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INTERVIEW

Japanese

群咲

 

群咲

Member:千咲(Vo/Lyric) ラムシーニ(Music/Pf)

Interviewer:山口 哲生

"ウマ娘 プリティーダービー"のダイワスカーレット役をはじめ、声優としても活動中の木村千咲と、ずっと真夜中でいいのに。や703号室など、様々なジャンルのアーティストへ楽曲制作をしている作曲家のラムシーニによる音楽ユニット、群咲(ムラサキ)。"今日も映えない、明日こそ映えたい私たちへ"をテーマに、ナイーヴでセンシティヴな楽曲を送り出してきたが、このたびリリースされる4thシングル「模造生活」は、これまでのイメージとは異なった、鋭利な音と言葉が踊る1曲に仕上がった。そんな刺激的な楽曲を完成させた群咲にインタビューを実施したのだが、攻撃的な楽曲とは裏腹に、インタビュー中のふたりはとにかく賑やか。隙があればボケ倒し終始笑いが絶えないなか、最新作はもちろんのこと、群咲というユニットについて喋り倒してもらった。

-4thシングル『模造生活』をリリースされます。1stミニ・アルバム『明日こそ』(2022年リリース)から約1年ぶりの新作になりますが、改めて前作を振り返ってみて、どんな1枚になったと感じていますか?

千咲:『明日こそ』は、それまで私が生きてきた集大成になったかなと思っていて。自分には言えなかったことや、隠している気持ちがたくさんあったんですけど、そういうことを言えないのは私だけじゃなくて、周りにもたくさんいることに気づいたんですよ。だから、周りの人たちに"一緒だよ"っていうことに気づいてほしくて。そういうことを伝えたいという気持ちが出てきたのが『明日こそ』に繋がったし、やっと自分が発信できる側にもなれたんだなっていう気持ちもありましたね。

-自身のスタート地点であり、言いたかったことをしっかりと吐き出せたと。ラムシーニさんはいかがでしょうか。改めて『明日こそ』という作品を振り返ってみると。

ラムシーニ:僕は音楽作家をやっていて、普段は発注される側なので、曲を作ったらお金貰えてワーイみたいな感じだったんですけど(笑)、群咲に関しては自分で出資したり、クラウドファンディングとかいろいろやったりして、お金をどう集めるかという。要は、レコード会社の方がやっているようなことをやりながら曲を作るというのは初めてだったんですよね。だから、自由にできたと言えばできたんですけど、逆に言えば、どれだけブレないように、聴き手の方にどう満足していただけるかなというのを重点的に考えて作りました。作家の場合だと、やっぱりクライアントさんの意向がある程度固まっているので、それに従っていればいいんですけど、普段クライアントさんが考えているような、どうすればお客さんにウケるかっていうのを考えながらやれたので、いい経験になっているなと思います。

-そもそも群咲がどういうところから始まったのかについてもお聞きしたかったんですが、そこは先ほどお話にもあったように、千咲さんが言いたいこと、歌いたいことがあって、それを世に発表したいところから始まったと。

千咲:そうですね。生きていると嫌なことっていっぱいあるけど、やっぱりなかなか言いにくいこともあるじゃないですか。でも、歌詞だとなんとなく言えるというか、自分の感情を遠回しに伝えることができる。で、ラムシーニさんはそういうことを曲にしてくれるということに気づいたのが始まりでしたね。

-ということは、千咲さんから声を掛けたと。

千咲:そうです。私がラムシーニさんをナンパしました。

ラムシーニ:まぁ、僕は軽い女やからね。ホイホイついていくから。

千咲:(笑)ちょっとホテル行かない? みたいな感じで。

ラムシーニ:すぐ行くよ。1分で行く。自分で部屋番号のボタン押すよ。

千咲:なんならホテル代も払ってくれるぐらいの勢いで始まったんですけど(笑)、そうですね。始まりとしては、私がそういう気持ちを爆発させたかったっていうところからです。

-ちなみに最初に作った曲というと?

