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INTERVIEW

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有村竜太朗

有村竜太朗

Interviewer:石角 友香

有村竜太朗(Plastic Tree)がソロ名義でリリースしたミニ・アルバム『個人作品集1996-2013「デも/demo」』(2016年)、『個人作品集 1992-2017「デも/demo #2」』(2018年)、シングル『円劇 / engeki』(2022年)収録曲のリアレンジ・アルバム『≒demo』がリリース。アレンジャー&ギタリストとして悠介(lynch./健康)、小林祐介(THE NOVEMBERS/THE SPELLBOUND)、生熊耕治(cune/BLUEVINE)を迎えたサウンドはこれまでの内省的な世界観から打って変わって、ハードコア・パンクやガレージ、オルタナティヴ・ロック色の濃いものに変化。今回はこの作品に至った経緯やサウンドの必然性を訊くとともに、そもそも有村にとってのソロ表現とは何かについても改めて話してもらった。

(写真L→R):悠介(Gt/lynch./健康)小林祐介(Gt/THE NOVEMBERS)生熊耕治(Gt/cune/BLUEVINE)鳥石遼太(Ba)高垣良介(Dr)


アーティスト写真を新しく撮るなら自分がひとりで写ってるより、せっかくだったら家族写真みたいな(笑)、写真を撮ろうと


-有村さんはそもそもソロとバンドで書く曲を分けてはいない、という発言を過去のインタビューで拝見したんですが。

あぁ、そもそもソロを始めた理由ですよね。バンドではバンドで書き下ろす用に曲を書いてたんですけど、メンバーみんな曲書くんで、その中でバンドの楽曲として選ばなかった/選ばれなかった曲とかも結構あって。そうするともうその曲を触らなくなっちゃったりするんですね。だから深く考えれないっていうか、勢いじゃないとなかなか曲を作れなくて。で、そういった曲をソロ始める前、データを整理しようと思ったら、それこそ一番最初はテープレコーダーで弾き語りで録ってた曲から、ソロ・プロジェクトで作った曲まで、様々な曲が結構な量出てきて。今だったらアレンジして、こういうふうにやったらもっとパーソナルな感じで作れるかもしれないなぁと。で僕、te'のギターのhiro君ともう10何年と仲が良くて、セッション・バンドも遊びみたいな感じでずっとやってて、最初はカバーだったんですけど、何かオリジナルの作品をいつか一緒に作ってみたかったっていうのもあったんです。それがちょうどタイミング良く"やってみたいな"と思えるようになって、1枚目(『個人作品集1996-2013「デも/demo」』)を作りました。

-ソロの始まりってそういう感じだったんですね。

初めはソロのために書くと言うより、ボツ曲と言うと響き悪いんですが(苦笑)、未使用だった曲を墓場みたいなところから引きずり出して作ってたんですけど、ちょっと自分が想像した以上のものっていうか、Plastic Treeともちょっと違う、すごく自分の趣味嗜好に寄った、作品作りそのもので人生観変わるぐらいの感覚で。これだったらまたバンドの曲作りとかと並行しながらでもやりたいなと思ったんですけど、ただまだ全然曲はあったんで(笑)、それも触りながら新しい曲も書きながらっていう感じですね。

-よりパーソナルにはなるのかなと思いました。

そうですね。煮詰めちゃうところはどこまでも煮詰めれるし、逆に変な話、いい加減というか気分で書けちゃうし。バンドとは似てることなんですけど、ちょっと違う感じはありますね。自分でやってきたバンドなんですけど、やっぱりバンドだとプラ(Plastic Tree)らしさみたいなもの――もちろん自分もそれが好きなんで、その1曲としてこういう曲があったらいいんじゃないかなとか、こういう曲があったらメンバーなり、バンドのことを好きでいてくれるファンの人たちが喜んでくれるんじゃないか、みたいな気持ちがどっかにあって。それももっと突き詰めていきたいんですけど、ソロの場合それが一切なくなる。どういうふうになるかわかんないけど、とりあえず思いつくものはやってみよう、みたいな感じで。

-今回のリアレンジ・アルバムのお話に移ります。すでに存在するソロの曲をリアレンジすると言うと、イメージとしては例えばジャジーになるとか想像しがちですけど。

そうですね。年齢的にもそうなってもおかしくないですから(笑)。でも真逆に行きましたね。

-リアレンジしようと思われたきっかけはなんだったんですか?

