完成の先にもうひとつの『バイエル』を演奏しよう、というのがこのツアー「変奏」です"と、経緯を説明したのち、メンバー紹介をした。
チェロとファゴットが奏でる凄みがアバンギャルドにすら感じられた「相互扶助」。歌メロのニュアンスすら変えていく。ピアノはアルバム通りだが、そこに周波数の合わない電波のようなノイズが加わった「不要不急」はどこか不穏なのだが、"不要不急だけど/きれいな うた"という歌唱に、シンプルに心が揺り動かされた。現場のライヴでは様々な苦境をMCで耳にすることもあるし、演者ではない自分も悔しい思いをするが、このフレーズには問答無用の真実がある。この曲でのノイズはそのまま「ぼくをすきなきみ」でも続き、ピアノとチェロ、ファゴットがクラシカルなアンサンブルの印象で、そこにくぐもったギターの音色が重なることで、異なる5人の演奏家の魂が立ち上がった。
唯一「よいこになる」はアルバムから選曲されず、今、新しい意味を持ってアルバム『オーディション』から「おわりに」がチョイスされ、マーチング・ドラムやシンバルが力強く曲を更新。さらに毛皮のマリーズの「人生Ⅱ」も"変奏"されたが、先生が教えてくれなかったことに気づいたのなら、自分で飛び込んでいくしかないのだ、と思う。ステージ上の志磨はしかし、愛する誰かを傷つけた人間を許さないし、嘘ばっかり教えた先生に中指を立てる。この日のライヴの中で初めて大きなアクションを見せたぐらいだ。白熱するバンドの見事なエンディングに大きな拍手が起きる。
本編ラストは"変わってしまった街、変わってしまった僕らの暮らしに心を込めて歌います"と、「弦楽四重奏曲第9番ホ長調「東京」」を歌い出した。毛皮のマリーズ時代に志磨がほぼソロ体制で作り上げた曲が、今明らかにバンドで鳴らされていることにも、『バイエル』のテーマである"学びと成長"が通底していると感じ、表現者 志磨遼平の現在地を見た思いだ。
アンコールでは、オリジナルの「星の王子さま(バイオリンのための)」がチェロのアレンジになっているため、"星の王子さま(チェロのための)"と改題された曲をチェロはもちろん、グロッケンやファゴットが彩る。志磨のヴォーカルも思うまま歌えているようで、ステージのヘリに座ってメンバーを眺める姿にむしろいつもの彼を見た印象。そして、ここからまた始まる予感を湛えたラストは「ピーター・アイヴァース」。もうこの編成で素直に演奏したものが最高に形になっている。派手でもラウドでもない、ギミックのないバンドがこの時間を愛おしむように鳴らしたアウトロ、そしてエンディングに心の中で"やった!"と叫んでしまった。
音楽の聴き方もライヴのあり方も、当たり前はない。このツアー"変奏"も含めて我々に変革を起こした『バイエル』。一見穏やかでその実、かなりな"破壊作業"は忘れようがなさそうだ。
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