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INTERVIEW

Japanese

Crispy Camera Club

2022年01月号掲載

Crispy Camera Club

Member:ミサト(Vo/Gt) 中根 トモヒロ(Ba) りんすけ(Dr/Cho)

Interviewer:秦 理絵

これまで以上に王道でエヴァーグリーンな音楽へと足を踏み入れていく、そんなCrispy Camera Clubのニュー・モードが如実に反映された1枚になった。1月26日にリリースされる『季節風』だ。ミニ・アルバムとしては前作『ROMA』から約2年半ぶりとなる今作には、メロディの良さを突き詰めた「季節のはじまり」のほか、カジヒデキをプロデューサーに迎えた「rock'n'roll wind」を収録。地元京都から上京するタイミングで直面したコロナ禍という時代、再び3ピース編成に戻ったバンドの決断。ふたつの変化を経て新たなスタートを切った3人に2020年以降を振り返ってもらいつつ、最新作への想いを訊いた。


「季節のはじまり」はすごく王道。こういう曲が自分たちを強くしていくのかなと思いました


-前ミニ・アルバム『ROMA』(2019年リリース)以来、Skream!では約2年半ぶりの取材です。本当にいろいろなことがあったと思うので少し振り返りたいんですけど。まず、6月に稲本(裕太)さんが脱退して。再び3ピース編成に戻りました。

ミサト:はい。この作品(『季節風』)までは4人で作ってたんですけど......。

-いつ頃からバンド内でそういった話が出るようになったんですか?

ミサト:4月ぐらいだったと思います。ちょっと上手くいかないことが増えてきてしまって。結果的にこういう決断をすることになったんです。

りんすけ:もともと私たちは京都で、3人でやっていて。前作の『ROMA』ぐらいから東京の彼(稲本)と一緒にやるようになったんですね。で、そこからまた3人に戻るっていう感じではあるので。今はまた3人で話し合いながら動いてる感じですね。

-改めて3人のCrispy Camera Clubを作り直していくという感じですか?

中根:今はその時期ですね。3人のやり方をいろいろ試行錯誤してます。このバンドはギターがめちゃめちゃ大事なバンドなので。難しいんですよね、ちゃんと考えないと。

-ライヴではサポートのギタリストを入れてますね。Newdumsの(Kojiro)Hayashiさんとか。

ミサト:Newdumsは関西のバンドなので、関西に行ったときにやってもらう感じですね。今はからくりごっこっていうバンドの前田てれび君がメインでいてて。あと、もうひとり社会人の子にも手伝ってもらってます。

中根:3人サポートがいるんです。ローテーションでスタジオに入ってるんですけど、みんなタイプが全然違うんですよ。だから逆に僕らも音楽的に学ぶ部分があって。このギターに合わせるにはこうしよう、とか。めっちゃ上手くなった気がしますね。

ミサト:たしかに(笑)。めっちゃ上手くなったと思う。

-2020年の3月以降コロナ禍と言われる状況になってからは、メンバー同士でバンドの方向性を話し合うことも多かったですか?

ミサト:コロナとは関係なくメンバーとはよく話すようになりましたね。結果的にコロナの時期にいっぱいやれることもあったんです。

-たしかにライヴが中止/延期になっていくなかで、Crispy Camera Clubはわりとすぐに配信でライヴをやっていたり、9月に『Apartment Dreams』(フォトブック+マキシ・シングル)を発表したりしてて。可能な範囲で動けていたように見えました。

ミサト:コンスタントにずっと新曲を作ってたんですよ。それで動いている感じは出せてたのかもしれないです。正直、私の場合、コロナだからって落ち込んだりすることもなかったんですよ。むしろコロナ以前のほうが世間の勢いに追いつけてない感じがあって。自分の性格の問題だと思うんですけど。

-それは音楽シーンの流れの速さについていけない、ということですか? それとも社会自体がめまぐるしく動いているように感じるのか。

ミサト:あ、音楽もそうだし......両方ですかね。生まれ持った熱量が低いんです(笑)。自分の中でずっとそういう感覚があって。いつも何かを追いかけているというか。でもコロナになって世の中が止まったときにいろいろ冷静に考えられるようになって。今まで以上にたくさん曲を作れたし、打ち込みで曲を作る技術も上がったんです。

りんすけ:真剣に曲に向き合えたタイミングになったんですよね。スタジオも開いてないから、今までやったことないけど、パソコンで曲作りをするとか。私はパソコンを持ってないから、スマホでドラムを打ち込んだりしたんですけど、そういうのがゲーム感覚で楽しかったんです。お酒を飲みながら音楽の話をしたり。心的には充実しながら、ワクワクした気持ちで曲を作れたんです。

-中根さんはどうですか?

中根:ちょうどこっち(東京)に来たタイミングでコロナ禍になったんですよ。タイミング的にバンドのやるべきことが、ライヴをガンガンやろうじゃなくて、とにかく4人で曲を作って足場を固めようっていうモードだったんです。だからコロナ禍になっても、あんまり(変わらなかった)。ちょうどいい機会かな、ぐらいに受け止めてました。

-なるほど。

中根:ただ、そのなかでバンドの雰囲気が悪くなっていったところもあったので。実は僕は就職しようかな、ぐらいに考えてたんです。

-そこで踏みとどまれたのは......。

中根:うーん、『季節風』を作るにあたって考えが変わったんですよね。

-自分たちのやりたい音楽ができた手応えがあったから?