ソロのときはやりたいこと全部したいってのもあって、まずアコースティック(アレンジ)は、メロディのある楽曲に関してはその音源を出したときに"op.(オーパス)"って付けて、裏版みたいな感じでもうすでにやってたんですよ。で、アコースティックの音源が結構好きだから、"Op."っていうアコースティックだけの編成で(ライヴも)してたんですね。なのでそれを言うと今回は3回目のアレンジになっちゃうんですけど(笑)。通常の公演や、アコースティック編成のライヴはどっちかって言うと、僕を中心にメンバーで内に内にずっと音を出し合ってライヴ空間を作っていく感じで、それを観てくれてる人がいる、みたいな雰囲気だったんです。で本編終わったら、アンコールではもうちょっと開放的なというか、内に内にしてたエネルギーを外に出すみたいなアレンジでワーッと音を出して、ライヴを観に来てくれた人と意思疎通したいなぁみたいな(笑)。それを初め1~2曲やってたのがどんどん増えてって、しかもそのアレンジが結構いいなという感じになってて。それでなんかのツアーのときに、僕とソロを一緒にやってるメンバーで"全曲アレンジして、そういうライヴにしてみたいね"ってよく打ち上げとかで話してて、"いつかやりたいな"ってのがまずひとつあったんです。で、ちょうどそのあとに残念な話ですけど、ソロでもずっと一緒にやってくれてたギターのhiro君が急死しちゃったもんで、個人活動自体どうしようかな? みたいな気持ちになって。そこにはいろんな思いがあるんですけど、一緒にやってた音源、ライヴでしかやってない音源もhiro君とやりたかったし、まだみんなともやりたかったし。でもメンバーとも話したんですけど、やめちゃうともうやってたことがなくなっちゃいそうだなと思ったんです。hiro君とのことも含めて、続けれるなら続けていくべきなんじゃないかってなったときに、3~4曲このアレンジでライヴで一緒にやってたので、プロジェクトとしても、一番最初はそれから音源を作ってみるのが触りやすかったっていうところから始まりました。

-これまでhiroさんと作っていたものも失われてしまいそうな感覚があったと。

大きなことだったんで、いろいろちょっと時間かかったんですけど、そんななかで小林(祐介/THE NOVEMBERS/THE SPELLBOUND/Vo/Gt)君とかは一緒に1作目と2作目(『個人作品集 1992-2017「デも/demo #2」』)に、楽曲によってはかなりバッチリ、ギターもですしアレンジも含めて参加してもらったりして、ライヴも一緒にやりましたし。(生熊)耕治(cune/BLUEVINE/Vo/Gt)君はもともと同い年くらいで、僕のセッションにも参加してくれてたんでhiro君も当然知ってて、朝まで飲んだりとかして仲良かったし、一緒にステージも立ったりして。悠介(lynch./健康/Gt)君はPlastic Treeのほうで知り合ったんですけど、対バンして仲良くなって話したときに、te'のこともすごくよく知ってて"hiroさんのギター大好きで"って言ってくれてて、hiro君に話したらすごい喜んでて。そういう人たちと、hiro君とやろうとしてたり、やり残してたりしたことをやれたらいいなっていうのがありました。で、hiro君が連れてきてくれたドラムのタミフル(高垣良介)とベースの鳥石(遼太)君がやりたいって言うので、それだったら素直に楽しみながらできるかなと。少しずつやっていこうみたいな感じでした。

-なるほど、今回のリアレンジは内省的な本編の反対にアンコールでの演奏が発端だったんですね。

そうですね。それが自分たちの性質的に向いてたんじゃないかと、単純に(笑)。te'にもPlastic Treeにもそういう内省的なものが存在して本編を作ってるんです。でも、内に内に、内省的にやって世界を作り上げるのがすごい好きだけど、終わったら"終わった~、音出したい"みたいな二面性も、もともとあるんで。だからその二面性を楽しんでやってたのが、一番のライヴの楽しみ方だったんだと思うんですよね。なので、その今まであんまり触ってなかったもう一面をしっかり音にしたっていう感じです。

-アコースティックのリアレンジもあるので、何と比べるかっていうのは難しいところなんですけど、シンプルに今回はローファイというか、ガレージでバンドやってるみたいなニュアンスになってますね。

そうですね。もともと、まさにいわゆるガレージ・ロック的な、本当にミニマムなプロジェクトとして始めたんで。もう完全に自主ですし、大人の話ですけどメーカーとかそういう流通も特にないですし。ただ自分らが作ってみたいっていうだけで作ってみた感じだったんですけど、そういった意味ではかなり宅録してる部分も多いし、ドラムも1日に6曲とか録ったりしました(笑)。

-バンド感ありますよね。

時間をかけれたなっていう感じはあります。ぶっちゃけいつ出すかわかんなかったし、何も決まってなかったんで(笑)。メーカーさんとかがいたりとかすると、やっぱちゃんとスケジュール管理ができる。今回は本当に自分で連絡して"来週暇? プリプロしない?"みたいな感じだったんで。このメンツだからできたんだと思いますけど。

-アーティスト写真が"恐るべき子供たち"感が強くて(笑)。

(笑)音源ができかけたときに、俺の中で塊みたいなのがあって。枠上、僕の個人活動になってますが、音のアプローチを考えると、もともとのバンド形式のメンバーの力が相当だし、参加してくれた各ギタリストもみんなもうツーカーになってたから、曲に血を巡らせて肉をつけてっていう感覚がすごくバンドっぽいなって思ったんです。そういったときに写真を新しく撮るなら、自分がひとりで写ってるより、せっかくだったら家族写真みたいな(笑)、記念写真みたいなものを撮ろうと考えて。記念写真的アー写を撮るなら、メイク、背景、いろいろ真面目にふざけたほうが面白いな、みたいな(笑)。そもそもこのアルバム自体が、悪い意味じゃなくてふざけたアルバムだなと僕は思ってるので。アンコールでやってたアレンジを全曲真剣にかますっていうのも、自分の中ではいい意味でふざけてるし。なので、アー写も真面目にふざけてみようと。そしたらみんなもノリノリでやってくれて(笑)。すごい気に入ってます。