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INTERVIEW

Japanese

Crispy Camera Club

2022年01月号掲載

Crispy Camera Club

Member:ミサト(Vo/Gt) 中根 トモヒロ(Ba) りんすけ(Dr/Cho)

Interviewer:秦 理絵

-あと、今作のポイントとしてはカジヒデキさんをプロデューサーに迎えた「rock'n'roll wind」も収録されます。これはどういう経緯で実現したんですか?

ミサト:(KOGA RECORDSの社長の)古閑(裕)さんがこういう機会を用意してくれたんです。"1曲プロデュースでやってみるか?"って聞かれて。まさかカジさんになるとはって。

-3人にとってカジさんはどういう存在ですか?

ミサト:自分たちの音楽に取り入れられてはいないんですけど、憧れの存在ですね。

-直接的なルーツではないのかもしれないけど、例えば、カジさんが影響を受けたものと同じものを聴いてるとか、そういう共通項はありそうですよね。

中根:僕はプロデュースが決まってたから全曲聴いたんですよ。あ、すごいなと思いました。たぶん共通部分で言うと、さっき言ったイギリスっぽさみたいなのはカジさんにもあって。その頃の渋谷系の人たちがやってる音楽の作り方って、今の僕らがやろうとしてるロジカルな考え方、頭を使って組み立てていく音楽の作り方なんだろうなと思ったんです。せーのでバンって合わせるというよりは、このメロディにはこのビートで、こういうフレーズでっていうのを考えながら作る人だなと感じましたね。

-りんすけさんは?

りんすけ:前に働いてた京都のカフェによくライヴでいらっしゃってたんですよ。そこがすっごくカジさんを好きなお店で。毎回ライヴとかで招いてはるところだったので。そのときに"聴いてください"みたいな感じでCDを渡していたんです(笑)。で、今回お会いしたときにカジさんも"あのときの子だよね"って言ってくれて。

-覚えててくれてたんですね。

りんすけ:まさかその先にこんなご縁があると思ってなかったので。すごい人生だな、と思いました(笑)。

-カジさんはどういうかたちで関わってくださったんですか?

ミサト:最初にミーティングをしたときに原曲を聴いてきてくださったんです。で、サンデーズとか、こういうメロディに合うような洋楽を持ってきてくれてて。それに準ずるような感じでいくつかデモを作ってみました。で、やりとりをしていくなかで、リードにするためにはもう少しテンポの速い曲にするっていう流れになって。

りんすけ:最初はサンデーズっぽい16ビートだったんですけど。

中根:もっとキラッとした感じだったよね。

ミサト:そこから私たちのほうでアレンジを考え直して、改めてカジさんに細かいところを詰めてもらいました。そこでシンセとかも入れてもらって。

-最終的に、Crispy Camera Clubとカジヒデキのエッセンスが融合した曲になったんじゃないかなと思います。歌詞は忘れられない景色を描いたような内容ですね。

ミサト:歌詞もカジさんにアドバイスを貰いながら書いてますね。

中根:最初は全部英詞だったんですよ。それに対してカジさんから"ここは日本語にしてみたら"っていう提案があって。不思議なことに日本語にしたほうが洋楽っぽくなるというか。僕の中では英語のときのほうがJロックっぽく聴こえてたんです。

ミサト:2番のBメロで"覚えている飴の味"って歌ってるんですけど、最初は"忘れがたい飴の味"だったんですね。意味は一緒なんですけど。こっちのほうが......。

中根:メロディに対して母音の感じが適切なんですよ。それによって洋楽っぽくなってるというか。音と言葉がマッチして聴こえるんだと思います。

-他のアルバム曲のことも聞かせてください。「torch」はさっきも言っていた通り、音数を減らして聴かせる曲ですね。

中根:僕は「torch」がすごく好きなんですよ。無機質なグルーヴに有機的な言葉が乗ってるのがぐっとくるんです。もっといろいろなアレンジのパターンがあったんですけど。そのときにカネコアヤノとKID FRESINOがコラボしてる曲(「Cats & Dogs feat. カネコアヤノ」)を聴いて。ヒップホップっぽい無機質なグルーヴの上にカネコアヤノの温かさが乗ってたんですよね。こういうことや! って。一気にこの方向に持っていきました。

ミサト:これは本当にデモの段階から変わりに変わりまくった曲なんですよ。最初の時点から、ドラムの音が打ち込みっぽいイメージはブレてないんですけど。それ以外はすべて変わったような感じでしたね。

-打ち込みっぽく聴こえるけど、ドラムは生で叩いてるんですよね?

