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INTERVIEW

Japanese

RINGO TONE

2021年05月号掲載

RINGO TONE

Member:西野 剛史(Gt/Vo) 西野 真史(Ba/Cho) 樋口 真一郎(Dr/Cho)

Interviewer:蜂須賀 ちなみ

4thアルバム『Sick!!!!!』をリリースした3ピース・バンド、RINGO TONE。EPや配信限定シングルなどコンスタントにリリースはしていたが、実はアルバムは約4年ぶり。これまでの作品と比べても今作は格段にユニークであり、バンドの進化は火を見るより明らかだ。周りを気にせず、"無難"に収まることもなく、彼らは今自分たちのやりたいことをとことん突き詰める楽しさを謳歌していて、それがバンドのアイデンティティになっている。4年間で何が変わったのか。また、何が変わらなかったのか。収録曲制作時のエピソードを中心に語ってもらいつつ、彼らが吹っ切ることのできた理由を探った。

-今までで一番自由でユニークなアルバムだと感じました。みなさんご自身の手応えはいかがですか?

剛史:前回のアルバム(2017年の3rdアルバム『Good day Good bye』)をリリースしてからの約4年の間に、国内外問わず音楽をいっぱい吸収したんですよ。そこから"さぁアルバムを作るぞ"となったときに、気づいたらいろいろな引き出しが自分たちの中にできていて。結果、自分たちがやりたいことを昔よりも表現できるようになったし、音楽的に面白いと思えるアルバムができたと感じています。

-これは過去作を聴いたうえでの私感ですが、以前は"ギター・ロック界隈でどう突き抜けよう?"ということも考えていたと思うんですよ。だけど、そういうことがいい意味で気にならなくなってきたのかなと。

剛史:その通りですね。

真史:的確すぎてびっくりしてます(笑)。

樋口:3人でまさにそういう話をしたことがありました。

真史:この約4年間めちゃくちゃ悩んで、バンドがどん底まで行ったんですよ。

剛史:まずライヴをするにしても、ギター・ロック系の対バンにも呼ばれるし、ポップでメロディアスな曲をやってるバンドにも呼ばれるし、オルタナ/グランジ系にも呼ばれる。いろいろなところに呼ばれるんですけど、うちらって"たしかにメロディアスだけど、曲の構成がちょっと複雑だな"みたいなところがあるから、どこに行ってもお客さんの求める層とは少しズレていて。そうなるとお客さんからは中途半端に見えるし、自分たちとしても"あれ? うちらはどこに行けば馴染めるんだろう?"という感覚があったんですよね。

真史:それで『Good day Good bye』までは"こうしたほうが受け入れてもらえるかも"と考えて、ちょっとアクティヴな感じに寄せていたんですけど、"本当にやりたいのはこっちではないんじゃないか"と思うようになって。

樋口:RINGO TONEは大学時代からやってるバンドなんですけど、2018年にはみんな社会人になりました。大人になるにつれて、3人の音楽の好みも変わってきていたんですよね。

剛史:それに、もともとのルーツもギター・ロックではなく、90年代のJ-POPやJ-ROCKだったから、シーンに乗りきれない感じはずっとあって。

真史:"なんか違くない?"、"でも、どうしたらいいんだろう?"と行き詰まっていました。

-その状況を打開できたのはどうしてだと思いますか?

剛史:コロナ禍で、ライヴができなくなったことが大きかったと思います。

真史:ライヴでウケるかどうかは考えずに、自分たちのやりたいことを1回作ってみよう、ちょうどアルバムが出せるタイミングだし、という感じだったよね。

剛史:そうそう。音源として面白いものを出すために、研究として家でいろいろな音楽を聴いているうちに"あ、自分たちの好きなようにやればいいや"と思えて。なので、"自分たちが好きなことをやるから、あとは自由に受け取って"という考え方にシフトしましたね。聴いた人がポップと捉えるならそれでいいし、洋楽っぽいと思うならそれでもいい。今はギター・ロックから遠ざかるという意識すらないんです。

