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INTERVIEW

Japanese

daisansei

 

daisansei

Member:安宅 伸明(Gt/Vo) 小山 るい(Gt) フジカケウミ(Ba) 脇山 翔(Key)

Interviewer:蜂須賀 ちなみ

-今回のシングルに収録されている「ルートユー」は、2021年12月に配信リリースされた新体制初の新曲でした。できなくなったこともあると実感するなかで、新曲はどのように作っていきましたか?

安宅:「えび」以降、制作が若干止まっていたんですよ。エビが排水溝に詰まっちゃったというか(笑)、俺が不調でやべーやべーと思っていたんですけど、ひとまず曲作りのテンポを取り戻そうと思って、とりあえず"曲作ります"とみんなに言ったんです。そうしてバババーッと作った3~4曲のうちの1曲が「ルートユー」でした。だから"4人になって初めてのシングルの曲を"というふうに作ったわけではないです。ただ、シングルにできるような曲を作ろうという想いはあって。というのも、さっき話した4ヶ月リリースを出したときに、渦中にいる俺らは頑張っているのに、思ったより反響がないなぁと思ったんですよ。なのでキャッチーで、メロがたっていて、サビがある曲を作りました。

-シンプルで温かみがあっていい曲ですよね。これが新体制一発目なんて頼もしいなぁと思いました。

安宅:ありがとうございます。できたときは"無理なくポップな曲ができたなぁ"とは思いましたけど、言うほど手応えがあったわけではなくて。なんなら他の曲のほうが名曲って言ってもらえた記憶があるし。......(※脇山とスタッフの方を見て)え、俺のデモを最初に聴いたとき、どう思った?

スタッフ:最初は"クリーム苺大福"って名前だったよね。それを聴かせてもらったときは、すごくいい曲だなぁと思いましたけど、歌詞はもっと考える必要があるしタイトルもこれじゃないなぁと。ふたり(安宅、脇山)でアレンジを詰めるやり方に戻すという話も聞いていたので、そこは脇山君に任せようと思いました。

-"クリームのような段々の/すくいそこねたようなたかい/空のような心"という歌詞は"クリーム苺大福"の名残ですか?

安宅:そうですね。僕、どうしても季節を歌いたくて。季語になる言葉を歌詞に入れたいんですよ。で、僕はこの曲を秋の曲だと思いながら作っていたので、秋の季語を入れたかったんですけど、アホみたいな顔をしてでっかいうろこ雲を見ていたときに、"固めの生クリームみたいだな"と思って。そこで"クリームのような段々の、って言おう"と思って、そこから"クリーム苺大福"というタイトルにしました。僕が言いたい言葉だったというだけで、クリームのようだと言っても、誰にも共感されませんが(笑)。

-安宅さんらしくていい歌詞だなぁと思いますけどね。話を戻すと、脇山さんはデモを聴いたときの印象、いかがでしたか?

脇山:私も、めちゃめちゃ名曲だとは思わなくて。

安宅:だよね。

-ということは、磨いたら光ったという感じ?

脇山:たしかに、時間はかけて作りましたね。アレンジに半年くらいかけたので。

小山:途中で1回私たちにもデモを送ってきたよね。"どういうふうにしたらいいと思う?"って。

脇山:そうそう。歌詞も今までで一番書き直したよね?

安宅:そうだね。僕が脇山に歌詞を送ると、注釈つきのPDFが返ってくるんですよ。"おそらくこうしたいんだろうけど、このままだと足りないからこうしましょう"みたいなコメントがついているので、ひとつずつ直していって、赤を入れられたところを減らしていって。

脇山:一文一文に理由のある歌詞のほうが、ライヴでやるときに気持ちが入るじゃないですか。もちろん聴いた人がどう思うかも大事だと思うんですけど、少なくとも自分たちが意味があると思うものだけで曲を作りたかったので、歌詞でぬるいところがあれば指摘したし......。

安宅:僕の歌詞のこと、ぬるいって言ってますよ(笑)。

脇山:(笑)同じように、4人でやる以上、それぞれに弾いている意味が必要だと思ったので、ギターとキーボードはソロがあったり、フジカケが歌うところがあったり......というふうに、それぞれの顔が見えるセクションがあります。今振り返ると、自分たちにとって「ルートユー」はどんな曲か、その位置づけを与えていく作業をずっとしていた気がしますね。そういう意味で今までで一番力を入れた曲かなと思います。前のような作り方に戻しましたけど、ウェイトはちゃんと4人にかかっているし、自分たちにとって意味のある曲にすることができました。

-2曲目の「Yellow」は今年の2月に配信リリースされた曲ですね。こちらも「ルートユー」と同じように安宅さんと脇山さんでアレンジを詰めていったんですか?

安宅:これはまるっきり違うんですよ。ある日脇山君から俺のところに全部入りのトラックが送られてきて、そこから始まりました。こういうパターンはレアですね。

-全部入りということは、各楽器のアレンジもデモを踏襲しているんですか?

フジカケ:そうですね。ホーンも入っていましたし、ベースも(脇山が)結構考えてくれて。

小山:ギターは要所要所という感じでしたね。基本4つのコードで進行していく曲なんですけど、デモの通りに弾いているところもあれば、自分で考えたところもあって。

-コード進行がこれだけシンプルな曲って今までなかったですよね。

安宅:未だかつてないですね。僕はコードは最低10以上ないと不安になっちゃうから、この曲は不安でしょうがない(笑)。

小山:いつも30くらいあるからね。

安宅:でも、僕だったらマジで作れない曲だと思います。新しい体験って感じ。

-コード進行だけでなく、グルーヴ感なども新鮮ですよね。脇山さん、そもそもこういう曲を形にしようと思った意図は?

