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INTERVIEW

Japanese

神様、僕は気づいてしまった

2019年05月号掲載

神様、僕は気づいてしまった

Member:どこのだれか(Vo/Gt) 東野へいと(Gt) 和泉りゅーしん(Ba) 蓮(Dr)

Interviewer:秦 理絵

匿名性を纏いながら、引き裂かれるような孤独や自己嫌悪をテーマにした刹那的なロック・サウンドを鳴らす、神様、僕は気づいてしまった(通称:神僕)。謎の覆面バンドとして、2017年にシングル『CQCQ』でメジャー・デビューを果たし、初ライヴとなった"SUMMER SONIC"に出演して以降、数えるほどしかライヴ活動を行わないという楽曲至上主義のスタンスを貫いている。そんな神僕が5月15日にリリースする初のフル・アルバム『20XX』は、メイン・ソングライターを務める東野へいと以外のメンバーも作詞作曲を手掛けた、エンターテイメント性の高いロック・アルバムとして完成された。作品のテーマに"ふたつの孤独"を掲げたという渾身の全13曲で問い掛けるのは、希望か、絶望か。メンバーに話を訊いた。

-初のMV「だから僕は不幸に縋っていました」(2017年リリースの1stミニ・アルバム『神様、僕は気づいてしまった』収録曲/MVは2016年11月に公開)を公開してから2年半でリリースされる初のフル・アルバムですね。

蓮:どこのだれかと和泉りゅーしんのふたりもそれぞれ作曲したから、バリエーション豊富なアルバムになったと思いますね。らしさもあるし、今までやってないことに挑戦してるところもあるし。1stフル・アルバムとしてはいい出来になったと思います。

和泉:初めて自分が書いた曲が神僕の曲になって、こういうものになるんだなっていう発見がありましたね。みんなで演奏をして、どこのだれかがヴォーカルをやったら、それは神僕の曲になるんだなと。

前回のインタビュー(※2018年10月号掲載)でも、最近はバンドとしての一体感が強まってきたっていう話もありましたけど、今作はそういうムードを感じながら作るところがあったんですか?

和泉:そうですね。今回タイトルとか曲順を決めるときに、みんなで揉めたんですよ。やっぱりメインで曲を書くのが東野だから、今までは東野がメインで構築していくっていうところがあったけど、ようやくみんなで考えようっていう空気が少しずつできてて。それも"俺に意見をくれ!"って、東野が言ってくれたからなんですけど。やっと共同作業ができるようになったところはありますね。

-東野さんは、メンバーからの意見を求めたい気持ちが強かったんですか?

東野:そうですね。バンドである以上は、みんなで知恵を寄せ合わせたいんですよね。そういう化学反応的な部分がこのバンドは弱いなと思ったんです。今まではデモでほとんど完成してしまっている決め打ちの曲が多かったし。でも、そこに不確定要素を足したかったんです。それでまとまらないこともあるんですけど、10回に1回ものすごくいい方向にいくこともあるんですね。宝くじを引く、みたいな。

-安定したやり方で80点を出すよりも、全員で120点を狙うような作り方というか。

東野:はい。そこで生まれるアンサンブルがバンドっぽいんですよね。きれいにまとめるのはプロの作曲家の仕事だから。自分たちがバンドとして音楽を発信していく意味ってそこだと思うんです。

-そう思うようになったきっかけはあったんですか?

東野:何かひとつのきっかけがあったわけじゃないんですよね。まず、『CQCQ』(2017年リリースの1stシングル)でデビューしたじゃないですか。僕は天邪鬼な人間なので、あのときは"裏切らない感じの曲"っていうのがいいかなと思ったんです。で、次に出したのが「TOKIO LIAR」っていう今回のアルバムにも入ってる曲なんですけど、リズム周りにクラップを入れてみたり、スタンプ系のキックをレイヤリングしたり......これはなんていうジャンルなんだろう?

-ブラック・ミュージック的な手法を取り入れてみたと。

東野:今の時代の流れって、そっちに行ってるじゃないですか。だから『CQCQ』のあとは、それに対してバンドがどう向き合っていくかをやっていきたくて。でも、その反応がメンバーの中でもバラバラだったんです。正直、神僕の音楽として、その方向でやるのは違うんじゃないかっていう話もあって。自分ではそっちに行きたい気持ちもあるけど、ちゃんとメンバーに歩み寄っていかなきゃいけないのもわかるから、"じゃあ、どうする?"っていうことを、ちゃんとメンバーに聞いた方がいいと思ったんですよね。

-そういう話し合いがあったうえで、結果、今回のアルバムでは新しいアプローチをふんだんに入れる方向になったんですね。

和泉:はい。僕は新しいことができたのは嬉しいなと思いましたね。今までの僕らの流れからすると、変化球っぽい「TOKIO LIAR」とか「Troll Inc.」も好きだし、自分も「沈黙」っていう新しいタイプの曲を書いたし。それに対するリスナーの反応は全然わからないし、東野は"「Troll Inc.」は、受け入れられにくい曲だと言ってたけど、自分やどこのだれかは"「Troll Inc.」が一番いい"って言ってるんですよ。だから、今回のアルバムを聴いてもらって、どういう反応が返ってくるか楽しみですね。

-蓮さんは、こういう流れになったことに対してはどう思いますか?

蓮:神僕って、なんでもやっていいバンドだと思ってるんですよね。ジャンル的には。だから今回の「TOKIO LIAR」とか「Troll Inc.」、「破滅のオレンジ」、「沈黙」っていう、今までの王道の神僕と違う部分には可能性を感じてるんですよ。みんな作曲編曲に関しては素晴らしい能力を持った人が揃ってるから、そこの部分では信頼してますからね。

-こういう作風だからこそ、どこのさんの表情豊かな歌唱も生きるかたちになったと思います。ヴォーカリストとして意識したことはありますか?

どこの:人間は十人十色でそれぞれがそれぞれの人格を持っていて、各々が多面性を内包しています。なので、"どこのだれか"は、"どこかの誰か"であり、誰しもがそれになり得る存在であるという考えを意識して歌いました。それを"表情豊か"と感じていただけたのであれば、とても光栄ですね。

-どこのさんだけじゃなく、今回は本来メンバーが持っていた総合力を発揮された作品だし、より自分たちがやりたい音楽を収録できた作品なんでしょうね。

東野:それはそのとおりなんですけど、でも伝えておきたいのは、いろいろなかたちの音楽があるなかで、僕たちがやるべきなのは音楽のエンターテイメントの部分だと思ってるんですよね。音楽の種類って、アート(提起)、プロダクト(提案)、それとエンターテイメント(提供)の3つだと思うんです。エンターテイメントは提供するものだから、いいと思ってもらわなきゃいけないし、自分たちが求められてるものを理解したうえで提供していく必要があるんです。もちろん理解したうえで、"今はそういうムードじゃないから"って好きなことをやるのはありだと思うけど、どちらにしても、理解してるか、理解しないでただ好きなことをやるかは意味が変わってくる。そこが大事だったんですよね。

-ええ。

東野:例えば、最初、今回のアルバム・タイトルは英語にしようと思ってたんですよ。そしたらどこのだれかが、"いや、神僕で英語のタイトルは違う気がする"って言ってたんです。自分たちが求められているものを提供するなら、その英語のタイトルは違うんじゃない? って。それで、考え直して"20XX"になったんです。