Japanese
THE SPELLBOUND
2024年08月号掲載
Member:中野 雅之(Prog/Ba) 小林 祐介(Vo/Gt)
Interviewer:石角 友香
-提供曲を作ってらっしゃる段階で、オリジナル・アルバムに入れることは決まってたんですか?
中野:決定項ではなかったですけどいい曲を作ってる認識は強くあったので、ライヴで演奏するとか、自分たちの楽曲として扱っていこうとかっていう気持ちはちゃんとあって。で、アルバムに入れるかどうかはハマればって感じだったんですけど、"ハマった!"っていう(笑)。
小林:"ハメた"っていう(笑)。
-ラップ的なとフロウといいますか、そういう部分でもかなり完成度が高いリリックなのかなと思うのですが。
中野:まぁできあがったものの完成度を考えると途中段階っていうのはあって、やっぱりすごく苦労しました。時間もかかったし何回もやり直したし。お互いにそこは今までにない、世の中にない音楽なのでトライ・アンド・エラーが無数にあって。手探りで勝ち取ったっていう感じですね、どちらかというと。これで見えたことがあるのでまた次に進めそうな感じももちろんあるんですけど、ここに至るまでは無数の失敗が実際存在してて。
-この「世界中に響く耳鳴りの導火線に火をつけて」で見える情景は、映画とかアニメーションじゃなく、スチール写真がすごい速さで動いていく感じを改めて受けました。
小林:そうですね。毎秒毎秒、ここはどんな体験や感情で、それに相応しい言葉や伝え方、手渡し方が必ずあるって前提で、相応しいものを2人で探していくわけなんですけど、やっぱり意味のある言葉を押し込めるとか、こんなものを表現しようとかっていうエゴとか欲望だけだと辿り着けなくて。今目の前で何が起こってるんだろう? ということをすごく味わいながら、感じながらじゃないと相応しいものって見つけられないんですよ。で、僕は歌詞を主に考えたりするときに言葉でコミュニケーションしすぎてしまったり、これが表現できたからいいものだと思うっていう目線で判断してしまったりする。でも中野さんと一緒に作業して歌詞を作っていると、そこで聴いてる人がどんな世界にいるんだろう? とか、自分たちはどんなものを今表現してるんだろう? っていうとこに毎回立ち帰っていくので、意味は同じだけど口調が変わるとか、人に思考させる瞬間じゃなくて、ただ感じるだけの瞬間にしようとか、情報量のメリハリみたいなものにはすごくこだわりました。
-感動が与えられるというより、断片が断片のままのものもあれば自分の中で繋がるものもある。それがすごく面白かったです。
中野:聴いた人に1つの正解だけを与える音楽じゃないので、その3分の曲を聴き終わった後に、長編映画を見終わったぐらいの疲労感とかも伴うんじゃないかなと思うんですけど、そのときに何が残ってるかがたぶん聴くたびに毎回違うだろうし、どんなシチュエーションで聴くかによっても変わってきそうだし。でもいつも何かよく分からないけどずっと寄り添っていてくれるものとか、そんな存在になれたらいいんじゃないか、そういう感じで作ってる曲は多いかと思います。小林君が歌詞を書くので、最初の段階だと小林君の思いの丈が詰まってるんですけど、それをちょっと間引いていく作業とか、何も意味を持たない時間も作ったほうがいいよとか、情報量を増やしたり減らしたりっていうのを箇所ごとで作っていって、で、すごく大事なところで一瞬ビートを抜いてそこだけがパッと印象に残って、また次のめくるめく展開が来るみたいな繊細な組み立てを時間をかけてやってますね。
-「おうちへかえろう」の歌とビートはわりと寄り添ってる気がしたんですけど、それ以外のシーケンスの部分が別の世界みたいで、すごく迷子になる曲だなと(笑)。
中野:(笑)まぁそれで"おうちへかえろう"っていうところがいいかな。「おうちへかえろう」の小林君が作ったデモは、"おうちへかえる"雰囲気がふんだんにあったんですよ。で、どんな道を通って帰っていくかっていう背景を素敵に書いたつもりなんですけど、ただ不思議な絵みたいなことにはなってるかな。
-一向に"おうちにかえれ"そうになくて。
中野:(笑)それゆらゆら帝国の「学校へ行ってきます」が、学校になかなか辿り着けない雰囲気がすごい漂ってるのに近い感覚ですかね。
小林:そうですね。"かえれない"から"かえろう"って言ってるわけですからね。
-このアルバムは連なりの中でいろんなトピックもあるので聴きどころ満載なんですけど、わりと明快にヒップホップの手法とかビートなのかなと思ったのが「2Colors」で、JESSE(RIZE/The BONEZ/Vo/Gt)さんも参加されている等意外性のある曲でした。この曲はどういう発端なんですか?