脇山:「ルートユー」は歌詞の内容含め、自分の体験を丁寧に表しているような曲だったので、逆にものすごく外向きな曲を作ろうと思ったんですよね。なので、歌詞は"他者"がテーマだし、"大丈夫だよ"というふうに語り掛けるような内容になっています。

安宅:僕、最初脇山から送られてきたトラックを聴いて、湖の横でバスケットボールをする歌詞を書いたんですよ。"レイクサイド・バスケット・プレイヤー"っていう。そしたら全部却下されて(笑)。そしたら"例えばこういう感じ"という歌詞が返ってきて......それはたぶん1番サビに残っているんじゃないかな。1番は脇山がほとんど書いてくれて、"あ、そういうことね"という感じで俺が2番を書いたような記憶があります。

脇山:"クリーム苺大福"と"レイクサイド・バスケット・プレイヤー"のシングルって......。

安宅:もう音楽やめちまえって思いますよね(笑)。

小山&フジカケ:あはははは!

安宅:まぁ、僕としては、"スポーツをしているときのような爽やかさを歌詞で書いてみたらどうなるかな?"というイメージだったので、外向きな曲にしようとしていることには変わりはないはずなんですけど、変なところに行ってしまいました(笑)。

-3曲目の「ビードロ」は今回初収録ですね。

安宅:はい。この曲は「Yellow」よりも先にありました。さっき話したように、「ルートユー」とかバッと作った時期は、"ポピュラーな曲を作ろう"という意識が強かったので、発散じゃないですけど、自分にとって無理のない曲を作ろうと思って。流れるようにさーっと作ったけど、"ポピュラーにしないと"という私もちょっといるような曲です。

-今回、フィジカルに関しては8cm CDでのリリースなんですよね。みなさんの世代だとどうなんでしょう。8cm CDって馴染みありますか?

安宅:馴染みある人~?

安宅&小山:(※挙手)

安宅:半々ですね。(※小山に向かって)なんで馴染みあるの?

小山:"おジャ魔女どれみ"とかモー娘。(モーニング娘。)の8cm CDを持ってたから。

-私も8cm CDは家にありました。『だんご3兄弟』と"ポケモン"。

安宅:あ~、懐かしいですね。僕は最初に買ったCDが大泉逸郎の『孫』で、あれも縦長でした。買ったのは小学生の頃でしたね。

脇山:レコードで出そうってアイディアも最初はあったんですけど、"レコードだとちょっとお上品になっちゃうよね"という話になって。

安宅:そうそう。僕ら、レコードに触れてきた世代ではないから、レコードは別世界のものって印象が若干あるんですよ。8cm CDに関しては、今まさに馴染みある人が4人中ふたりだったけど、このくらいの距離感がちょうどいい。背伸び感が出ちゃうのも違うし、"僕らにとって親しみやすいものがいいよね"という話は、『ドラマのデー』をカセットで出した時にもしましたね(※数量限定でカセットテープでもリリース)。

-カセット、8cm CDと来たら、次は......。

安宅:MDですかね? まぁ、面白メディア・リリース集団ってわけではないんですけど(笑)。

-リリース後の東名阪ツアー("root you発売記念ツアー「ちっちゃな円盤、まわる」")はどんなツアーになりそうですか?

フジカケ:今回、誰に出てもらおうかというのをメンバーみんなで決めたんですけど、シンプルに観たいバンドばかりなので各日本当に楽しみですね。楽しんで、頑張って、負けないぞっていう気持ちです。私はまだハポン(名古屋K.D ハポン -空き地-)には行ったことないんですけど、普段のライヴハウスとは雰囲気が違うところみたいで。

-画家のアトリエとしてスタートしたところらしいですね。写真をいくつか見ましたが、たしかに、いわゆるライヴハウスっぽい感じではないです。

脇山:対バンの人たちや会場の雰囲気も相まって、3ヶ所とも空気感が全然違うライヴになる気がしますね。大阪はPangea(LIVE HOUSE Pangea)だし、対バンもイケイケで"バンド!"って感じだから楽しそうで、ハポンは僕が好きな洋楽インディーの匂いがする日になりそう。東京は私たちと近いシーンで今頑張っているみなさんがBASEMENTBARに集まってくれるから、面白い日になりそうです。だから3日ともそれぞれ色が違うし、それがすごく楽しみで。

-逆に言うと、daisanseiは3色全部似合うというか、どのグループにいても違和感のない存在ということなのかもしれません。

小山:最近野外でライヴをやらせてもらう機会も多いし、あんまりバンドバンドしていないライヴにもあえて出演しているんですよ。ツアーでハポンに行くのも、今までだったらできなかったトライなんじゃないかなと感じるので、すごく意味があるんじゃないかなと思います。

安宅:どこで何がどう響くかが楽しみですね。俺の今回のテーマは"自分でいること"で。僕、対バンに食らっちゃうことが多いので、ツアーをやると嫉妬がたまっていくんですよ。でもそれぞれに違う良さがあるということはわかっているので、それをちゃんと胸に置きながら、ツアーを回る者として"俺が真ん中だ"とおこがましく思い続け、ステージに立ち、すべての気持ちをポジティヴに表現できたらと思っています。

-ちなみに、他の方は対バンに食らうことってありますか?

フジカケ:いや、あんまりないですね。緊張はするかもしれないけど、嫉妬とかはないです。楽しいので、むしろ元気を貰います。

安宅:元気を貰うの? すごいね。