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INTERVIEW

Japanese

Muvidat

2020年06月号掲載

Muvidat

Member:Uqui(Vo) MAH(Dr)

Interviewer:山本 祥子

一番近い人を興奮させることが一番大事なんだって、痛感しているよ


-リスペクトがあるからこそ、個々の音の角がきっちり立ってる感じがするんです。MAHさんのリズムに、Uquiさんの歌にって遠慮していたらたぶんこうはならなくて。みんなの音を混ぜ合わせて一色にするんじゃなくて、交ざってマーブルになってる。赤、紫、黄、緑、青......ってそれぞれ色が残っているから、曲ごとに色味も発色も全然違うの。それがすっごく興味深いし、心躍るの。

Uqui&MAH:(※拍手)それそれそれ、まさにマーブル!

-(笑)マーブルっぷりはコーラス・ワークにまで。全要素が聴きどころだと思ってます。

Uqui:コーラス・ワークはエンジニアのUNAさんのアイディアがふんだんに盛り込まれます。歌詞もまだないプリプロの段階で作ってくれるの。"ここはどうなってるんだろう?"みたいに前のめりで考えてくれて、"すごく面白い! やりがいがある"って言われたのがとにかく嬉しくって。

MAH:"浮かばないとできないからねー"ってね。で、このコーラスができあがってから、なおぴーや大樹に聴かせるじゃん。そうするとまたラインが変わるから、そこも勝手にやってくれるんで、面白いよね。俺らがパチッて火花を散らすだけでうわーって炎が上がっていくのが誇らしくて、楽しくって、最高だなーと。

-「Fog Lights」は最初の火花が相当強かったんだと思うな。

MAH:それが一番大事なんだって、痛感しているよ。SHAKALABBITSのときに忘れていたのが、一番近い人を興奮させることだったなぁとちょっと反省している今日この頃です。UNAさんの言うコーラスが浮かぶ/浮かばないと一緒で、Uquiさんがまず俺の弾き語りのメロディ・ラインに感動してくれないと。Uquiさんにとって言葉が浮かびそうなのか、これは絶対に浮かばないだろうなのか、聴いてもらったときの反応を見て"この曲は違うんだな"ってやめるときもあるし。

-えっ、そういう曲もあるんだ。

MAH:ある。でも、だいたい喜んでくれる。

Uqui:すごいよ、MABO(MAH)ちゃんは。

-あー、今のMAHの満面の笑顔、YouTubeで生配信したい!

一同:あははははは(笑)。

-しかも今回は、いや、今回も歌詞がめちゃくちゃいいから、"あっ、バッチリ浮かんだんですね"って今思った。というか、好きです。

Uqui:やったー!

-1個新しい視点を手に入れた感触というか。SHAKALABBITSの歌詞って、Uquiが提示してくれる景色を覗いたり、世界に潜り込んだりして物語にワクワク想いを馳せるイメージだったのね。けど、「Fog Lights」、「Focus」、「都会の猫たち」もそうかな。もっと俯瞰というか、うんと大きな視野であなたや君と親密に向き合っている歌詞な感じがして。

Uqui:実は「Fog Lights」の歌詞はなかなか進まなくてね。いろんな曲を同時進行で考えていたり、そこに"ハレアコ(Hallelujah Circus Acoustic Show)"の準備が重なったり、ぐるぐるしすぎて苦戦しちゃったんだけど、最終的に思いきりそぎ落としていった感じがあるよ。イメージしてイメージして、イメージをいっぱい広げて宇宙へ行ったのかも。だから、高いところからの曲に聴こえたのかもしれない。あぁ、上のほうまで飛んでいっちゃったのかもしれないね。

-けど、どんなに上まで飛んでいっても、最後は何者でもなく、ただ唯一のメロディになって側にいてくれるんだもん。

Uqui:自分にできることはそれしかないから。今までも何者なのかなぁとか、側にいるとかって言葉を使ってきたけど、やっぱり自分にできるのはそういうことなのよね。あなたが元気になるように。あとはさ、「神ノ街シアター」(SHAKALABBITSが2015年にリリースした18thシングル表題曲)でも"誰かのメロディでいなさいな"って歌ってたでしょ? 改めて私はそういう人になりたいなぁと思って。シンプルにって言っちゃうのは嫌だけども、本当にね、とってもシンプルなんだよ。

-シンプルになるほど言葉選びや、メロディへの乗せ方によってUquiさん独特の空気が鮮明になるというか、より聴き流せないというか。

MAH:逆に凝縮されていってる感じだよね。正確ではないんだけど、寺山修司さんの残した言葉に"ハーモニカの音色は聞こえなくなっても、消えてなくなっているわけじゃない。世界をずーっと旅しているんだ"みたいなのがあって、ものすごく勇気を貰えるというか。一回一回そういうつもりで音を鳴らしたいし、作りたいなぁと思う。あと、ちょっと自慢していい? 今回はキーが全曲違うの。女の子ヴォーカルの曲って、歌い始めのキーが同じになっちゃうことがよくあって、それが聴き飽きる原因にもなったりするわけ。だから、作曲する人はなるべく変えていきたいんだけど、UquiさんはSHAKALABBITSの頃から不思議とバラけてて。とはいえ、全部違うキーにできたのは初めて。これも言ったら奇跡っちゃ奇跡だよね。

-それって歌い手として大変ではないの? って聞こうと思ったけど、今回はヴォーカルも自由度が増してますもんね。

Uqui:そんなに悩むことはなかったね。1曲に対して3回くらいしか歌わなくって。そのなかで言葉尻を強くとか、キャラ濃いめとか、サラッとしている人みたいにパターンを変えているんだけど。もっと歌えるなぁと思いつつ、"それ以上やっても、声が減るだけだし、いいよね"って言われちゃって。もう終わりか、寂しいなっていう気持ちの連続だった。