中野:これは発端っていうか、キック・オフになる小林君の鼻歌に近いデモを僕がどのような受け止め方をするかで、いろんな曲がいろんな形に様変わりしてくるんですけど。それをまた受け取った小林君が歌詞や楽曲の展開を考えていって、というキャッチボールを、何度となく繰り返していくうちにできあがっていく流れがあるんですが、「2Colors」はそういう意味では一番、いい部分があるのに1つの曲として完成させるのに攻めあぐねてた曲だったんです。で、たおやかなメロディ・ラインがあって、それで何を描くかっていうことに無数にトライがあって。で、僕はこのアルバムを躍動感があるものにしたかったので、ただ心地いいものを作れないなぁっていう感覚があったんですね。つまりアンニュイなものをアンニュイなままにして曲を仕上げていっても、それがどんなメッセージを持つのかとかどんな気持ちになってほしいのかとか、なかなか見いだしづらかったので。じゃあちょっとオールド・スクールなブレイクビーツと、少し華やかなリフという服を着せたら、どんなものが見えてくるかなと思ってやったときに、ここにラップが入ったらいいなって場所がポカっと空いたんです。ビートに言葉を乗せていくっていうことは、その段階でも小林君のある種極めたスタイルみたいなものが確立しつつあったので、あの空いた場所にもそれを入れていくことも全然できたはずなんですけど、アルバムの中でより自由さとか、拡張していく感覚を持たせたいなと思って。だからこれはアルバムを見据えて小林君ではない人にラップをしてもらったほうがいいって、わりと早い段階で僕が思って、たくさん候補の名前が挙がってすごく悩んだんですけど、JESSE 君になったんです。
-それは佇まいとかもそうだし、小林さんの声との対比みたいなこともあるんですか?
中野:一番はやっぱり縁ですね。僕はいろんなプロデュース・ワークのときに録音してもらうので、ドラムの録音をしてたエンジニアさんは力になってもらってる人なんですけど、最近のThe BONEZの録音をしてる人で。そのエンジニアさんが"JESSE がいい"って言ってたんですよ。僕はJESSE君とはRIZEの時代に同じステージ上がる機会もあったし、すごく仲良く同じ時代をべったりくっついて過ごしたわけではないんですけど、今また気を吐いていて輝いている人だなぁっていうのをハッと思い出して、"あぁ、JESSE君いいんじゃないかな"と思ってすぐ連絡を取ったんです。
-なるほど。ところでアルバム・タイトルがすごく懐かしいタイトルなんです。"ボイジャー計画"という。
中野:もちろん"ボイジャー計画"のその"ボイジャー"も、重ね合わせているところはあるんですけどね。音楽を探求するっていうことは、やっぱり今でも深い海に潜るような、あるいは遠い宇宙の果てを探すような感覚がやっぱりあって。やればやる程深遠なものだし、これはゴールがあるのかな? っていう感覚にもなるし。僕はよく100歳とか150歳まで生きてとか言ってて、生きてるかぎり見てみたい世界があるって信じて、次の1曲を作るときに新しい探求が始まるような気持ちは、なくさないようにしているんですけど、やっぱりやればやる程深くて広い世界なんです。人生って部分でもまだ旅が続いて、未知の自分と出会うことになるなと思うし、この自分は知らなかったなとかいうことが実際起きるし、一曲一曲が冒険みたいなものだし。それと今、探査機のボイジャーがそろそろ50年ぐらい経つんですかね。当初は木星や土星を探査することが目的だったわけですけど、もうその先のどんどん遠い宇宙にまだ進んでいて、地球との連絡もかろうじて今ギリギリ取れてる状態で。もうすぐ太陽圏っていう太陽の影響が及ぶエリアの外まで到達しようとしていて、旅はまだ続いている。僕の幼少期に地球を出発していって、今も探査は続いていて、役割は果たしていて、あるいは役割をもうすぐ終えようともしてるわけですけど、そのすごくロマンチックなものと重ね合わせているところがあります。
-ボイジャーは宇宙探索と共に"ゴールデン・レコード"を積んでいて、それもすごいロマンがあります。
中野:そうですね。まぁあれは宇宙人へのメッセージ(笑)なわけですけど。
-今となってはちょっとロマンが過ぎるって感じはありますけど(笑)。
