Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Japanese

Bimi

2025年04月号掲載

Bimi

Interviewer:山口 哲生

-そして次が「Bright feat.YUKI(from MADKID)」ですね。

YUKI君とは、俳優のほうのイベントで一緒になったのが最初で。俳優たちがその日限りでダンス・ユニットみたいなのを組んだんです。そのイベントのときに一緒に曲を作ったんです。彼は楽曲提供をしていたりするし、話をしていたら似ているところがあるなと思って。だからどこかでやれたらやろうという話は前からしていて、それがやっと実現した感じですね。だから、MADKIDのYUKIというよりはYUKI君って1人の男として見て、じゃあ一緒にやろうって感じでした。

-一緒にやるならこんなトラックというイメージもすぐに浮かびました?

そうですね。やるなら汚い曲にしたかったんです。タイトルが"Bright"だから光り輝いていてアイドルっぽい曲なのかなと思ったら、中身はめちゃめちゃダーティで。俺のイメージとしてはブラック・ダイヤだったんですけど、傷つくことでブリリアント・カットが入るみたいな感じで、その業界で揉まれて傷ついて光り輝いてるみたいな。そういう泥臭い感じなんだけど、ちゃんと希望は見えたほうがいいから、そのバランスはちゃんと取ろうと。最初YUKI君にヴァースを書いてもらったんですけど、俺はこういう感じで行くからもっと泥臭さを出してほしいって自分のヴァースを渡したら、彼も乗ってくれて、普段あんまり書かないような歌詞を書いてくれて。恐らく俳優としてはなかなか言っちゃいけないことを言ってるじゃないですか。"5畳のMystudio"っていうのも夢がないし、泥臭いし。でも、そういうのがやっぱいいなって思うし、こういったリリックを書いてくれると思ってたんで、信頼して良かったですね。

-Bimiさんのヴァースも面白いですね。"⼀時的に得られる快楽に⼊り浸るだけなら/Any one can do it 笑"とか。

ここはめちゃくちゃバカにしてますね。そんなもん誰でもできるだろ? っていう。女の子が胸出してバズるの狙ったり、男も"脱いだりつるんだり疑似恋愛で釣ったり"とか。これはうまく書けたっすね。俺としてはその次に来る"団地暮らしから借⾦の地獄/借りパクしたグラセフで得た道徳"も好きなんですけど。

-そこも好きでした(笑)。

これはほぼ実話で、△ボタンで車盗めると思ってたんで(笑)。そんな人間がやってんだぞ? ってことですね。

-この曲で客演ブロックが一旦終わり、「額 -HITAI-」というシリアスな曲が来ます。

これは思想強めですね。別に俺等世代のことを代弁するつもりはないですけど、一国民として思っていることっていうか。Bimiではなく、一個人として、廣野凌大として思っていることって感じですね。政治的なことを表に出ている人間はあんまり言っちゃいけない、みたいなことを言われるけど、もうそういうのじゃないでしょ? って。今、日本ヤバイし。真相は知らないけど、おかしいことはおかしいって言っちゃいけないという今の日本がおかしいんじゃない? って曲ですね。

-この曲はMVを撮影されているんですよね。

広島市に許可を貰って原爆ドームの前で撮ったんですけど、この曲は外国の人にも届いてほしいですね。俺としては平和的な意味で書きました。この曲はフックもめっちゃ好きで。"アスファルト舗装された道路/当たり前の前の事を"は爆弾が落ちる前のことと落ちた後のことで、それを"踏み躙るも踏み締めるも/自分次第さ"っていう。同じ両足で立っていても全然意味が違うんで。"煽る社会は君の心を"は、メディアが右だったり左だったりいろんな意見を擦り込んでくるけど、それを"反故にするも保護するのも/俺ら次第さ"っていう。

-"反故"と"保護"の同音異義語はうまいなと思いました。

えぐいっすよね。俺もよく考えたなと思いました。

-あと、"俺の周りいる奴らの幸せは奪わせない/それも俺らだけの匙じゃもう決められない"もすごくリアルだなと思って。

だから選挙行こうよっていう歌ですね。

-表に出ている人が政治的な発言をするといろいろと言われてしまうことって、やっぱりストレスだったりしますか?

いや、俺は別にそういうの怖くないっすよ。よく言うじゃないですか、(ビジネスの世界で)プロ野球と政治の話はしないほうがいいって。俺、プロ野球は中日が好きだし、別に海外みたいに"トランプ支持します!"、"バイデン支持します!"とかわざわざ言わなくてもいいと思うけど、フランクに言えたほうがいいんじゃないの? って思うし。何がタブーなの? って最近思うんですよね。そういうのを難しくしすぎたせいで、デカい壁が生まれて軋轢が生じちゃってると思うから、そういうのをなくしたいなと思って。

-ちなみに"額 -HITAI-"というタイトルはどこから?

