Japanese
セカイイチ
Member:岩崎 慧(Vo/Gt) 中内 正之(Gt) 吉澤 響(Dr)
Interviewer:石角 友香
音楽が目的化しないというお手本のようなバンド、それがセカイイチの20年だと思う。自身の作品に納得したという理由で無期限活動休止するという、ある種理想的な区切りをつける彼ら。その理由である最新作『Where we are』はここ7~8年来、ファンク、ソウル、ジャズやリズム・アンド・ブルースなどをバンドの血肉にし、オリジナルに変換してきた成果のひとつの到達点だ。歌モノのロック・バンドが違和感なく音楽的な変遷を遂げた稀有なケースとも言える。バンドとしておそらくラスト・インタビューになると思われる今回、清々しい句読点の打ち方に至ったプロセスから、話をスタートさせてみた。
-最高傑作ができたから活動休止って、こんな清々しいことがあるんだ? と思いまして。
岩崎:(笑)たしかにできあがったときはもう天に青空が広がっていて。
-(笑)それは本当に満足するものできたからっていうことなんですか?
岩崎:それももちろん結果論としてありますし、順番的にはそれが最後かもしれないんですが、デモとか僕が作るので、楽曲を作っていくとだんだんともうそうなっていってるっていうか、仕上げにかかっていってる感じが自分の中でありまして。この作品だけじゃなくて、これまで培ってきた作品で、もうやりたいことは結構やり切ってきたなぁっていうところと、もちろんそれをもっと昇華させていけることはできると思うんですけど、1回区切りをここでバシッとつけたいなって思いにだんだんなっていったところですかね。
-なかなか稀有な変遷を遂げてきていらっしゃるので、他のバンドだったらこういう形で休止できるのかというと、また違うだろうなって思ったんです。
岩崎:あぁ、なるほど。
-やってらっしゃるほうとしてはセカイイチって、どういうバンドだと思われますか。
岩崎:僕らデビューの頃からずっと"君たちには代表曲がない"って言われ続けてきたんですよね。つまり僕らを形容するようなジャンル感が見つからないまま20年近くやってきていて。でもそのときにやりたいものをやんないとバンドじゃないし。僕らはそんなに売れなかったんですけど、売れるのはめちゃくちゃ正しいと思うんです。でも、十何年かけてでも、出してきた作品を聴いてもらえれば"あ、これがセカイイチなんだな"ってことが、言葉にできないかもだけど、耳でわかるようにしたいなと思ってやってきたんですよ。なんで、今おっしゃっていただいた稀有なバンドなんだねっていう感じの言葉が、僕らにとっては賞賛の嬉しいひと言であって。やってきて良かったというか、正解だったのかな、とひとつ思いました。
-今回のミニ・アルバムは前ミニ・アルバム『Draw Lines』(2021年リリース)と時間的に近いので、コロナ禍以降といいますか、そういうマインドも色濃いと思うんですけど、どんなきっかけで作り始めたんですか?
岩崎:きっかけはいつも"さぁリリースしよう"、"そろそろリリースしようか"みたいな。コロナ禍のときにみんながロックダウンして、日本は緊急事態宣言でしたけど、その間やっぱり僕のやってるその他の制作の仕事とかも結構ストップしたんで、まぁ"やった!"っていうか(笑)。自分の時間が使えるっていうか、今回の曲もそうだし前作の『Draw Lines』の楽曲も、そのタイミングで結構書けたんですよね。久しぶりに自分の時間を使ってるという感じでした。だからきっかけがあるとしたら本当にコロナ禍の結構ストップしてるときに――2ヶ月ぐらいいろんなものが止まったんで、そこで書きまくった感じですかね。
-おふたりはいかがでしたか?