中根:簡単に言っちゃえば。そういうことですね。

-特に中根さんにとってターニング・ポイントになった曲はあるんですか?

中根:曲で言ったら、『季節風』のちょっと前なんですけど、KOGA RECORDSのコンピ(2020年リリースの『HAPPY CHRISTMAS FROM SHIMOKITA』)でクリスマス・ソングを作って。

-「Wednesday」?

中根:あ、そうです。そこで未来が見えるにようになってきたんです。引き算での作り方を思い出したんですよね。ここ最近はわりと厚みのあるグルーヴを出そうとしてたけど、「Wednesday」でそんなに弾かなくていいんやっていうのを実感して。

-それが『季節風』のモードにも繋がってるわけですよね。

中根:そうですね。あんまり音数が多くなくてもグルーヴって出るなっていうのは感じました。それが僕の中では新しいバンドに入ったぐらいの感覚だったんです。

-りんすけさんも新しいワクワクを感じながら曲作りをできたと言っていたし、バンドとして新しい気持ちでリスタートをするような気持ちだった?

中根:というよりも、僕はずっとこのバンドが始まってない感覚があったんです。最初は4人だったけど、途中で3人になって。そこに稲本さんが入ったことで0からの上京だなって思ってたけど、またやめちゃって。ずっと始まってない感じなんですよね。未だにスタートが切れてる感覚がないんですよ。

-それは『季節風』ができても変わらないですか?

中根:僕は、そうですね。

ミサト:でも曲にもよるって感じもあるんですよ。『季節風』の曲の中でも、「季節のはじまり」とかは前に進めたって感じられて。すごく王道だと思うんです。普通というか。でも、こういう曲が自分たちを強くしていくのかなとも思いました。

中根:僕は「Orange」かな。ちょっと前に進めた曲って言うと。

-うんうん。「季節のはじまり」と「Orange」は同じモードで作った曲なんだろうなっていうのがわかる気がします。よりメロディを強く聴かせる曲というか。

中根:そう。メロディを聴かせるための演奏ができてる曲なんです。

ミサト:もともと私たちは90年代の音楽に影響を受けてるけど、それを(そのまま)やっちゃう? みたいな感じもあったんです。でもガツンと好きなところを鳴らすと、やっぱりハマったんですよね。思い切って試してみたら、プラスな方向になったなと思いました。

中根:僕たちのやりたいイギリスっぽいことができてるかなと思いますね。

-イギリスっぽい、アメリカっぽいという捉え方も人によって違うと思うんですけど。Crispy Camera Clubにおけるイギリスっぽさってどういうものですか?

中根:言葉にするのは難しいな......。

ミサト:参考にするところで言えば、プライマル(PRIMAL SCREAM)とかOASISなんですけど。

中根:僕の中ではTHE BEATLESでしかないです。メロディ先行なんかな。アメリカはグルーヴ先行だと思うんですけど。"このグルーヴに対してこのメロディを乗せます"がアメリカなら、イギリスは"このメロディに対してこういうグルーヴです"みたいな感じ。だから歌がまずある。そこに日本っぽいものって当てはめやすいんですよね。

-今までもCrispy Camera Clubの曲のメロディは良かったけど、ここにきてバンドの意識が変わると、やっぱり聴き心地って大きく変わるんですよね。

りんすけ:今はいい曲にしようっていう気持ちが強くなってると思います。今作ってる新曲もそうなんですけど、デモの状態でメロディがいいから、そのままそれを生かした曲にしよう、みたいな感じなんですよ。「季節のはじまり」はアコギでも聴ける曲だし。昔のやり方だったら、こういうバンドのこんな雰囲気にしたいよね、みたいな感じでアレンジを詰めたり、作業の中で既存曲を崩して落とし込んだりもしたんですけど。今はみんな歌を大事にするっていう感覚が強くなってるんです。

以前のインタビューでは、ポップ・ミュージックというのはサンプリングである、というような言い方もしてましたもんね。リファレンスのもとに曲作りをするっていう。

中根:未だにその感覚はあるんですけど、メロディの要素を削らずにそれができるようになってきた感じですね。

-さっき少し話に出た「季節のはじまり」はいつぐらいにできたんですか?

中根:最後のほうかな。曲自体はずっとあったんですよ。

ミサト:20歳ぐらいのときに作ってたんです。その頃あんまり陽の目を見なかったんですけど。

中根:アルバムができあがっていくなかで、もう1曲メロディが強いやつが欲しいなと思ってるときに、前に聴いたことがある「季節のはじまり」が良さそうだなって。

りんすけ:昔はいい曲すぎて手をつけられないと思ってたんですよ。でも今回実際にやってみたら、自然とみんながメロディに寄り添っていける感じでしたね。

-タイトルとか歌詞は変えてるんですか?

ミサト:いや、全然変えてないです。

-今新しい季節を迎えているバンドのモードにも合っているなと思ったんですけど。当時どんな心境で書いたか覚えていますか?

ミサト:作ったときの自分の心情をかなり反映してると思います。当時いろいろな音楽に憧れがあって。オシャレなのもやってみたいって思ってたんです。でも自分にはこういう歌っぽいのしか書けへんのやなって、そんなに気に入ってなかったんですよ。それを今回みんなが掘り起こしてくれて。私の中では若すぎるかなとも思ってたんですけど。改めてアレンジを詰めてみて、自分の心にも世の中にもハマった感じがしましたね。