りんすけ:生で叩いてます。今回はドラム・テックさんに入ってもらってて。打ち込みじゃないけど、打ち込みっぽく聴こえるようにしてもらってるんです。自分の中で遊びながら叩いてる感じがしましたね。これは自分の中で最新のTHE STROKESって感じで。機械っぽいものをイメージしてるんです。

-「torch」の歌詞はミサトさんと中根さんがふたりで手掛けてますね。

ミサト:もともと私が書いてたものを結構変えてくれてます。私はぼんやり書いちゃうところがあるけど、より意味がはっきりした言葉になったと思いますね。

中根:たしかオリンピックの時期だったから関連させてやろうと思って。

ミサト:かなりオリンピックやな、これ(笑)。"誰にも譲れない灯す火のように"っていうところとか。私の中では"誰にも譲れない"っていう感情は、今まで散々他の言葉に変えて歌ってきた感じやったんです。だからどうしようかなって悩んだんですけど。アレンジができて歌ってみたら、すごく自分の中にスッと入ってきましたね。

中根:後半の"流れる雲の速さに驚く/小さな旅立ち"っていうのが、僕はめちゃくちゃいいなと思ったんですよ。このテンションを歌詞にできたら、めっちゃいい曲になるなっていうのはあって。そこを目指して変えていった感じです。

-「無敵なゆうれい」はどうですか? ローファイなインディー・ロックですけど。

中根:一番簡単に作れた曲かな。スタジオで事足りたというか。他の曲はパソコンで試しながら作ったりしたんですけど。これはもうパッてできた。

りんすけ:スタジオで、2~3時間ぐらいでできたイメージですね。これはNIRVANAっぽいというか。ルーズな感じで叩いたのがハマったなって。なんの苦労もせずにいけた感じがしたから、自分はこういうのが得意なんだなと思います。

-今のバンドの自然なムードでやると、こういう曲が生まれる?

ミサト:うん。これは私の中では髭ですね。弾き語りの時点では気づいてなかったけど、アレンジを作ってるうちにメロディもそれに近いなって。軽い心で聴けるような曲にしたかったので、歌詞もそんなに入り込むような感じじゃないんです。

-"無敵なゆうれい"っていう比喩的なモチーフはいろいろな解釈ができますね。

ミサト:"飛んで無敵なゆうれい"っていうところがメロディと一緒に自然に出てきたんですよ。それがしっくりきて。だからあんまり深い意味はないんです。

-"絶望は懲りないのだ!"っていう歌詞も痛快でした。

ミサト:私は常にそういう心で歌詞を書いてるところはあるなぁって思うんですよね。でも、最近はそれがより強くなってる感じはしてます。

-ミニ・アルバムのタイトルを"季節風"にしたのは、「季節のはじまり」という曲がきっかけですか?

ミサト:そうですね。でも「季節のはじまり」にフォーカスしようと思ったわけじゃなくて。今までのアルバムのタイトルは4文字の英語にこだわってたんですけど、それは絶対に違うなと思ったんです。今回は日本語の曲名も多いので。それで"季節風"がパッと浮かんで。言葉の意味を調べると、何かのきっかけとなる風みたいな感じだったんです。季節の区切り目ですよね。木枯らしが吹いたら冬ですよ、とか。

-春一番が吹いたら春ですよ、とか。

ミサト:そう。そういうのも含めて、聴く人にとって何かを始めるきっかけになるアルバムになればっていうのも、この言葉とリンクしたんです。