千咲:最初に作ったのは「非公式ワタシ」ですね。

-なるほど。たしかに"言えない"という葛藤を歌っている曲ですよね。歌詞には千咲さんの思いを込めるとして、じゃあどういうサウンドにしましょうかというお話になると思うんですけど。

ラムシーニ:楽曲は全部僕に任せてもらっているんですけど、ただ、作っていくなかで僕も千咲も、やっぱりどこかでブレてくると思うんですよね。今はこういうのが流行ってるからそういうのにしようみたいなことになりかねないので、1個だけルールを決めたんです。

-どんなルールなんですか?

ラムシーニ:架空のファンの子をひとり作って、その子に刺さるかどうかをジャッジ・ポイントとして展開していこうっていうのを決めたんですよ。やっぱり悲しきかな、僕らは毎年死に近づくわけじゃないですか。10年前と今とで考えていることはもちろん違うし、好みも年相応で変わってくる。けど、架空のファンの子は永遠に歳を取らない"サザエさん"現象なので、その子がどう考えているかを軸にすればブレなくなるなと。

-その架空のファンの子って、どんな感じの子なんですか?

ラムシーニ:21歳の女の子で、フリーターしてますね。

千咲:そう。千色(ちいろ)ちゃんっていう名前で、下北沢のライヴハウスでバイトしていて。

ラムシーニ:そういうのをエクセルでまとめたんです、キャラクター設定表みたいな感じで。

千咲:シャンプーはこれを使っているとか、メイク用品はプチプラとか。あとは髪型、誕生日、家族構成......。

ラムシーニ:家賃なんぼとか、足のサイズまで。

千咲:もうどうでもいい情報まで全部考えさせられて。

-あ、そこは千咲さんが(笑)。

千咲:そう! させられたんですよ! 嫌やなぁと思いつつ(笑)。でも、それがあるからこそ、どういうふうにするのか相談しやすいので。

ラムシーニ:やっぱり自分の好みかそうじゃないかでジャッジをすると、絶対にケンカになるんで。"お前の感性は古い"とか言われかねないじゃないですか、お互いに。だけど、共通の認識さえあれば、そういう不毛なケンカは起こらないので、それは作って良かったと思います。

-千咲さんも歌詞を書くときは、まず自分の感情を書きながらも、千色ちゃんにはどう響くかを考えると。

千咲:そうそう、そうです。

-めちゃめちゃおもしろいですね。

ラムシーニ:言ってみれば、群咲ってキャラソンの延長線上みたいな感じにはなるんですよね。

-あぁ。千色ちゃんというキャラクターをイメージして、その子に刺さるものを作るという意味では、たしかにそうですね。実際に楽曲を作るとなったときは、歌詞やテーマが先行します? それともサウンド面のほうですか?

ラムシーニ:半々ぐらいですね。言っても千咲さんは職業作詞家ではないので、自分の気持ちが高ぶったときか、もしくはめちゃくちゃ落ち込んだときに書く傾向があって。その歌詞に僕がメロディをつけるときもあるし、僕のほうでも先に曲を作っておいて、"このメロディに合わせて書いてね"みたいなときもあって。ただ、メロディという制約があるとやっぱり難しいときもあるので、文字数はちょっとオーバーしてもいいから書いてもらって、もしオーバーしたらこっちでメロディを修正するから自由に書いてねっていう。バッファはだいぶ持たせるようにしてます。

-限定せずに、遊びの部分も持たせつつ、という。

ラムシーニ:やっぱりガチガチに固めてしまうと難しいかなと思うので。最近はメロディに合わせることもできるようになってきたので、そこはまぁ時間の問題かなと思いますね。

-先ほど、千咲さんは感情が高ぶるか、ものすごく落ち込んでいるときに言葉を書き留めるとのことでしたけど。

千咲:そうですね。気が進まないときは絶対に書かないっていうのを決めていて。なので、爆上がりしてるときか、激ヘコみしてるときにしか書けないです。だから書かないというか、書けないのほうが正しいかもしれないですね。それで結構攻撃的な言葉だったり、あまりにも落ち込んでいる言葉が詞に出やすいです。

