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INTERVIEW

Japanese

MYTH & ROID

2024年03月号掲載

MYTH & ROID

Member:Tom-H@ck(Producer) hotaru(Lyricist/Story planning) KIHOW(Vo)

Interviewer:山口 哲生

"感情の最果て"をテーマに、音楽、映像、ヴィジュアルなど、あらゆる側面から人間の感情を描くユニット、MYTH & ROID。数々の人気アニメ主題歌を担当し、日本はもちろん海外リスナーから強い支持を集めていて、国内外でライヴ活動を行っている。そんなユニットが現在行っている試みが、コンセプト・ミニ・アルバムの2作連続リリースだ。昨年10月には前編となる"Episode 1"『AZUL』を発表。そしてこのたび、その後編となる"Episode 2"『VERDE』が完成した。前編では"海"と"街"を、後編となる本作では"森"と"街"を舞台に繰り広げられる"彫刻をめぐる物語"は、MYTH & ROIDらしいファンタジックなものではありながらも、現実世界の出来事を示唆するものにもなっており、その世界に深く没入できる作品に仕上がっている。『VERDE』はもちろんのこと、一連のコンセプト作品に関して、作曲とプロデュースを務めているTom-H@ck、ヴォーカルのKIHOW、そして物語のシナリオと作詞を手掛けたhotaruの3人に、じっくりと語ってもらった。


もの作りに対する情熱みたいなものは、抽象的なところで共通している部分があると思う


-昨年10月に発売された前編『AZUL』に続き、後編『VERDE』をいよいよリリースされるわけですが、そもそもこういったコンセプチュアルな連作を、ミニ・アルバムで作ろうと思った発端というと?

Tom-H@ck:そもそもの始まりとしては、活動歴が徐々に長くなってきて、実はミニ・アルバムという形を一度も作ったことがなかったんですよ。じゃあこのタイミングで出すのは面白いかもねと。しかも、ミニ・アルバムを一発出すよりも、昔で言うところのB'zさんの"金銀"みたいな感じというか。

-ベスト・アルバムの(『B'z The Best "Pleasure"』、『B'z The Best "Treasure"』)。

Tom-H@ck:はい。あとはGLAYさんとか、L'Arc~en~Cielさんの3枚同時(シングル・リリース)とか。僕はあの世代の人間なので、それが頭にずっと残っていて。そういうのも面白いかもねというのが最初でした。そこから物語を実際に作ったのは、僕の幼馴染で作詞を担当しているhotaruなんですけども、内容に関しては僕もKIHOWちゃんも彼に任せていて。ただ、MYTH & ROIDはこういうユニットで、こういうことを世の中に叫びたいんだというテーマはありますから。それをもってして、それでも訴え掛けたいこととか、今、世の中に問いたいことをファンタジーの世界に落とし込んでいきました。

-まずhotaruさんがどういう物語にするのかを考えたと。

hotaru:もちろん都度共有してましたけど、特に『VERDE』に関しては、『AZUL』を出してから少し時間も経ったり、いろいろな反応があったりもしたので、最初に考えていたものから少し調整しました。

-当初構想していたものと変更した部分というと?

hotaru:『AZUL』の物語の主人公は少年で、『VERDE』の主人公は少女なんですが、もともとはどちらも少年だったんですよ。あと、『VERDE』の少女は『AZUL』の少年の生まれ変わりなんですけど、それも当初とは違っていて。同じ運命を辿るという形式にしたかったので、生まれ変わりという繋がりがあったほうがいいよね、とか。あと、抽象的な書き方にしているので、どちらも少年だとごちゃごちゃになってしまうかもねという意見もあって。なので、生まれ変わりだけど性別は違う、明確に違う人だけれども繋がっているという形にしました。

-お話にもあった通り、『AZUL』の主人公は彫刻家の少年、『VERDE』の主人公は絵を描く少女ですけども、KIHOWさんは画家としても活動されていますよね。実は『VERDE』の主人公のモデルになっていたとか、そういうことはあったりします?

hotaru:どうだろう......あった......かもしれないですね(笑)。KIHOWちゃんが絵を描いていることはもちろん知っているし、個展も見に行っているからどんな絵を描くのかも知っていて。それが無意識的に強く残っているところはあったのかも。モデルにしようと意識したわけではないですけどね。ただ、絵を描くということを物語に入れようと思ったときに、これはもしかしたKIHOWちゃんのことをモデルにしてるって思う人もいるのかもしれないなとは思いました(笑)。

KIHOW:私も歌いながらも思いました(笑)。

-そこはご本人も?

KIHOW:はい。でも、言われてないから違うんだろうなって(笑)。

Tom-H@ck:いろいろ考えを巡らせてた(笑)。

hotaru:実際にモデルにするとなると、もうちょっとKIHOWちゃんの内面的なところに切り込んでいくことになりますし、それをどの程度出すのかというのも結構デリケートな話になってくるなと思ったので。だから公式的にはモデルではないです。ただ、そういったイメージの連鎖みたいなものはあるかもしれないですね。

-KIHOWさんとしては、主人公は自分とは違う人物だけれども、絵を描くという共通項から気持ちがわかるところもあったりしました?

KIHOW:そうですね。私じゃないだろうなとは思いながらも、自分がやっていることに近いようなものは感じました。今回の楽曲の中だと、例えば「Palette of Passion」は、まさに絵を描きだす曲なんですが、この少女と自分自身がリンクしているというか。私、初めて自分で絵をやりたいと思って描いたときに、なんていうか、脳が溶けるような感覚があって。そこからすごく深くのめり込んでいったんです。だから、絵を描いたときの沸き立つ気持ちとか、情熱とか、そういったものの高まりみたいなものはすごく理解できるので、この曲はそういった感情的な面で自分を反映できるような感覚がありました。

-"脳が溶ける感覚"というのは、ゾーンに入るとか、集中するみたいな感じですか?

KIHOW:今まで感じたことのない感覚というか、脳から何か出る感じっていうんですかね。みなさんそれぞれ好きなものとかがあると思うんですけど、すごい衝撃を受けるような楽しさや嬉しさを初めて感じたときの感覚みたいなものというか。自分の中ではそういう感覚がありました。

-面白いですね。念のためお聞きしますが、『AZUL』の主人公の少年は、それこそTom-H@ckさんやhotaruさんが少し透けて出ているところもあったりするんですか?

hotaru:どうだろう......結果的に、もの作りをしている人をベースに書いたほうがしっくり来るというか、自分の気持ちが乗るんだなというのは強く思いましたね。音楽を作るのか、物語を作るのか、絵を描くのかという具体的な方法は違いますけど、もの作りに対する情熱みたいなものは、抽象的なところで共通している部分がそれぞれあると思うんです。そういった部分を反映してるようなイメージは、僕の中にはありましたね。やっていることは違うけど、多少共感してくれるんじゃないかなと思ってました。

-Tom-H@ckさんは物語に共感できるなと思ったところはありました? それこそ自分がモデルなのかも、みたいなことを思ったりとか。

Tom-H@ck:モデルの話に関しては、今のお話を聞いていて、そういう捉え方もあるのかって思いました。これはもう完全に個人的な話なんですが、物語のひとつのテーマとして"集団心理"みたいなものがあって。例えば、昨今のSNSもそうですけど、そういったものは日本の国民性にすごく根づいているし、表には出ていないけど社会問題化しているところもあって。そういう部分は自分にも当てはまるところがあるのかなと思いましたね。意外と集団心理の話が出ていたりもするんですよね。