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INTERVIEW

Japanese

Bimi

2025年04月号掲載

Bimi

Interviewer:山口 哲生

Bimiが4月9日にメジャー1stアルバム『R』をリリース。サブテーマに"27th Club"の昇華を掲げた本作ではWhoopee Bomb、呂布カルマ、YUKI(MADKID)、椎名佐千子、Sit(Keisaku "Sit" Matsu-ura/COUNTRY YARD/mokuyouvi)、新藤晴一(ポルノグラフィティ)といった実にジャンルレスな豪華客演陣を招聘した。ラップ・ミュージックに軸足を置きつつも、様々な音楽を貪欲に取り込んでいく自身のスタイルを改めて提示している。過去との決別と未来への一歩を踏み出すための1枚について、じっくりと話を訊いた。

-メジャー1stアルバム『R』、えげつない程聴き応えのあるアルバムになりましたね。

はははは(笑)。ありがとうございます。

-現時点のドキュメンタリー的な部分もありますし、もともと音楽性の幅が広かったご自身のスタンスを、フィーチャリング・アーティストを招くことで改めて提示している部分もありますし。

ジャンル多いんで疲れるっすよね。

-はははは(笑)。

曲順的にはこれが一番疲れないだろうなっていう感じで並べたんですよ。「辻斬り」から「Bright feat.YUKI(from MADKID)」まではラップ・ミュージックで、「額 -HITAI-」から「暴食」までは雑多でいろいろなものに手を出している感じ。で、「All the things feat.Sit(from COUNTRY YARD, mokuyouvi)」からエモい感じになって、「Nemo」からはチル系になっているから、まぁそのあたりは疲れないようになってはいるんですけど。

-そういう構成にしようと最初からイメージしていたわけではなく。

並べたらこうなったっていう感じですね。とりあえず12ないし13曲作ってみて、これどうしよう......って(笑)。それで、ラップ系はラップ系でみたいな感じでまとめていったんですけど、やっぱり最初のほうが再生されることが多いと思うので、ここで自己紹介じゃないけど、「辻斬り」からスキルをちゃんと見せていくっていう。

-となると、とにかく自分が作りたい曲を作っていったと。

そうですね。今回は客演もあるんですけど、自分単体の曲はすぐできたんですよ。5ヶ月前ぐらいにはもうできていて。ただ、客演がその時点でどうなるか分からなかったから、作ってみてぐちゃぐちゃだったらぐちゃぐちゃでいいし、まとまったらうまくまとまったねっていう。そこら辺は偶然の産物だなと思っていたので、特に気にせず楽しく作ってました。

-今回のアルバムは、かねてよりBimiさんのクリエリティヴに大きな影響を与えていた、"27th Club"の昇華をサブテーマに掲げられていますが、改めてこのテーマに取り組んだ理由をお聞きできればと。

今年の4月28日で27歳になるので、いい節目というか、自分への弔いというか。16歳ぐらいの頃から、自分が27歳になったときにどうなっていて、どう死にたいかを漠然と考えながら生きてきたし、音楽とか芸能をやってきたんですけど。改めてその歳が近くなってきて、自分と向き合って出てきた答えをここで1回ちゃんと出して、区切りを付けたかったっていう感じですね。

-16歳ぐらいの頃から考えていた27歳のイメージってどんな感じだったんです?

もっと破天荒で、無茶苦茶なことをして死んでると思ってました。注目度が高いうちに死のうと思ってたんですよ。そうなったら悲しむやつもいれば嬉しがるやつもいるだろうし、そういう波が起これば面白いなって。でも、それまでの影響力にはぶっちゃけ至ってないと思ってるんで、まだ死ねないなと。ただ、死ぬつもりで向き合ってやってきた自分に対して、この先も生きちゃったら示しが付かないんで、自分自身を1回殺すためにこのアルバムを書いたんです。そこまでの憧れを殺すために。

-なるほど。

結局ロック・スターに憧れていたんですよね。でも、憧れているだけじゃ意味がないなということに、メジャー・デビューするぐらいの頃には気付いていたし、ここ数年はできることの幅がどんどん広がっている実感が自分としてはあるから、まだ風呂敷畳むのちょっと無理かもって。死ぬのダサい、かっこ良くないって思っちゃって死ねなくなっちゃいましたね。

-そういった思いや憧れとの決別をメジャー1stアルバムで打ち出すのもいいですね。

今は自分が憧れられなきゃいけない立場になったんで。そこを夢見てるうちはずっとリスナーのままなのかなっていうのも、自分の中にあったんですよ。あくまでもプレイヤーとしてもう1個違う景色を見たいなと思ったんで、今までの自分を1回全部捨てたかった。そういう思いや願いも込めてます。

-では、収録順にお聞きしていこうと思います。1曲目は「辻斬り」。和テイストのヒップホップというBimiさんらしいトラックから始まります。

「Miso Soup」(2024年リリースのEP『Snack Box』収録曲)はテーマを結構ラフにしたというか、ちょっと気を衒ったんですけど、今回はちゃんとラップするぞって(笑)。ふざけずにちゃんとヒップホップしようと思って、自分のバックボーンを入れて、自己紹介ラップみたいな感じにしてます。

-スキルフルだし、リリックのパンチ力もあるんだけど、いい意味で肩の力が抜けている感じもあって。

そうですね。そのラフさを出すために、フックはR&B系に寄せて後ろノリな感じにしたんですけど、ラップは前ノリにしていて。そこで緩急を出せたかなと思います。

-個人的には、"オイラは⾳の通り魔⾦輪際道を開けろどきな"からのフロウが気持ち良かったです。

あそこめっちゃムズいんすよね(苦笑)。

-ああいったフロウは書きながらもう浮かんでるんですか?

