Japanese
有村竜太朗
Skream! マガジン 2023年09月号掲載
2023.08.05 @下北沢シャングリラ
Writer : 石角 友香 Photographer:溝口元海
有村竜太朗にとって3度目のソロ作品のリアレンジを行ったアルバム『≒demo』を制作することは盟友 hiroの存在と音楽を彼と関わりのあるミュージシャンと共に遺すことであり、同時にそのことで有村自身もソロ活動を継続する"よすが(縁)"を確認する場だったのだろう。内省的だった原曲をロックの自由度を召喚しうる、有村のアーティスト性が可能にした作品でもある。そこで得た実感をツアーを通して確かなものにしたのが今回の成果だったのではないだろうか。
ソールド・アウトした下北沢シャングリラには熱心なファンが詰めかけ、開演を待つムードは今回のサウンドの指向もあってか、ざわめきに溢れている。そこへ件のアーティスト写真同様の衣装で有村(Vo/Gt)、悠介(Gt/lynch./健康)、鳥石遼太(Ba)、高垣良介(Dr)がオンステージ。悠介のフレージングがメランコリックな世界に誘う3拍子の「≒engeki」でスタートした。聴き入るオーディエンスの表情がパッと明るくなるようなコード感の「≒rentogen」で一斉に多くの手が挙がる。満員のフロアの反応に有村も上機嫌で、"コーヒーと古着と音楽が大好きな下北沢にやってきました。「≒下北沢編」始まり、始まり。ファイナルにこんなにたくさん来てくれて感謝、感謝です"と、街とファン双方への愛を伝えた。特に今回のアレンジはオルタナティヴな音楽を育んできたこの街にぴったりじゃないか。
続く「≒kagidokei」は剥き出しのロックンロールを瑞々しい音像で表現。まるでNEW YORK DOLLSがTHE SMITHSの曲を演奏しているような不思議なネオアコ・テイストを感じてしまった。高垣の"1、2、3、4!"というコールからスタートした「≒zajimachi」は有村の擬音を多用した歌詞が、悠介の発するシーケンスっぽいギター・サウンドと相まって景色を作り出す。音源より甘やかで儚い印象になっているのも面白い。やはりギタリストがアレンジとプロデュースのイメージを担っていることがよくわかる。そして透明なギター・サウンドが4ADの系譜を感じさせる「≒manegoto」あたりで出音が安定し、鳥石のベースも明快に。今回のリズム隊は有村のソロ初期から関わっているだけに、リアレンジにも知恵を絞ったと思われるが、そのぶん曲が持っている変わらないテーマを身体に染み込ませているとも言えるのだ。
泣いても笑っても最終公演、一体感を作ることができればと、意外にも煽りを入れる有村を見ていると、やはりツアーが相当楽しかった様子。ダークにささくれたサウンドで突き通す「≒sikirei」では悠介がJonny Greenwood(RADIOHEAD)ばりにミュートした弦をザクっと鳴らして、曲のイメージを再構築。グッとキャッチーにテンポ・アップする「≒kuruoshibana」、ベースラインやコード感にTHE CUREやNEW ORDERのようなニュー・ウェーヴ名曲のDNAを感じる「≒mata,otsukisama」、そのニュアンスを保ちつつ、より切ないメロディを有した「≒nichibotsuchiku」へ。夕焼けとさようならの記憶が分かち難い色になって蘇るような美しい曲だ。
抒情的なナンバーを続けて演奏したあとはさらにテンションを上げていくことを明言し、セットリストは夜に渦巻く感情に移行していく。ザクザク刻まれるコードと激しくヒットされるビートがひとつの壁を作る「≒tsukikagetotsukikaze」、ソロのレパートリーの中でも最も有村のパーソナルな思い出が凝縮されており、オリジナルから最も飛距離のある「≒jukyusai」へ。高垣の絶叫から始まり、パンクよりぶっ壊れた2ビートでひたすら疾走するこの曲ではフロアのタオル回しが自然発生的に起こり、その勢いが加速して行ったのも、有村のライヴでは珍しい光景だったのではないだろうか。ステージ上もフロアも無軌道にパワーを発散することで、感情を開いていくという、リアレンジ・アルバムを作るモチベーションと最も近い部分を共有したことで、このツアーの核心部分に触れた気がした。
一転、言葉のひとつひとつを大切に紡ぐような「≒nekoyume」を演奏し終え、有村はさらに"下北! まだまだ遊べますか?"と問い掛け、高垣のパワー・ヒットなビートが打ち鳴らされ、と同時にクラップが起きた「≒fuyuu」が爆走し始める。ローファイなロックンロールでありつつ、サウンドはどこまでも澄み切っていて、"透明な 有毒"など、印象に残る歌詞が浮遊したまま脳に浸透する。すべての音が走りながらカオスを作り出して、どこまでも自由な4人のバンド・サウンドに解放されていた。実に見事で、これ以上ないほどオルタナティヴなサウンドを浴びまくった本編75分が終了。
長めのアンコールが続き、再びステージ現れた4人はお揃いのTシャツ姿。有村がひとりひとりの人物像を語りながら、感謝を込めてメンバー紹介したのがとても微笑ましい。そこにスペシャル・ゲストとして、キーボーディストの野村慶一郎を招き入れ、演奏するのかと思いきや恒例の乾杯。ちなみに今回のツアーは楽しすぎて、打ち上げでも移動時でも打ち合わせでも常に飲んでいたと有村。そしてステージ上のギターのほうを向いて、"今日はhiroもそこにいます"と言ったときに改めてこのツアーの意味を再認識した。有村とhiroが始めた制作やライヴ活動を止めない意思が今回の『≒demo』を生んだのだから。
本編でリアレンジ・バージョンをすべて演奏したため、アンコールではもとのバージョンを演奏するという試みも。「猫夢/nekoyume」はキーボードを加えたアレンジでもあくまでもオルタナ色が濃かったが、「浮融/fuyuu」はUKロックのスケール感にシンセが映え、さらに有村のアーム使いで空間が歪むアウトロなど、先ほど本編で披露したニュアンスとはかなり違う演奏で聴くことができた。ただ、明らかにこの5人の新たなアレンジではあった。もちろん、そこに意義がある。有村からは恒例のハロウィン弾き語りライヴの告知、そしてこの『≒demo』があまりにも楽しかったという理由で、追加公演決定のアナウンスもなされた。
嬉しいニュースに沸くフロアから再びアンコールの声が上がり、再々登場した5人。ツアー中のどの時間も楽しかったと先ほども話していたが、ツアー・ファイナルは以前からやってみたかったカバーを急遽決定し、昨日音を合わせてみたという。なんという柔軟性。選んだのはメンバー4人全員が好きなアーティストだというRADIOHEADの「Creep」。あまりにも有村にハマっているし、悠介のJonnyばりのギターはリスペクトに満ちたコピーだった。カバー・シリーズに今後も期待したくなる良い選曲。思わぬプレゼントに続き、本編で若干ミスをしたことに悔いがあるという有村。その「≒jukyusai」をさらに熱量を込め、ラストに演奏し、スタートしてみたことで楽しさも意義も発見して行ったこのツアーを締めくくったのだった。さて、追加公演は同じメニューなのかどうか。そこも気になる。
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