Japanese
ぼっちぼろまる
2021年04月号掲載
Interviewer:秦 理絵
ぼっち星から音楽をするために地球外生命体としてやってきた、"ひとりぼっちロックバンド"として活動をするSSWの存在が面白い。2016年からYouTubeを中心にオリジナル曲や動画をハイペースで公開しているぼっちぼろまるは、ネット・シーンのみの活動にとどまらず、ライヴハウスのライヴやイベントにも出演するなど、リアルな現場での活動にもこだわっている。そんなぼろまる(ぼっちぼろまる)が4月2日にリリースする1stアルバム『GARAKUTA』はBUMP OF CHICKEN、ASIAN KUNG-FU GENERATION、RADWIMPSやヒトリエといった自身のロックの原体験とも言えるバンドの影響を強く受けた作品だ。その存在は"地球外生命体"でありながら、どこまでも人間臭い泥臭さを放つ『GARAKUTA』の成り立ちをひもといた。
-バーチャルYouTuberとして活動を始めるきっかけはなんだったんですか?
2~3年前にバーチャルYouTuberのブームがきたときに始めたんです。そのときはすでにぼっち星から地球に、音楽を始めるためにやってきてはいたんですけど、ライヴハウスで数人のお客さんを前に歌うような状態で。
-より多くの人に聴いてもらうためにインターネットの世界に足を踏み入れた?
はい。もともと邦ロックが好きで音楽を始めたんですけど、それと同時にインターネット音楽、VOCALOIDの音楽も好きだったので、インターネットでも自分の音楽を聴いてほしいって思ってたんですね。ライヴハウスでやるだけだと、なかなか広がっていかないっていうのもあって。インターネットで音楽をやる取っ掛かりが欲しかったんです。
-邦ロックだと、どんな音楽が好きですか?
地球にやってきたきっかけになったJ-ROCKは、BUMP OF CHICKENや、アジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)ですね。
-よく聴いていたのは、どのあたりの作品ですか?
バンプ(BUMP OF CHICKEN)だと『ユグドラシル』ですね。インディーズ時代の『FLAME VEIN』や、『THE LIVING DEAD』をよく聴いてました。リアルタイムではないですけど。実は、今回のアルバムを作るときに、『THE LIVING DEAD』みたいなアルバムを作りたいなって思ってたんです。『THE LIVING DEAD』って、1曲ずつに物語があって、オープニングとエンディングがあるじゃないですか。それぞれ別の物語だけど、全部通して伝えたいものがひとつある。そういう作品を作りたかったんです。あと、アジカンの『ソルファ』みたいに、1曲目に短めのかっこいい曲があって、2曲目の「リライト」でガッと勢いが加速するような流れもいいなと思ってて。聴き終えたあとに映画を観たような気分になれるんですよね。そういうバンプ、アジカンみたいなアルバムを作りたいと思ってました。
-なるほど。アルバムの話に入る前に、もう少しぼろまるさんのルーツ的なところを聞きたいんですけど。ボカロ音楽だと、どういうものを聴いてたんですか?
wowakaさんですね。試験勉強をしながら、「アンハッピーリフレイン」をずっと聴いてました。で、そのあとにwowakaさんはヒトリエを始めたと思うんですけど、ヒトリエの1枚目の『ルームシック・ガールズエスケープ』がかっこ良くて。当時、「るらるら」と「カラノワレモノ」が入ってるデモCDをSoundCloudで聴いたときに、めちゃくちゃ衝撃を受けたんです。『ルームシック・ガールズエスケープ』は全7曲が神曲ですよね。今回のアルバムはそういうアルバムにもしたいと思ったんです。
-それで7曲入りに?
いや、本当はもっと入れたかったんですよ(笑)。ストックはあったんですけど、ヒトリエみたいな、いい曲だけを集めたアルバムを作りたいなと思って削ったらこうなりました。
-そのあたりの音楽を聴くのと並行して、自分でも音楽を作るようになったんですか?
はい。BUMP OF CHICKENを聴いて、ギターを始めたんです。藤原基央(Vo/Gt)さんになりたかったんですよ(笑)。ギター・ヴォーカルでバンドを組んだりもしたんですけど、自分が上手く歌えないことがつらくて、歌うのをやめちゃって。前にやってたバンドではギタリストになったんです。それも解散してしまって、地球に来ることにしたんですよ。
-これまでの活動の中でターニング・ポイントになった出来事はありましたか?
バーチャルYouTuberを始めたころ、面白系の動画を積極的にあげてたんです。当時はバーチャルYouTuberが流行ってたので、この流れに乗れば、僕も売れるぞと思ってたんですよ。でも、あんまり伸びなくて。そんななか、それまでに出していた曲を聴いてくれた人が"実は曲がいいぞ"って見つけて、少しずつ広がっていったんですよね。"せっかく頑張って動画を始めたのに"とも思いましたけど(笑)。そもそも曲を評価してもらうために始めたわけだから、自分が作ってた曲は間違いじゃなかったんだなと感じました。
-そのときに評価された曲というのは?
