Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Japanese

ガダラピッグ

2025年09月号掲載

ガダラピッグ

Member:Garom(Gt/Cho) Mr.Morick(Vo/他諸々)

Interviewer:フジジュン

"史上最遅の初期衝動"を謳って今年7月より活動をスタートした、GaromとMr.Morickによる謎多き2人組オルタナティヴ・ロック・バンド、ガダラピッグ。活動開始と同時に配信リリースした「マーシャル108」は、青春感のあるサウンドとリリック、耳に残るメロディやノイジーなギターが印象的な楽曲だ。"すべてを失った男と、失うものが無い男。やぶれかぶれのその先に芸術は宿る"と解説するガダラピッグのコンセプトや狙いとは? 結成の経緯や謎に包まれたメンバー、楽曲、バンドの抱く野望について話を訊いた。

-2025年7月始動と、活動を始めたばかりのガダラピッグですが、この2人で活動することになったきっかけは、4年前にリリースした「Cenzury like a Bruce Lee」(Mr.Morick & Garom Gallagher名義/2021年)だったんですか?

Mr.Morick:その通りです。もともと知り合ったのは20年以上前で、その後に完全に音信不通な期間があったんですけど、その間、Garom君にインタビューで話せるレベルじゃないくらいのヘヴィな人生ドラマがありまして(笑)。人生やぶれかぶれな状況のとき、"オアシス:ライヴ・アット・ネブワース 1996.8.10"という映画を観たGarom君が、いたく感動して。私のことを思い出したらしくて連絡をくれたんです。当時はコロナ禍で、私がヒップホップの音楽制作にハマっていた時期だったんですが、彼のヘヴィな人生ドラマを聞いて"そのやぶれかぶれな精神状態で曲を作ろう!"という話になって。お互いのカオスさが入り混じったのが、4年前の「Cenzury like a Bruce Lee」でした。

-やぶれかぶれなGaromさんを見て、"ここにこそ芸術が宿ってるのではないか?"と可能性を感じたんですね。Mr.Morickさんはご自身で楽曲を発表されたり、詩歩さんとコラボ・プロジェクト(Mr.Morick+)をされたりしてますが、肩書的にはシンガー・ソングライター兼音楽プロデューサーみたいな感じなんですか?

Mr.Morick:プロデューサーって程じゃない、ただの曲作りが好きなおっさんです(笑)。

-GaromさんはMr.Morickさんが音楽をやってることを知ってて、"俺も音楽がやりたい!"という衝動に駆られて連絡をしたんですか?

Garom:OASISの映画を観て"音楽をやりたい"と思ったわけでもないし、Mr.Morickが音楽制作をやってるというのも全然知らなかったんですが(笑)、久しぶりに会ってみたら、"こんな楽しいことやってるんだ!"みたいになって。"じゃあ、スタジオ行ってみようか"って話になって、何も分からずやってるうちに録音されていて、それが「Cenzury like a Bruce Lee」として発表された感じでした。

-わはは、騙し討ちだ(笑)。Mr.Morickさんは何を考えてたんですか(笑)?

Mr.Morick:ノープランではあったんですけど、"ラップを録るから、リリックを作ってくれ"ってリリックを作らせて、スマホを見ながらそれをラップ、いや朗読してるのをこっそり録って。

-Garomさんに音楽的資質があるわけじゃないけど、きっと何か持ってるだろうと。

Mr.Morick:そう思ったんですけど、あの曲に関しては私の悪ふざけが過ぎてしまって。切り取るところを間違えて、彼の良さを発揮できなかったんです。

-なるほど。だからこそ、今回は満を持してみたいな気持ちもあるんですね。これ、読者も気になると思うんで、Garomさんの壮絶な人生を軽く聞かせてもらえますか?

Garom:詳しくは語れないんですが、とにかく漫画や小説のような壮絶な出来事がありました。それで自暴自棄になってしまって、爆音で舐達麻やゆらゆら帝国の「ソフトに死んでいる」を一軒家で1人永久リピートして泥酔するような日々を送っていて。まさにやぶれかぶれだったし、"この気持ちを何かで爆発させたい!"という時期ではありました。

-なるほど。そこで以前はそんな衝動を抱えてるだけでしたが、この4年間でギターを練習してきたんですよね?