-そうやって楽曲を作り、活動をしていくなかで、群咲というユニットとはどんな存在なのか、おふたりの中でいろいろと考えたりしたことはありました? 自分たちってこういうユニットなのかな、みたいな。

千咲:個人的に、群咲っていうユニットは、おもろい関西人がめちゃエモ曲を作るというコンセプトなんですよ。

ラムシーニ:コンセプトではないよ(笑)。後々生まれたやつよ、それは。

千咲:そうか(笑)。でも、それこそ後々思ったんですよ。こんなヘラヘラしてるふたりが歌ったらめちゃかっこええやんみたいなギャップが生まれている感じがしていて。そもそも、この人(ラムシーニ)がほんまにピアノ弾けるんかな? っていう感じじゃないですか。

ラムシーニ:弾けるよ(笑)。

千咲:私、ずっと信じてなかったんですよ(笑)。初めて会ったときに、(ラムシーニのモノマネをしながら)"僕、作曲できるで~"みたいな。"曲も作れるし、ピアノも弾けるで~"みたいな感じやったから、まぁ、すごい人なんやろうなぁ......とは思ったけど、本当にピアノを弾くのを見たのはその1年後ぐらいで、この人ってほんまに弾けるんや!? って。

ラムシーニ:はははははは!

千咲:ジブリの曲のアレンジとかをその場でしたりとかして。

ラムシーニ:ヨドバシカメラでね。

千咲:そう、ヨドバシカメラのピアノ弾けるところで。だから、そのギャップを楽しんでもらえるような音楽ユニットになれたらいいなと思ってます。ライヴのときも、MCと歌っているときで温度差があったりとか。

ラムシーニ:やっぱり僕らの目指しているところとして、さだまさし先輩がいらっしゃいますから。

千咲:ずっと言うてるもんな(笑)?

ラムシーニ:超えたいよね、まさしさんを。

千咲:超えるの!?

ラムシーニ:まさしは超えんと。

千咲:やめて! 呼び捨てはやめて!

-(笑)ラムシーニさんとしても、曲に関しては"めちゃエモ曲"にしようと思っていると。

ラムシーニ:これは僕の持論なんですけど、その人が作る曲と、その曲を作った人のキャラクターって真反対だと思ってるんですよ。めっちゃ暗くて言葉数少ない子が、明るくてかわいい感じの曲を作ったりするんで、たぶん逆なんじゃないかなって。千咲さんも自分が言えないこととかを歌詞にするのと一緒で、本当は海に行って"いえーい!"とかしたいけど、ちょっと恥ずかしいからそれを作品にするっていう。だから、僕からしたら、かっこつけるのが恥ずかしいんですよね。真面目なときにちょっとウィットなギャグとか入れたくなるし、そういう部分が曲に出てるというか。

-自分の憧れとか願望を曲に反映させるという。

ラムシーニ:そうですね。僕もね、たっかーいビルみたいなところで、女の子連れて、なんかもう何万すんねんみたいなワイン飲んで、"君の瞳は美しいよ"みたいなこと言いたいですけど。

千咲:言いたいの(笑)!? それほんまに言いたい!?

ラムシーニ:できる? 恥ずかしない?

千咲:できひんて。

ラムシーニ:だから曲にしてんねん!

千咲:はははははは!

ラムシーニ:だから! 曲に! してんねん!

千咲:そうなんや(笑)。

ラムシーニ:逆に、できる人は曲とかそんな作らへんよ。叶えてるもん。東京タワーにフッて息吹きかけて、(ライトを)パって消してはるもん。笑ってまうやん、そんなん。

千咲:たしかにそれは笑ってまうな(笑)。

ラムシーニ:そういうお店ってさ、(料理の)お皿も余白めっちゃあってさ、真ん中にちっさいのがちょこんと乗ってて。

千咲:端っこのほうにちょっとだけソースがピっと乗ってて、これどうやって食べんねん、これ食べるんかわからへんみたいな。

ラムシーニ:それ見て"なんか美大の2年生が描く絵みたいやな"とか言うてまいそうやん。言うたらあかんのよ、そんなおしゃれな場所で。そんなんできひんから、曲でやるっていう感じですね。