「ダメニンゲンぱれーど」や、「タンタカタンタンタンタンメン」(2018年配信リリースのミニ・アルバム『ぼっちのうたC』収録曲)ですかね。
-特に「ダメニンゲンぱれーど」は、今回のアルバムに通じる部分も感じますけど、歌詞のスタンスはちょっと違いそうですね。
当時はふわっとしてましたね。自分の中では書いてる本質は変わらないんですけど、ちょっと幕みたいなものを張ってたというか。
-自分を曝け出すというよりは......。
物語を書くっていう意識が強くて。今もそれを引き継いではいるんですけど、当時は完全に自分じゃないものを書いて、圧倒的にフィクションっていうつもりで書くことが多かったですね。聴く人の中には"幕があったほうが良かった"っていう人もいるかもしれないから、良かったかはわからないけど、個人的にはそれができて良かったと思ってます。
-幕を剥ぎとれるようになったきっかけはあったんですか?
うーん......自分の心境の変化なのかわからないですけど。恥ずかしかったのかもしれないですね。でも、今は自分を見てほしいと思えるようになったんです。
-バーチャルYouTuberとして活動をするなかで、マルチ・クリエイターのヲタきちさんとタッグを組まれてますけど、どういった関係性なんですか?
まぁ......友達ですかね。ひとりでやるのは寂しいから、一緒にやってるって感じです。 僕ら自身は仲がいい友達とは思ってないんですけど(笑)。
-そうなんですか(笑)?
僕は音楽家で、ヲタきちはMVを作るっていうビジネス・フレンドです(笑)。もともと一緒に酒を飲む機会があったり、濃くも薄くもない友達っていう感じだったんですけど。僕が、地球で音楽をやっていきたいんだっていう話をしたときに、"いいやん、やるわ"みたいな感じで乗ってくれたんです。まだ100再生ぐらいしかないときから手伝ってくれて。今回も「嘘つき犬が吠える」のMVを作ってくれましたけど、映像を作るセンスがすごくありますね。あっちが僕の才能を認めてくれてるかはわからないですけど、そこに対する信頼は揺るぎないんです。
-一緒にやる理由が"ひとりでやると寂しい"っていうのが、ぼろまるさんらしいですね。
だってひとりは寂しくないですか?
-"ぼっちぼろまる"って名前もそうですけど、孤独というものに対して何か特別な想いがあるんですか?
そうですね。よく僕が言ってるのは、みんなどこかしらはぼっちだから、特別僕だけ、君だけがぼっちではないっていうことなんです。普通に生きてたら、誰でもぼっちになる機会はあるじゃないですか。パーティーとかで一緒に来てた友達が知らない人と話してて居心地が悪いとか。多かれ少なかれ、みんなぼっちだと思うんですよね。
-ひとりぼっちであることを肯定したいというか?
うん。結局みんなぼっちですから。でも、結局ぼっちだからこそ、誰かと一緒にやるのが楽しいんだろうなとも思います。たまに思うんですが、ヲタきちとは......まぁ、仲良くやってるんですけど(笑)、どっちかが急にいなくなっちゃうこともありえるじゃないですか。だから、一緒にやれてる今がすごく大切だなと思いますよね。
-なるほど。そんなぼろまるさんの初となるフル・アルバムが『GARAKUTA』です。前半の話でも、自分が憧れているロック・アルバムの影響が強いと言っていましたが、1stアルバムだからこそ、自分の原点を大切にしたいという想いがあったんですか?
いや、決めていたわけではないですね。自分の音楽的素養の根底にある地盤はそういうバンドたちで固められている。で、その他に影響を受けているものがその周りに被さって、僕ができているので。それが自然と出ているんだと思います。
-ロックだけでなく、シティ・ポップ、ヒップホップのアプローチも取り入れた多彩な楽曲が収録されていますけど、そのあたりも自然に出てくるものですか?
いろいろな曲が好きなので、ジャンルとしてもいろいろな要素を取り入れたいなっていうのは、シンプルな欲望としてあるんです。僕、RADWIMPSも好きなんですよ。このアルバムはRADWIMPSの幅広さが根底にあると思いますね。初めてRADWIMPSのアルバムを聴いたのが、『3(RADWIMPS 3 ~無人島に持っていき忘れた一枚~))か『4(RADWIMPS 4 ~おかずのごはん~)』だったんですけど。それを聴いて"あ、こんなに広げていいんだ"って思ったんです。それまでは初期のバンプや、アジカンを聴いてたから、シンプルなバンド・サウンドを良しとしてて、"ストリングスなんてナンパだ"みたいに考えてたんですけど(笑)。
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