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INTERVIEW

Japanese

渡會将士

2024年09月号掲載

渡會将士

Interviewer:石角 友香

FoZZtoneの諸作から数えたアーティスト活動20周年の今年にリリースする、ソロ4作目のアルバム『MorroW SoundS』。ロック・バンドのフロントマンでもあり、ロックに拘泥しない多彩な音楽を作り歌うシンガー・ソングライターでもある渡會将士が、ソロ・アーティストとして今鳴らしたい音楽はどんなものだったのか。アルバムのテーマや制作のプロセスを通して確かめていく。

-4作目のアルバム、そしてコロナ禍の3年を差し引いた音楽活動20周年のタイミングでの新作でもあります。ご自身としてはどちらが本作の取っ掛かりとして大きかったですか?

取っ掛かりとしては活動20周年のほうが大きかったかなとは思います。そもそも本当の活動20周年は2021年だったんですが、コロナど真ん中だから外そうと。で、基準を何から20年にしようかって話になったときに、FoZZtoneで最初にリリースしたミニ・アルバム(2004年リリースの『boat4』)の1曲目が「MorroW」という曲で、その曲ができてからおそらく20年ってことにしようとなったんです。あとそのバンドを活動休止してソロになったとき、自分のレーベル名みたいな感じで"MorroW SoundS"というのを使ってたんで、じゃあ"MorroW SoundS"ってアルバムにしようと思ったんですね。("MorroW"は)M始まりW終わりなんでMasashi Wataraiとも被ってるし。

-イニシャルでもあると。アルバムには先行配信曲も収録されていますが、アルバムを意識して書かれた曲と言えば?

先行配信の曲に関しては、「写真はイメージです」「Daybreaker」はアルバムに入れるていで作ってたんですけど、その前の「Wake me up」「万葉の花」は、"とりあえずシングル出しましょう"みたいな感じで出してて、その後のアルバムに「万葉の花」はできれば入れたいなって思ってたぐらいで、どのアルバムに入れるかまでは考えてなかったんですよ。なんなら「Wake me up」も、クリスマス・シーズンにクリスマス・ライヴ("渡會将士クリスマスライブ")を初めてやったんで、そこに向けて曲リリースしましょうかっていうクリスマスネタの曲なんで、アルバムに入んねぇだろうなぐらいに思ってたんですけど、いざ曲を揃えてみたらあってもいいなって感じで。それ以外は全部――「in the mood」以外はアルバムに入れようと思って作った曲ですね。

-前作『New School』(2021年リリースのアルバム)がまだコロナ禍の気配が色濃いソリッドな内容だったので、だいぶ空気が変わった印象があります。

そうですね。しかもこんな外国人いっぱいの国になるとは思わなかったじゃないですか(笑)、当時は。

-そういう気配も感じながらの制作時期だったんですか?

制作時期はほぼほぼ今年に入ってからですね。スタッフがヒヤヒヤしてるなか、俺だけ"大丈夫です、大丈夫です、たぶんできるから大丈夫です"っていうので(笑)。

-今年ってすごく衝撃的なことから始まりましたけども。

ですね。いきなり地震だし飛行機落ちるしみたいな。あれで自分は結構"わ、きっつ!"ってなって、一回曲ができない状態になってたんですけど、そのときようやく作れたのが「写真はイメージです」で。曲作りのために去年の12月末ぐらいから準備を始めて、実家にも帰らず"曲作るぜ!"と、やる気満々で迎えた正月に地震があって、"このコンプラ面倒くさい時代に何を歌ったらいいの"みたいな感じで、かなりやられてたんですけど。そんなときにたまたま好きで買ってたパックのアイスコーヒーがあって裏を見たら、この豆はどこそこの契約農家で大事に育てられて、なんとか製法でドリップしてっていう写真が4枚貼ってあって、全部の写真に"写真はイメージです"と書いてあったんですよ。それで地震のこととかでモヤモヤしていたのが一回全然関係ないことに集中できて、"なんでこんなことをわざわざ書かなきゃいけないのかな。面倒くさい世の中"みたいなことを考えてたらスラスラ曲ができて、そこがスタートになりました。なのでちょっと変な曲順だなと思うんですけど、この曲が今年最初に作られた曲っていうのもあって1曲目にしましたね。