樋口:心境が変わったことによって、アルバムの作り方も変わりました。前までは剛史に曲の種を持ってきてもらって、メンバーがリスナーとして"いいじゃん"と思えるものを音源化していたんですよ。だけど今は、曲の種をもとに"どういう曲がやりたいんだろう"、"どういうアルバムにしたいんだろう"と考えながら、どの曲を音源化するか3人で選択している。そうやって作ったからこそ、自分たちのやりたい音楽に近づくことができたのかなと思います。

-収録曲のうち、「ねえ、リリィ」、「あいつは雨のように」は2019年4月に配信限定シングルとしてリリース済みですが、2019年はまだ悩んでいた時期ですよね?

剛史:そうですね。「ねえ、リリィ」は"自分たちが王道のギター・ロックを作ってみたらどうなるんだろう?"と試す感じで作った曲です。僕たちには珍しく、サビで手が上がりそうになる曲だと思うんですけど、それは当時ギター・ロックの曲を聴いて、"こうするとサビの開けた感じが出るのか"と研究しながら作ったからで。

樋口:今までにもメロディアスな曲はあったんですけど、ちょっと中途半端な部分もあったから、1回振り切れてみようという感じでした。

剛史:逆に「あいつは雨のように」は"ギター・ロックいったん作ったし、こっちでは自分たちの好きなことをやろう"という感じでスッとできたんですよ。しかもそれをライヴでやったときに、"今の曲が一番良かった"と言ってもらえることが多くて。悩みながら作った曲とすっきり作った曲、どっちもいいと言ってもらえるのであれば、自分たちの頭の中にあるイメージ通りに作ればいいのかなとそこで気がついたんです。

真史:「あいつは雨のように」は、バラードではないけどミディアムで、激しくないけどメロディがきれいでエモーショナルな曲じゃないですか。「ねえ、リリィ」ほどわかりやすい曲ではないから、当時はカップリングみたいな立ち位置にしていたんですけど、今のうちら的には"むしろこっちがメインだよね"というふうに思っていて。

剛史:なので、それ以降に作った他の6曲はウケる/ウケないは考えずに、頭の中にあるリズムや構成、フレーズを出していきました。あと、今までは"音源通りの表現がライヴでもちゃんとできますか?"ということを結構気にしていたんですけど、ライヴがなくなったことによって、その考えがなくなりましたね。今は"こういう音を入れてみたらどうだろう?"とパソコン上で気軽に試しながら、自由にアレンジを作っています。

-なるほど。このまま他の曲についても訊かせてください。まず、1曲目の「ソルトコーヒー」。この曲を頭に配置するのは勇気がいったんじゃないかと。

剛史:攻めましたね。個人的に気に入っている曲なので、1曲目にすれば一番聴いてもらえるかなという気持ちもありつつ(笑)。この曲は、歌い出しのメロディと、コーヒーに涙が落ちていく情景がまず浮かんで。"悲しげな曲だな"と思ったのと、"メロディアスな曲だからシンプルに行こう"と考えて、すっきりとした構成にしました。

真史:今までは歌の後ろで楽器が鳴っている感じをイメージしていたんですけど、今回のアルバムではリズムをもっと大切にしようと思って。ベースは、音のトメハネをしっかり出したり、バスドラと合わせるところ/合わせないところを区別したりすることで、リズムを打ち出しています。新曲の6曲は全部そういうことを意識しながら作ったんですけど、「ソルトコーヒー」はそのきっかけにあたる曲ですね。

-後半から入ってくるギターのカッティングも印象的でした。

剛史:僕の好きなファンクの曲があるんですけど、そのイメージで遊びとして入れていました。この曲は、彼女と別れ話をしていたら相手が泣いちゃって、"あ、これはもうお別れだな"と思いながらいろいろと思い出しているというストーリーで。過去のことを思い出している間の気持ちがぐわーっと盛り上がっている感じや、だけど結局別れちゃうから最後はスッと終わる感じを、音でも表現したいという気持ちがありました。