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INTERVIEW

Japanese

Crispy Camera Club

2019年08月号掲載

Crispy Camera Club

Member:ミサト(Vo/Gt) 稲本裕太(Cho/Gt) 中根トモヒロ(Ba) りんすけ(Cho/Dr)

Interviewer:秦 理絵

-今作は1曲1曲のキャラクターがはっきりしてると言うか、よりアレンジの違いが豊かに聴こえるなと思ったんですけど、それもミックスの違いですか?

稲本:うん、それもミックスの差だと思います。本当は前作を作ってるときから、絶対こうしたらいいのになっていうのはあったんです。

中根:稲本さんが入ったことで、僕も意見を言いやすくなったんですよ。今まではふたり(ミサトとりんすけ)が年上で、僕が一番年下で、なんとなくついてきた部分があったんですけど。一番バンド歴が長い年上の人が増えたことで変わりましたね。僕の意見も反映されてるから、断然、今回の『ROMA』は気に入ってます(笑)。

ミサト:そうやって意見を言ってくれることで、私が全然わかってなかったところに気づけた部分も多かったんです。ミックスとか音作りのことも気にするようになったし。

りんすけ:あと、個人的な好みで言ったら、どうしてもいろいろ詰め込みたくなるんですよ。でも、稲本君はすごくポップな人なんですね。だから、「ネイビー・ショア」とかも削ぎ落した部分が多くて、よりミサッティ(ミサト)が作るデモの感じに近いというか、ありのままを出せるようになって。うまくバランスをとってくれましたね。

前回のインタビュー(※2018年10月号掲載)では、次回の作品を作るときは"何かコンセプトを設けられたら"っていう話もしてましたけど、今回『ROMA』を作るうえでテーマはあったんですか?

ミサト:テーマ......。

中根:なかったと思います。今できる最善の曲をやりましたね。

-では、それぞれプレイヤーとして、意識したことはありましたか?

中根:ベースに関しては、あんまり捻りすぎないようにしました。今までは頭の中でベース・ラインを組み立てたりしたんですけど、今回はスタジオで反射的に出てくるものを、そのままレコーディングした感じで。より身体が反応することをやりたかったんですよ。

-そうしたいと思った理由はあったんですか?

中根:前作を聴きなおして、もっとシンプルに踊れるほうがいいかなと思ったんです。

-ミサトさんは?

ミサト:私も、前回のレコーディングを思い返したら、ちょっと力み気味だったかなっていうのもあって、ライトな感じで歌ってみましたね。歌詞もあんまり煮詰めないで書いたから、全体的にリラックスしてやった感じですね。

りんすけ:今回はナチュラルなんですよ。私も、あんまり考えずに叩いてるんですけど、録り音だけはこだわってて。「Peggy Jean」とかは全部ミュートしたり、毎回シンバルを変えたり。エンジニアさんと相談しながら、曲ごとに合いそうな音を選んで録ったので、自分の中で出したい音が固まってきたと思います。

-今、みなさんから"リラックスした"とか"ナチュラル"、"より身体が反応するもの"っていうような言葉が出てきたけど、今作でCrispy Camera Clubが目指そうとしてる理想の音楽像は、そういうふうに気構えずに聴ける自然体なものになってるんですか?

ミサト:そうですね。そこは私がスピッツを好きだからだと思うんですけど、心にグサッと刺さるような歌じゃなくても、あのときの、あの感じに似てるっていうような、それぞれの感覚とか季節とか生活に寄り添えるような音楽が好きなんです。ふと何かに気づけるぐらいの距離感でいたいというか。最近思ってるんですけど、すれ違ったときに、"あれ、今の人、なんか気になる"みたいな、それぐらいの感じの音楽がいいなって。

-それは前作を作っていたころには、まだ芽生えてない感覚だったんですか?

ミサト:そんなふうには思ってなかったですね。今思い返したら、前作は結構トゲもあったから。今回は角を削ぎ落して作れたと思います。

中根:あと、単純に今の東京にあるインディー・ロック・シーンがそういう雰囲気なんですよ。俗気がないというか、洒脱な音楽のムードがあるような気がしてるんです。

-例えば、どういうバンドにその雰囲気を感じますか?

中根:よく対バンをするバンドだと、Laura day romanceとか。

稲本:Helsinki Lambda Clubとか。要は、ルーツが外国のインディー・ポップからインプットしてるけど、アウトプットするときは、あくまでポップスとして鳴らしていく。そういうかたちを目指してるんですよね。聴く人が聴けば、"あ、あれ好きなんでしょ?"っていうのがわかる、そういうアウトプットではあるけど、"「ミュージックステーション」に出るようなアーティストしか聴かないんですよ"っていう人が聴いても、いい曲だねって思われるような間口の広げ方をした、インディー・ポップを作りたいっていう感じですね。

-まさにリード曲「ネイビー・ショア」の間口の広さは、今言ってくれた考えがあったからこそだと思います。

りんすけ:もともとこの曲はヴォーカルの弾き語りで作ったんですけど、その時点で良かったんです。しかも、結構最後にできたんですよ。

中根:今回のアルバムを作ってるなかで、リードになりそうな曲がないなぁっていう感じだったんですよ。で、(ミサトに)"なんか弾き語りないの?"って聞いたら、何曲かスタジオでやってくれて、"それや!"ってなったんですよね。

-この曲は海がテーマなんですよね?

ミサト:海の曲を書こうとしたというよりは、自分の中に尖ってる部分があるんですけど、それをもっと広い心で見渡したら、いろいろなものが見えてくるんちゃうかな、みたいなことを言いたかったんです。だから、あとから海がついてきたんですね。

-シーサイドな雰囲気を感じる稲本さんのギターのフレーズが素敵でした。

稲本:あれは最高やな。

ミサト:最初はふつうのアルペジオのイメージで作ってたんですよ。でも、(稲本が)入れてきてくれたのが、ああいう感じやって。

中根:稲本さんらしい歌心があるフレーズですよね。

稲本:ポップスとして、アウトプットするときには、絶対に引っ掛かりが必要だと思うんですよ。できれば、歌もリフも、歌詞も、全部に引っ掛かりがあるのが理想なんですけど、いかにそのフックを増やせるか、だと思うんですよね。1回聴いただけで耳に残らないと、ポップスとして機能しない。この曲だけじゃなくて、常にそれは意識してますね。