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INTERVIEW

Japanese

CYNHN

2022年02月号掲載

CYNHN

Member:綾瀬 志希 月雲 ねる 百瀬 怜 青柳 透

Interviewer:吉羽 さおり

単純に青色が濃くなっていくだけではなくて、4年間のCYNHNの活動を通しての勢いがクレッシェンドしていくイメージ


-そういった関係性の曲があることで、ライヴでセットリストを組むのが楽しくなりそうですね。アルバムが「AOAWASE」、「レア」で始まって、冒頭から新たな広がりがある一方で、「水の中の」などCYNHNらしいディープさがより深みを帯びた曲があります。

綾瀬:「水の中の」はすごく難しかったよね。

青柳:この曲ではレコーディング前に初めて、インタビューみたいなものがあって。

月雲:編曲をしてくださっているケンカイヨシさんからね。

綾瀬:今、どんな気持ち? とか、この曲をどう思ってる? とかがあって。

百瀬:そういったインタビューがあって、これもまた、私はケンカイさんに導いていただいて歌った感じだったんです。難しい曲で、自分ではなかなかイメージができなくて、"私がこれを歌ったら、どういうふうにみんなの耳に聞こえるんだろう"みたいな感じだったんです。でも、3人の歌を聴いたら、"あぁ!"みたいな。

-この曲は4人の声が合わさることで、世界観ができあがっていく感じもありますね。

百瀬:はい、世界が見えたっていう感じでした。

綾瀬:私は画がはっきりと思い浮かんでいましたね。初めて曲を聴いたときに、水の中に少年がどんどん沈んでいく感じ──最初は水が生ぬるかったけど、沈むほど、どんどん冷たくなっていって、深い深いところまで沈んでいく画が浮かんだんです。音を聴いて、これを編曲した人、ド変態だなって思ったら、ケンカイヨシさんでした(笑)。ケンカイさんは、「イナフイナス」でもご一緒させていただいたんですけど、めちゃめちゃ面白い曲作りというか、サウンドを作る方で。いろんな音を入れて、遊びまくっているんです。それが作詞作曲の高橋國光(österreich/ex-the cabs)さんの作る世界観とマッチしていて、非常に面白い曲だなって思いました。芸術だなって感じましたね。

月雲:私は、最初にケンカイさんにどういうイメージか聞かれたときに、深海に沈んでいて、そこからだんだんと上がっていくにつれて、青色が濃くなっていくようなイメージだったんです。浮上していくにつれて、水面から1本光がスーッと見えるような感覚。この曲は歌い出しの部分が苦戦したんですけど、自分が思い描いていたよりもっとウィスパー・ヴォイスで歌ってほしいと言われました。もうほぼ息、くらいの感じで(笑)。

綾瀬:私もほぼ息(笑)。

月雲:歌ったものが、霧がかったような空気感が出て良かったかなって思ってます。

青柳:たしかに。こんなにやっていいんですかっていう感じだったよね。ほかの楽曲は、このメンバーが歌っているっていうのがわかりやすい感じだから。こんなに息だけで歌っちゃっていいの? って。

綾瀬:本当に誰が誰だかわからなかったくらい。

青柳:そういうのでもいいんだなと。あと、みんながイメージしていたものも今初めて聞いた。志希ちゃんは沈んでいく感じで、ねるちゃんは上がっていく感じなんだなって。自分はもっと、ふたりが想像している青よりも明るい青だった気がする、エメラルド・グリーンみたいな。

綾瀬:わかる、緑っぽい感じだよね。

青柳:自分は水の中にいて、陽が差して水面がキラキラしてるのを見ているんだけど、どこか他人事みたいに見ているような感じで沈んでいって、でも、途中音がバーンって鳴るところになったらすごい勢いで浮かんでいく、みたいなイメージがあったから、人によっても違うんだなって。

月雲:私は最初、無彩色のイメージで、灰色の霧の中にいるようなイメージだったんですけど、冒頭のパートを歌っているときにケンカイさんから、"もうちょっと青を足してみようか"って言われて。青で色彩がある空間なんだなっていうのはあったかな。

-イマジネイティヴなレコーディングですね。

綾瀬:普段は、渡辺 翔さんがディレクションをしてくれるんですけど、渡辺 翔さんは曲のイメージやここはこうっていうのがしっかりとあって、私もそのタイプなんです。でも、ケンカイさんの場合、曲の雰囲気や画が見えている感じがして。それはそれでわかりやすかったです。あぁ、この感じかって。頭で理解するっていうよりは、心や身体で理解するっていう感じだったので、やりやすかったです。

青柳:いろんなやり方があって面白いですね。

-そして「アンサンぶる」はアグレッシヴなギター・ロックで意表を突かれましたが、この勢いもまたいいですね。

青柳:これ大好き。

綾瀬:自分が高校生くらいのときにこういう感じの曲がたくさんあったなって思って。サビとかもキャッチーで、お客さんとキャッチーな振りを一緒にやっている図が浮かんで、これMV出さないんですかって思いました。

青柳:同じこと思ってる(笑)。

綾瀬:対バンとかに出たときに、楽しいぞって思える曲だとも感じるし。これまでの曲がかなりマニアックだと思うんです。「水の中の」や「レア」も今までにない曲ですけど、「アンサンぶる」がこのアルバムに入ることでうまいバランスが取れているというか、絶妙なバランスになっていて。やっぱりアルバムを通して聴いてほしいので。いい作品になったなって思います。

青柳:音が、元気が出るよね。

綾瀬:サウンド的にこれまでの曲が重ためなんですけど、この曲はギターのサウンドがかなり軽くて、ライヴでも盛り上がると思うし。でも、歌詞はやっぱり皮肉が効いてるのがCYNHNっぽいなって。

-曲のバラエティ、CYNHNらしい青のグラデーションも大きく広がって、リスナーの方のいろんなシーンに寄り添えるし、ライヴでの見せ方もいろんな試みができそうですね。こうして完成したアルバムのタイトル"Blue Cresc."という言葉を、今それぞれどう解釈していますか。

綾瀬:クレッシェンドは音楽記号でだんだん強くなるというものなんですけど、個人的にはタイトル通り、だんだん自分たちも大きくなっていく、強くなっていくという1枚なのかなと感じています。これまでの思いも含めた、今までの私たちを背負っていくイメージがありますね。

青柳:約2年前とは世の中も私たちも変わっているので、このだんだん強くというのが、それを投影してるような感じもしますね。変わったなと思います。

月雲:それぞれの曲に、それぞれの青色があると思うんです。単純に青色が濃くなっていくだけではなくて、内側の温度みたいなものは、4年間のCYNHNの活動を通しての勢いがだんだんとクレッシェンドしていくイメージがあります。

百瀬:いろんな青を感じるし、あとはCYNHNらしいタイトルだなって。

綾瀬:うん、おしゃれタイトル。

青柳:この"だんだん強く"の裏には、私たちが強くなるしかなかった、強くなるにはその裏でいろんなことがあったというのが詰まっている感じがしますね。それは特に、百瀬に感じることでもあって。強くなることしかできなかったけど、一方でグループのことをすごく支えてくれていたんですよね。言葉の裏にそういう思いも感じられるタイトルだなって思ってます。

百瀬:ありがとう(笑)。