そうですね。だいたい書きながらはめていきます。書いてみて、はまったなと思ったら次を書いて。

-基本的には頭から1ラインずつ書いていく?

いつも頭から作ってます。「辻斬り」だったら、ビートを聴いたときに和風の金屏風が出てきたんです。黒い雲が掛かってていてちょっと寒々しい空気があって、ピューって尺八吹いてる感じがあったんで、丑三つ時だなと思って"漆黑闇染まる丑三つ時"と書いて。で、最初は通り魔にしようかなと思ったんだけど、和風の金屏風が出てきているのにそれはちょっと現代的すぎるなと思ったんで、もうちょい時代を戻そうと。そうなると辻斬りはそうだなって。ずっと連想ゲームしていく感じですね。

-2曲目からはゲストを招いた楽曲が続きます。まずは「百⻤夜行 feat.Whoopee Bomb」。

これも「辻斬り」と結構似てるんですよね。俺、和風が好きなんでそういう感じと、ジャージー・クラブのビートのキックがずっと鳴っているところに対して、Whoopee(Bomb)君の若い感性をお借りした感じです。Whoopee君はラッパーとしてのアイデンティティがあって、俺はラッパーではあるけど他のこともやっているし、ヒップホップだけじゃなくてそれ以外のところでも戦っている自覚もプライドもあるから、お互いがいい意味で変な妖怪になったらいいなって。アーティストって妖怪みたいじゃないですか。各々が自分の気持ち悪い性癖を曲に詰め込んで消化している妖怪だと思うんで。あと、マイクリレーしたかったんですよ。今後Whoopee君以外もリミックスとかに乗ってほしいんで、妖怪でマイクリレーとなると百鬼夜行かなって。

-いいテーマですね。

百鬼夜行ですごいなと思ったのが、いろんな妖怪が出てくるんですけど、最後に"空亡"っていう妖怪が出てくるんですよ。その"空亡"が何かって言ったら、日の出なんです。太陽を妖怪に見立ていて、その妖怪が出てきたらみんな解散するっていう。だから"空が亡くまで"は、"空亡"が来るまで=朝が来るまでクラブとかで飲み明かしながら歌ってるっていう、ちょっと闇にうごめいているイメージで作りました。

-そういった話し合いをWhoopee Bombさんとしながら進めていったんですか?

いや、特に話し合いはしてなくて、こっちから提案させてもらったものにいいものを返してくれた感じでした。でも、あんまり妖怪みは出さなくていいよっていうのは伝えていて。あくまでも自分のことをフレックスする曲でいいのでお願いしますと。アーティストってものはぶっちゃけそれだけで妖怪に見えるんで。自我を出した時点で奇妙だし、その人の魅力が出るんで、それでいいよって伝えました。

-次の曲は「無敵 feat.呂布カルマ」。呂布さんとは以前から親交があったんですか?

電音部のフェス("電音部 GR SQUAD vol.1")に呼ばれたときに呂布さんもいて、そのときが初めましてで、飲ませてもらって、今度名古屋に行ったら遊びましょうよみたいな話をしてLINEを交換したんですけど、そこから遊ぶこともなく。その後、呂布さんの駅のポストが炎上したじゃないですか。あれを見て、この人面白いなと思って"俺は支持します"ってLINEを送ったんですけど。あれって別にコンテンツを否定してるわけじゃないのに、そんな婉曲した見解で叩かれるんだ? と思って。で、俺も炎上するから親近感が湧いちゃって、一緒に曲作りませんか? という話をして、"無敵"ってタイトルになりました(笑)。

-そういうところからのこのタイトルだったんですね。この曲はラヴェルの「ボレロ」をサンプリングしていますが、そのアイディアはすぐに浮かびました?

そうですね。クラシックをサンプリングしたいっていうのは、結構早い段階でうちのDJとプロデューサーと話していて。「ボレロ」ってできた当時は超画期的で、"なんだこの曲"と叩かれていたんですよ。で、Bimiという存在も、いろいろやってるからよく分からないし、1個のジャンルに絞れよって思う人もいるだろうし。そういうやつが「ボレロ」をサンプリングして、当時は叩かれてたけど、後々評価される感じになったらいいなっていう願いとかを込めて選んだら、呂布さんも乗ってくれて。で、ブーンバップ系にしようと思ってたんでそっち系にしたら、呂布さんがとんでもないパンチラインを入れてくれました。これヤバいですね。