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LIVE REPORT

Japanese

ぼっちぼろまる / ONIGAWARA

Skream! マガジン 2022年09月号掲載

2022.08.03 @下北沢LIVEHOLIC

Writer 稲垣 遥 Photo by 堺柊人

ONIGAWARAとぼっちぼろまる。世代的にも活動の場としてもこれまで交わることのなかった、この日初共演の"未知とのそうぐう"な2組であったが、そのベールをめくってみれば、共に彩り豊かなポップ・ミュージックとステージングで観る者の胸を躍らせ、笑顔を誘い、日常を忘れて心弾む時間を過ごさせてくれる、実にマジカルな一夜であった。

まず登場したのは揃いのブレザーに色違いの蝶ネクタイがトレードマークのふたり組、ONIGAWARAだ。オルゴールのSEをバックに現れ、そのゆめかわいい世界観のまま、"スーパーJ-POPユニット"として突き進む彼らの信念をキラキラポップに溢れんばかりに込めた、「ポップミュージックは僕のもの」を自己紹介代わりにお見舞い。煌めくスマイルを振りまきながら甘い歌声とギター・ヒーローぶりでフロアのハートをキャッチする竹内サティフォ(Vo/Gt/Prog)と、ぽっちゃり体形と相反した(?)キレのあるパフォーマンスと美声で惹きつける斉藤伸也(Vo/GAYA/Prog)が会場の温度を上げていく。続けて「MEGA☆DEATH」では"目がめっちゃ死んでる"人ならではのあるあるや苦悩をド級の明るさで届け、思わず吹き出しそうになるが、全力でふざけているのに、最高のグッド・メロディと絶妙な哀愁とで最終的にはなんだか胸に来てしまうのがずるい。さらに「シャッターチャンス'93」と続けると、曲途中では"エッグポーズ"、"歯痛ポーズ"、"Eじゃんポーズ"と歌に合わせふたりでポージング。音も止めてじっくり"シャッターチャンス"を設け、オーディエンスも食らいつくようにスマホを構え撮影していく。そんなふうに、思わず参加したくなるユーモアでぐいぐいと観客を誘い出し、味方を増やしていくのが痛快だ。

90年代感満載のJ-POPを真正面から再現したようなサウンドにONIGAWARA印のほろ苦い詞を注入した「チョコレイトをちょうだい」では、竹内サティフォの泣きのギターも炸裂し、フロアのペンライトも煌々と光る。MCでは対バン相手のぼっちぼろまるに触れ"俺らのほうがぼっちぼろまるだよ。膝とか痛いしさ、身体がぼろぼろなんだよ"と斉藤が自虐で笑わせるシーンもありつつ、楽しい時間はあっという間で、彼らのGIGも終盤。往年の名曲を彷彿させる軽快なディスコ・ポップ的イントロから「ヒットチャートをねらえ!」へ突入すると、もはや初見であろう者も関係なく、その場にいた全員がふたりと一緒に踊りだす。ラストの「タンクトップは似合わない」まで一貫して抜群のポップ・チューンで、コロナ禍のライヴで声を出せなくとも、モッシュはできなくとも、ダンスに制限はないことを実感。フロアもそれぞれが自由に楽しんでいる姿が見ていて愉快で、たっぷり盛り上げて次へバトンを繋いでいった。

続いて、フロアに手を振りながら姿を現したのはぼっちぼろまる。ギター、ベース、ドラムのバンド・メンバーを引き連れての登場だ。オープニングはエッジィな四つ打ちロック・チューン「嘘つき犬が吠える」。"マジ嫌い 大嫌い"というサビが耳に残る情緒不安定な失恋ソングをギターをかき鳴らしながら歌い、フロアの目耳を集めていく。続いて、TikTokから話題沸騰中のキャッチーでキュートなラヴ・ソング「おとせサンダー」を投下し、序盤から全力投球で進んでいく。驚いたのはそのライヴでの演奏能力で、さすが"ひとりぼっちロックバンド"と自ら掲げているだけあって、次々に展開する情報量の多い楽曲たちを、生のバンドで再現してみせるのが見事だった。

"ONIGAWARAさんは昔から聴いてたので今日はめっちゃ光栄で。緊張してたけど、楽しいです"表情の変化は見えないが、素直な言葉やぴょんぴょん飛び跳ねながら歌う様子から心が躍る様子が伝わってきた。そして、"ONIGAWARAさんとの対バンなので、ポップな曲をいっぱいやろうと思います"と「恋は爆ぜる」を披露。その見た目にぴったりのキャラクター感のあるフレンドリーで優しい歌声は、もちろんキラキラとしたサウンドとの相性も抜群で、伸びやかなヴォーカルで爽やかな風を吹かせていく。また、楽しく口ずさみたくなる言葉選びの面白さも魅力のぼっちぼろまるだが、「勇者のくせに」では、"正しさ"というものに翻弄される感情をストレートに綴り、震えるような声で"泣きたいだなんて思ってない/でも でも"と歌い、聴き手の心を揺さぶったりと、リアルな人間(地球外生命体)臭さも見せたのだった。

"今までツーマンとかやらせてもらったことなくて。めちゃくちゃ刺激受けて普段より多めに踊ってましたね"と嬉しそうに漏らすと、ラスト・スパートへ。中華風味満載のSEから「タンタカタンタンタンタンメン」へなだれ込む。途中の"タンタカタンタンタンタンメン"では声の代わりに手を叩いてコール&レスポンス。ぐっとフロアとの距離を縮め打ち解けると、さらに"シャッターチャンスやります!"とその場でONIGAWARAに許可を取り、"めっちゃこれいい!"とONIGAWARAがやったようにポーズを次々決めてはしゃぐぼっちぼろまるとバンド・メンバーが微笑ましい。"最後の曲! 水曜日みなさんお疲れ様でしたー! みなさんほんとにほんとに、生きてるだけで死ぬほどえらーい!"と続けた「いきてるだけでしぬほどえらい」。管楽器やピアノも入った華やかで勇ましい陽のエネルギーを放出すると、後ろまで大きな手拍子が湧き起こった。そしてその空気を取り込んで、頑張ってる"ぼくら"を肯定するメッセージをまっすぐに胸に届け、"またどこかでー!"と大団円。

最初から最後まで笑顔が咲き乱れ、胸の奥がじんわりとあったかくなりっぱなしの一夜が、拍手に包まれ幕を閉じたのだった。


[Setlist]
■ONIGAWARA
1. ポップミュージックは僕のもの
2. MEGA☆DEATH
3. シャッターチャンス'93
4. 恋のメリーゴーランド
5. チョコレイトをちょうだい
6. ナンバーワンちゃん
7. ヒットチャートをねらえ!
8. タンクトップは似合わない
■ぼっちぼろまる
1. 嘘つき犬が吠える
2. おとせサンダー
3. 心をかし
4. 恋は爆ぜる
5. ハナサカステップ
6. 勇者のくせに
7. タンタカタンタンタンタンメン
8. いきてるだけでしぬほどえらい

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