-"写真はイメージです"という文言はいろんな印刷物に付くじゃないですか。あれってクレーム対策で。この曲はルッキズムについての考察ももちろんそうなんですけど、同じものを見ても自分と人で捉え方が違うというか、歌詞の主人公に比べると"君"はちょっと寛大なものの見方をしてるって進み方が、いいなと思ったんです。

ありがとうございます。

-単純に違和感のことを歌ってるだけではない印象がありました。

はい。そうですね。コナン君("名探偵コナン"の江戸川コナン)が"真実はいつも1つ!"って言うんですけど、それは探偵だからストーリーの性質上そう言わないといけないんだろうなと思いつつ、今まで生きてきて、2人いたらお互いの真実が食い違ってるみたいなことはめちゃくちゃあったなと感じるんです。争って喧嘩別れした後、この人の中でその争いがこういうことになっている、この人の中では別のゴールに行ってる、話聞いてたら全然違うじゃんみたいな(笑)。なので写真やイラスト一枚見ても、受け取り方はみんな違うのに、そこに対して"いやこれはイメージですからね"って言わないとクレームが来ちゃうって、そのクレーム入れる人たちどれだけ純粋なの? みたいにも思うし。

-ところで渡會さんはソロでは楽器の縛りなどはあるんですか?

あって。でも一時忘れかけてたなと思って今作でもう一回取り戻したって感じなんです。ソロになったときに全曲絶対アコースティック・ギターを入れようって思って。バンド上がりだとエレキを弾きがちなんですけど、アコースティック・ギターを弾いていくぞと決めた部分もあったんで、今作はなるべく、印象的なリフもアコースティック・ギターで演奏するっていうのを心掛けて作りましたね。

-それはソロ以外での作品との差別化以外にも理由はあるんですか?

思ったよりも身近な知り合いのミュージシャンや日本のバンド・シーンで、アコースティック・ギターの扱いが雑だなって気がしてたんです(笑)。でもアメリカとか海外のアーティストってアコギと歌しかありませんみたいな曲、今めっちゃ多いなと思って。まぁカントリーとかが好きで聴くというのもあるんですけど、こんな簡単に曲作っちゃっていいんかい? ってぐらい、2分ちょいでずっとただアルペジオで歌があるだけみたいな曲が、意外とそれでちゃんと成立して気持ち良く聴けるんで、(日本の音楽は)"音多すぎるな"と感じてたんですよね。でもアコースティック・ギターって音が重なっていくとどんどん音が潰れていく楽器なんで、アコースティック・ギターがちゃんと鳴ってるってことは、曲に隙間があるっていうことでもあるんですよ。

-これで成立してるのってやっぱり渡會さんのメロディの強さと、どんな節回しやグルーヴでも歌の力でぶん回せるからじゃないですか。

ははは(笑)。

-それは強いなって。

まぁ、強引に歌で持ってってるシーンは多いかなって気がしますけど。

-誰でもできるスタイルではない。でも逆にそういう手法じゃない「万葉の花」のような曲もあります。

そうですね。これまで英語のニュアンスで日本語を歌うのが得意でやってきたんですけど、もう一回改めてちゃんと日本語歌わなきゃなと思って、一音一文字みたいなことを意識し直して作ってたんで、「万葉の花」はたしかに歌だけで持ってくというよりは、単語とメロディを全部合わせてご賞味いただくみたいなところを意識してます。

-歌メロがピアノ・リフみたいな感じが面白くて、ヴァースが写真だとしたらサビにかけて画が動き始めるような感じですね。

意外と古典的な手法ではあるんですけどね。音数がだんだん増えていくとか、そこまではストップ・アンド・ゴーの繰り返しなんですけど、サビになったら急に長い音でバーって埋めるとか、そのへんは計算っていう言い方をするとちょっと感動しづらいかもしれないですけど、構築して作ってます。