MAH:3回目を歌い終わる頃には完全にコントロール・ルーム内は"はい、OK!"って空気になってるんだけど、Uquiさんが"寂しいから、あと何回か歌っていい?"とか言うわけよ。いや、めっちゃわかるんだ。ドラムのレコーディングってセッティングするのが大変で、でも、俺もすぐに叩き終わっちゃうから、セッティングにかけた時間と労力を考えると毎回寂しくなるからさ。夢を言えば自社スタジオを持ち、ヴォーカル・ブースがあり、ドラムも常にセッティングしといて、いつでも録れますよっていう状況になったら素晴らしいけどなぁ。

-ベッド・ルーム・レコーディングで制作するミュージシャンも増えてますからね。

Uqui:ベッド・ルームで言えばオレゴンのREIがそうだしね。

MAH:あいつの場合はほぼ森だから(笑)。たまーにREIからビデオ動画が送られてくるんだけど、"鹿が出てきたでぇ"とかって家の敷地に侵入してきた鹿が映ってたりして。しかし、その森の中で作られたリミックスがさ、すごく素敵だなーと思うんだ。

Uqui:ほんとに今回のリミックスは聴くたびに好きになるよ。"方向性はこんな感じでいい?"ってグループLINEで送られてくるのね。その時点ですでにREIらしくて東京にいるときとは響き方が全然違うんだなと思う。安心する場所で作った音楽っていう感じがして。特に「Fog Lights」のヴォーカルのみじん切りはもう"天才だー!"と思ったな。

-さっきの寺山さんの言葉やREI君のリミックスにも繋がるけど、今作には生命力みたいなものを感じるんです。聴き終わっても、自分の中に残ってパワーを与えてくれるような。

MAH:そうなのそうなの。「聞こえる」って曲はまさにそういうことで。本当に初めてだったよ。レコーディングでUquiさんが歌ってるのを聴いて俺さ――

Uqui:超泣いてた。でも、それはレコーディングだけじゃなくって、

MAH:ははははは、ちょっとトイレに行きまーす(笑)。

Uqui:歌詞を書き終わって"ちょっと歌ってみるね"って歌い始めたらもう、横でギターを弾くMAH君から大粒の涙が溢れ出して。子供が泣くときのさ、ぶわぁーっていう状態になっちゃってた。で、タイトルは"聞こえる"にしますって伝えたときも一瞬にしてその泣き顔になって、わぁって泣いて。逆に私泣けないみたいな。

-まぁ、そうなりますよね(笑)。

Uqui:"ハレアコ"の夜の部では私も泣いちゃったんだけど。それは、1月の終わりに、数年間一緒に暮らして私を育ててくれたばあばが天国へ旅立って。何度も手術して、"年を越せない"って言われても、越し続けてきて、"ばあばの生命力、半端ないよね"ってみんなで話してたくらい、すっごく強いの。ただ、去年のツアーが終わったあとかな。お母さんと群馬へ会いに行ったらかなり弱ってて、お医者さんからも"相当危険な状態"という説明を受けて。でも、ばあばは2020年を迎えたんだよね。そして、1月終わりに旅立ちの連絡が来て。病室で"ハレアコ"のDVD(SHAKALABBITS が2016年にリリースした『Hallelujah Circus Acoustic Show』)を観てくれて、美空ひばりさんのカバーが始まったら、ベッドで寝ていたばあばが歌い出したっていう話を思い出したり。

-音楽の力だなぁ。

Uqui:うん。でも、歌う姿を生で観せることは1回もできなかったな、観せたかったなぁっていう想いが溢れ出して、今年の"ハレアコ"は歌いながら泣いちゃったんだ。会うたびに"あんたが元気でいないとばあばつまんないわ"って言ってた声が、頭の中でそのまんま再生されてさ。喧嘩もいっぱいしたけど、楽しかった思い出がどんどん蘇ってきて。"ハレアコ"のあとに、"この曲はばあばのことを一番に想って書きたいと思う"ってMAHに伝えて。MAHのばあちゃんも2年前に亡くなってるから。"山小屋のおばちゃん"って呼んでてね、思い出したんだよね?

-おじいさんは木こり?

MAH:違う違う違う! "山小屋"っていう喫茶店をやってただけ(笑)。

Uqui:SHAKALABBITSで栃木に行ったときは"山小屋"に寄って、おいしいウィンナーコーヒーを飲むっていう。とにかくそれぞれに再生される声があって、兄弟だったり、友達だったり、MAHとっては山小屋のおばちゃんだったり。生死は関係なく、距離が離れたと感じてしまう人って誰にでもいるじゃない? そういうので、一番近くで最初に「聞こえる」を受け取ったMAH君はたぶん子供泣きしたんだよね。大人もこんなふうに泣けるんだっていうくらい素敵な涙だった。

MAH:(照)みんなに生活があって、日々やるべきことというのは泣いていたら進まないし。でも、潜在意識では寂しいのよ。それを引っ張り出して丸洗いしてもらったっていうか、埋めてくれたというか。考えないようにしてたけど、俺は寂しかったんだな、会いたいんだなぁと思った。ここからは俺個人の考え方だけども、土葬されようが、火葬されようが、彼らは地球という惑星の外には出ていっていない。物質として同じ地球に残っているわけよ。ってことは俺たちの周りの空気にも溶け込んでるはずでしょ? そしたら俺が呼吸をするたびに一心同体になっているよね。だから、寂しくないよねっていう話。