吉澤:僕の場合はライヴをしに行ったり、レコーディングをしに行ったり、どうしても対面で集まる現場ばっかりなので、コロナ禍1年目はライヴもたくさん飛んだし、レコーディングも飛んだし、"どうしたもんかな"ってのもある一方で、これをどうにか面白いことに変えられないかな? みたいな、逆手に取ってなんかしてやろうみたいな気持ちも結構あったんですよね。自分のこれまでやってきた音楽活動と深く向き合ったみたいなところがあって。で、そのときにいろいろ真剣に考えましたね。どうやって音楽やっていったらいいのかなとか、こんなことがあったら音楽で食っていくにも食っていけない可能性も全然あるんだなとか考えたし。でも2年目になるとそういう気持ちが薄れるんですよ。考え尽くしてしまって、"やるしかないか"みたいな感じになっちゃうので。そういう意味で変化はありましたね。まぁでもその2年間は僕にとって結構いろいろ考えてた時期でした。
-中内さんはいかがでしたか?
中内:僕は別の仕事もしてるんで忙しさ的にはまったく変わってないんですけど、世間はあんなに大変なことになって、でも音楽で言えば、例えば「Draw a Line」(『Draw Lines』収録曲)のリモート・バージョンができたとか、逆手に取ってじゃないけど、そんななかでも音楽を続けられるんだって再発見したのは自分の中で大きかったですね。
-必ずしもみなさん同じベクトルではなかったってことですね。
岩崎:そうですね(笑)。これは本当に我々マイペースなところもありまして。
中内:あと配信ライヴの楽しさを知りましたね。
岩崎:あとはあれだ、お客さんの声援ってこんな愛おしかったんだみたいなね。たぶんみんな絶対思うんだろうけど、改めて感じました。
-だからなのかそれとも慧さんの資質なのかもしれないですけど、この期間のコロナ禍などの状況も決して暗く描かれてなくて。
岩崎:そうですね。めちゃくちゃご機嫌にやってましたからね(笑)。
-(笑)今回は一曲一曲、テーマが凝縮されてるなと思って。5曲があっという間に終わっちゃうんです(笑)。ミニ・アルバムとしてこんなことが入れられたらいいなっていうのはあったんですか?
岩崎:でも今回は結構作るのに必死だったから、理想みたいなのはそこまで入れれてはないかな。とにかくこの「Where we are」ができるまでは結構あたふたしてました。"どうしたらいいんだこれ? このアルバムは締まるのか?"みたいな。
-この曲を最後に作られたんですか?
岩崎:そうです。
-ループするというか、ゴスペル的な祈りの構造みたいな曲ですね。
岩崎:そうですね。そのゴスペル系のやり口っていうんですかね、手口に結構ハマってて。それをできたのはすごく嬉しい感じですね。
-ホーンも入ってますけど、圧があるサウンド感じじゃなくて。ホーンのアレンジのイメージはどんなものでしたか?
岩崎:サンプルとなったアーティストでいうとBRASSTRACKSとか、あとはTai Verdesっていう人の「Last Day On Earth」は、トランペットだけでブラス隊としてやってるんですけど、泳ぐような感じというかフリーなフレーズ、スタイルで吹いてる感じを出したかったんです。だけど、なかなかそのフリーな感じは打ち込みではできなかったっていうところで(笑)。今回はサックス・プレイヤーの永田こーせーにちょっと手直しというか、これをさらに"BRASSTRACKSっぽくやってみてよ"みたいな感じで送って、ちょっと修正してもらったんです。そしたら意外とフリーな感じじゃなくても全然いいなってなりましたね。
-説得力のある楽曲というか、音楽観に辿り着いた感じありますよね。バンドでこういう変遷をしてくるってすごく勇気のいることだと思うので。
岩崎:そうですね。今の子たちはもっとクレバーだから、そういった手法はたぶんやらないと思うんですけど。僕らは"チャレンジ"って言うと聞こえがいいけど、飽きたから変わるっていう感じに近いかな。音楽をピュアに楽しむためにやってるだけですね。本当にそれに巻き込んでしまった会社のみなさんに申し訳ないかなと思ってますけど。
吉澤:ははは(笑)。
-しかも今のスタイルに近いものに着手されたのが7~8年前と、すごく早かったなと思うので。
岩崎:でも、DAFT PUNKが『Random Access Memories』を出したときに、ワールド・スタンダードが結構変わった感じがしたんですよね。そのあたりからDJとかも急にシティ・ポップかけ始めるとかして。たぶん2012~2013年とかです。あのあたりから"やった!"って思い始めたというか、"来た来た、俺たちの得意なやつ"みたいな感じになってきてって感じですかね。
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