日の丸のハチマキを巻いて受験勉強したり、額に汗かいたり、政治家が額をかきながら嘘をついたり、そういうところからですね。

-なるほど。そんなシリアスな曲から――

すみません(笑)。タイアップ貰ったんで。

-かなりアッパーでコミカルな「Right-Hand Chance」に続きます。タイアップありきで作ったんですね。

そうです。"#C-pla"っていうカプセルトイの企業さんとのタイアップで。俺、パチンコも好きなんですけど、幸運は全部右回しなんで。右肩上がりとか言うし。この曲はガチャ屋で流れてたら"なんだこの歌。中毒性あるな"ってなるのを完全に狙って、ループ系にしました。

-ここはそっちに振り切ろうと。

そうですね。思想とかはないです(笑)。でも、韻もうまく踏めてるし意味も通ってるし、俺は結構好きですね。

-次が「軽トラで轢く-味変- feat.椎名佐千子」です。既存曲をリメイクした"味変"バージョンですが、以前この曲を録り直したいとおっしゃってましたよね。

いやぁちょうど良かったっすね。本当の演歌歌手に歌ってもらいたかったんで、それをプロデューサーに言ったら椎名さんを見つけてきてくれて。マジか! 軽口叩いてみるもんだな! と。

-やっぱり本物の人が歌うと迫力がありますよね。

そうなんですよね。俺は演歌歌手じゃないし、別に全然ディスっているわけでもないのに、こういう曲をやるとなんかちょっとおちょくってる感じに見えちゃうんですよ。でも、椎名さんが歌ってくれたらちゃんと演歌になってたから、俺の作ったあの感じ、ちゃんとしてたんだ、良かったと思って。そしたら楽しくなって、新しいヴァースも書いちゃいました。

-あそこいいですね。"喘ぎ声丸聞こえ怒りはまるで天城越え"とか。

あのヴァースはジェットコースターというか、感情の起伏みたいなのを書いたんですけど。"あぁ、やっと帰れる! 今日あの人いるな......サプライズで行っちゃおう"みたいな。男って"今から帰るわ"みたいな連絡するじゃないですか。でも、女の人ってしれっと帰ってくるじゃないですか(笑)。"お前、今日いないって言ってたじゃんよ......早く言えよ......"っていう浮気するやつ特有の逆ギレのあの感じです。

-そんな演歌をフィーチャーした曲から、ラウドで凶暴な「暴食」に入っていきます。

この曲は27thのライヴ("Bimi Live Galley #04 -Dear 27th-")に向けて書いたんですけど、時系列には「暴食」よりも先に10曲目の「Nemo」が来るんです。「Nemo」で1回死んで、「暴食」で復活するっていう。関係ねぇよ、お前ら全員食ってやるよみたいな。

-"タレ富名声/飽くまで喰らい尽くす"という。

これは範馬勇次郎("グラップラー刃牙"の登場人物)の教えなんで。

-(笑)こういうタイプのリリックは書きやすかったりしますか?

そうですね。こういうのはもうノリなんで。"⼀度彷徨ってGetback"というのは、自分は1回死んだけど帰ってきて、"紺碧問うべき娑婆"では、さっきの「額 -HITAI-」みたいなこの世界って不明瞭な部分が多いよねってことも書けたし。"明くる晩まで廻るハグルマ共にGun"とか音楽的な気持ち良さもあるし、自分の思いも乗せられたんで、いいの書けましたね。ちょっと下ネタな感じもBimiっぽいし。

-その次が「All the things feat.Sit(from COUNTRY YARD, mokuyouvi)」。Sitさんとはもともと知り合いだったんですか?

共通の知り合いが紹介してくれて、そこからライヴを行き来するようになったんですけど、Sit君がやりたいって言ってくれていて、じゃあぜひアルバムのタイミングでやりましょうということになって、今回成立しました。

-「暴食」も含めてですけど、もともとBimiさんはライヴハウスに通っていただけあって、このあたりはルーツでもあるというか。

そうですね。中学、高校時代のロックが大好きだったライヴ・キッズに戻れた気分があったし、ライヴ・キッズとして書いたというか。昔の自分に対して、今のお前はこっち側にいるというか、憧れられる側になっているぞって。そういう清々しさみたいなものがある楽曲って何気に初めてかもしれないです。キラキラした汗が似合う曲というか、汚くて泥まみれでも、最後にきれいな朝日が差し込んでくるような感じの曲って。

-たしかにそうかも。

今までの曲は俯いていて、きれいな空に目を向けられるような、上を向けるような楽曲はあんまりないんで。そこは高校時代から上京して、いろいろ失っていって......まぁ、東京のせいというか(笑)。

-はははは(笑)。

東京と大人と社会の疲れと、みたいな感じなんですけど、そういうのを捨てて戻れたっていう曲ですね。

-曲はどう作り進めていったんですか?

1回ビデオ通話で打ち合わせしたんですけど、そのときにSit君がノリノリになって、こういう感じ? こんなのどう? ってギターを弾きながら聴かせてくれて、この音いいですね、これでいきましょうと。すぐにできましたね。