Garom:そうです。今まで楽器をやったこともなかったんですけど、何か力になれるものはないか? と考えて、ギターを選択した感じだったんですが、"音楽ってこんなに上手くいかないものか!"というのが正直な気持ちで。今回書いてもらった「マーシャル108」も、Mr.Morickがすごく弾きやすいように指示してくれてるので、なんとか成立してますけど、なかなか難しくて。私は、電気グルーヴのピエール瀧さんのようなポジションでいられたらいいなと思ってるんですけど。

-音楽との向き合い方も変わってきました?

Garom:自暴自棄の時期はそれまで触れてなかったヒップホップをよく聴いてたんですが、自分でギターを弾くようになってからは、もともと好きだったパンクやロックな音楽ばかり聴くようになりました。

Mr.Morick:でも、Garomが多少でもギターが弾けるようになってくれて、心強いなと思っています。彼はリズム感がすごくしっかりしてるし、パワー・コードだけでも弾いてくれたらサウンドに厚みが出るし、一緒にやることで大胆に行けるところがあるし。私、すごく面倒くさがりで、曲ができると満足しちゃって、自分の中で一回完結しちゃうんですけど、隣にギラギラしたのがいると気持ちを動かしてくれるから、それもありがたいです。

-ギターもあるし、パッションもあるし、ガダラピッグで今までと違うことができそうな予感がしてる?

Mr.Morick:予感しかないです。曲ができると自己完結しちゃうんで、ストックだけは200曲くらいあって。今、この曲にパワー・コードのギターがあったらいいなというガダラピッグに合いそうな曲を、ピックアップしているところです。

-ストックが200曲あるというのは、すごい強みですね。Mr.Morickさんは、過去の音源を振り返るいい機会にもなってるんじゃないですか?

Mr.Morick:そうですね。正直、自分で作った曲って30点くらい増すのかな? とも思うんですけど、過去に作った音源を聴いて、"天才が過ぎるな!"と驚いてます(笑)。ただそれを発表することの面倒くささのほうが今まで勝ってたんですけど。料理と一緒で、一緒に食べてくれる人がいるなら作ろうかなみたいな感じで。

-じゃあ、Mr.Morickさん的にも名曲を掘り起こすいい機会になってますし、無意識でこういうパートナーみたいな存在を求めてたところもあるのかも知れないですね。

Mr.Morick:あ~、それはあると思います。バンドをやろうと考えたこともあるんですけど、結構エゴイストで、こだわりが強すぎるので、架空のバンド・メンバーとバンドをやる想像をしたとき、"あぁ、私は必ず離脱するな"と感じて(笑)。バンドって継続が一番難しいと思うんで、僕はあまり向いてないと考えているんです。

-そう考えると、Garomさんって一番程良いというか(笑)。Mr.Morickさんの作った楽曲に意見することもないでしょうし。

Mr.Morick:そうですね、基本的には全肯定してくれますから(笑)。

-今回、"史上最遅の初期衝動"とキャッチを打っていて、Garomさんに関してはお話を聞いて、衝動的な気持ちも理解できたんですが、Mr.Morickさんはガダラピッグを始めるにあたって、自身を突き動かした衝動的なものってあったんですか?

Mr.Morick:私は話したように、バンド自体にそんなにこだわりがなくて、作る曲もそういう感じではなかったんですけど、彼とやるなら、パワー・コードという縛りが出てしまう。それが逆に"意外と面白いぞ!"ってなって、すごく新鮮に作れました。

-Garomさんを意識したり、感情が乗ったり、曲を作るときの心境の違いってあります?

Mr.Morick:ありますね。1人だと歌詞とか暴走しがちなんですが、彼の社会的立ち位置とか体裁とかも一応考慮しながら作ってるような。ぐちゃぐちゃ行きがちなところを、ちゃんと形にして箱に収めてという感じです。