中野:まぁでも......素敵なロマンが過ぎるっていうか(笑)、その発想自体も今となってはかわいらしいというか。伝えようとする手段とか。
小林:("Voyager"は)中野さんが提案してくれた言葉なんですけど、最初言ってもらった作品の瑞々しさとか、どこかへ何かを探しにいこうとしているとか、何かを願って伝えようとしてるとかが、結局この"Voyager=ボイジャー"っていう言葉から連想されたり、集約されてたりする感があることに、僕自身も驚いていて。いろんなものが宿って1つの作品に結び付いた感がすごくあるので、ちょっと魔法みたいなことが起こってますよね。
-1stアルバムではむしろ人間の最後みたいなことまで感じたのに、逆にどんどん出発点に戻ったような感じがあって。「なにもかも」(『THE SPELLBOUND』収録曲)なんて死ぬときに聴こえる音楽なんじゃないかなと思いまして(笑)。
中野:ははは(笑)。
-それに比べたら生まれたてみたいな感じがしますけど。
小林:そうですね。言われてみれば人生の総決算をしてるみたいなところが1stはあったかもしれないです。
中野:やっぱりロックダウンされている世界の中で作られていった曲だったので、社会とか個々の人生とかということを、極端な場所から観察しているような感覚があのときはあったと思うし、そこでえぐり出されたものってあると思うんです。そういう意味では貴重な時間を過ごして、それがちゃんと創作に結び付いたかなって感じなんですよね。で、例えば大震災とかがあったときに、日本中が喪に服すようなメンタリティの中で作られた音楽って、すごく強いバイアスが掛かっているなかで作られるので、振り返ってちょっと客観的に見られたときに聴くのが難しいものになったり、過度に感情的になったり感傷的になったりしているものがあって。やっぱり9.11のときもそれがアメリカの音楽で起きてたし。ロックダウンで音楽家が密室にこもって自己探究するみたいなことっていうのは――震災とかに比べるとある意味正常な状態に近いんだけど――やっぱり極端な形で行われている時期だったと思うんですよね。だからあれはあれですごい意義があるなと思うし、振り返って聴いても強烈な世界観があるものなんじゃないかな。やっぱり今回のアルバムは僕らがツアーを経て、人間同士のコミュニケーションの果てに生まれたものっていうところが大きいので、そこが1stアルバムと2ndアルバムの大きく違うところなんじゃないかなって思います。
-ツアー("BIG LOVE TOUR Vol.2 2024 -Voyager-")も始まりますが、今年のツアーはどうしたいですか?
中野:僕はもうずっとこの考え方なんですけど、その時点の集大成を見せたいっていう。それは、いつまでもそれができるとは限らないっていう刹那的な感覚が僕は少しあるんですね。なんでも永遠ではないんだなっていう。だから今あるものの最高到達点を見せておきたいというのはライヴごとにあるんですけど、やっぱツアーってなると特にそうで。今の僕らの最高到達点は、THE NOVEMBERSと同時にTHE SPELLBOUNDをやっている小林祐介と、BOOM BOOM SATELLITESを経てTHE SPELLBOUNDをここまで持ってきて、さらに向こうに行こうとしている僕の、今見せられるもの全てっていうところにあると思うので、全てを網羅したものにしたいなと。そういうことで、至福の音楽体験が提供できればいいと思っています。
小林:自分たちがロック・バンドとして、今鳴らすべきだなと思ったものを鳴らした作品を作れたっていうのも、もちろんあるんですけど、すれ違ったりたまに合ったりするような長い人生の中で、その瞬間に、一緒に居合わせるファンみんなで鳴らす大きい音楽や物語みたいなものを、きちんとツアーで表現したいなと思っていて。そのときに一緒にいることで、自分たちのこれまではこれで良かったんだっていうふうに、僕たちもファンのみんなも確認し合えるような素敵な夜にしたいと思っているので、すごく楽しみにしていてほしいです。
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