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INTERVIEW

Japanese

Eve

2019年02月号掲載

Eve

インタビュアー:柴 那典

Eveがニュー・アルバム『おとぎ』をリリースする。動画投稿サイトにボカロ曲のカバーを中心に発表する形で音楽活動を始めた彼。その名が広まるきっかけになったのは、2017年12月にリリースされたアルバム『文化』だった。初めて自ら全曲作詞作曲を手掛けたという『文化』には、繊細な内面性、現実と非現実が鏡合わせになった世界観など、彼の独特のセンスが刻み込まれていた。2018年には初の東名阪ワンマン・ツアーも実現。アニメーション映像も大きな役割を果たし、観る人を惹き込むようなステージを形にした。『おとぎ』はそれらの活動の延長線上に生まれた1枚だという。ネット・カルチャー発の巨大な才能、その表現の核にあるものを訊いた。

-『文化』(2017年リリースの4thアルバム)というアルバムをリリースしてから1年少しが経ちます。あれからアーティストとしてどういう変化がありましたか?

『文化』を作っているときはすごく必死だったので、そこに何かのメッセージ性を持たせて、誰かに届けたいという思いはこれっぽっちもなかったんです。とりあえず形にするというところから入って、最終的に並べてみたら、自分の気持ちとか自分のことばかりを書いていた。誰かに伝えたいというのは一切ないまま、あのアルバムができたんです。で、みんなの手元に渡ったら、あのMVも含めて、人それぞれにいろんな感想があって。例えば"この曲に元気を貰った"とか"こういう気持ちになった"とか、そういう言葉をいただくことが多かったんです。それは予想だにしなかった出来事でした。

-そうやって反響があったことには、どういう思いになりました?

自分の曲は自分のために書いたものだったけれど、そういうことを言ってくれる人には少なからず影響を与えたりしたのかなって、感じられるようになりました。

-ライヴをやったことも大きな体験だったと思いますが、終わってみてどういう感触がありました?

ライヴはやって良かったと思いました。僕の活動スタイルはインターネットというところがメインにあって、家でちまちま作った音源を公開して聴いてもらうというのがベースなんですね。だから、ライヴはあまりやってこなかったんです。こないだ新木場STUDIO COAST("Eveワンマンツアー[メリエンダ]"追加公演)でやったときも感じましたけれど、"こんなに人がいたんだ"って。画面越しに数字は見えますけど、それだけだとやっぱり"果たしてこれは本当なのか"って思ってしまうんです。でも、ステージに立ったときに、こんなに集まってくれるんだ、こんなに反応してくれる人がいるんだって感じられた。それは大きな出来事でした。やる前はめちゃくちゃ不安だったりもするんですけど、やったあとは毎回"良かった"と思えるので、ライヴはこれからもやっていきたいなと考えています。

-『おとぎ』を聴いて印象的だったのは、例えば「僕らまだアンダーグラウンド」が象徴的ですけれど、歌詞の中で"君"とか"僕ら"という言葉が出てきていることなんです。これは『文化』というアルバムで自分のアイデンティティを描いたことによって、反響があったこと、生身の人間が自分の音楽を共有しているという体験を得たことが大きかったんじゃないかと。その先に生まれたモチーフがこのアルバムの大きなポイントになっているんじゃないかと思ったんですが。

たしかに、今回のアルバムは"君"とか"僕ら"という言葉が歌詞に散りばめられていて、それは聴く人が、それぞれ自分に落とし込んで聴いてくれている感覚があったからかもしれないです。それはすごく面白いと思いましたし。歌詞に書いてあることって、音楽じゃなかったら言わなくていいこと、言う必要のない気持ちだったりする思うんです。前回のアルバムもそういうことを書いている箇所があった。でも、聴いてくれている人が自分に置き換えたり、共感したりしてくれているのを感じて、"みんなもそう感じている"、"自分と音楽を共有できた"という実感がたびたびあったんです。それはすごく嬉しかったことでした。僕自身、誰かと何かを共有することが好きなので。

-そういう経験は『おとぎ』というアルバムを制作するにあたって影響を及ぼしましたか?

いや、実は『文化』を発売する前から、「トーキョーゲットー」や「アウトサイダー」のデモはあったんです。「ラストダンス」という曲を作り始めたのは2017年12月とか2018年1月くらいのタイミングで。そういうことを考えている余地もなかったころですね。このアルバムにはそのころの気持ちも入っているんです。僕の曲って、作るのに半年くらいかかるんですよ。なぜかというと、僕のMVはアニメーションなので、作るのに結構時間が必要で。だから、ようやく自分の子供たちが世に出てくれるという感じですね。

-なるほど。『文化』の延長線上で、次の扉を開けようという意識があった。

そうですね。『文化』と『おとぎ』は切っても切れないものだと思います。そういうこともあって、ジャケットをお願いしているMahさんには『文化』と同じような構図で描いてほしいって伝えたんです。ただ、「僕らまだアンダーグラウンド」とか「君に世界」という曲は、もっとあとにできたもので、それくらいになってくると、また気持ちの変化があった。曲の並び順はなるべく作った順番になるようにしているんですけれど、次に繋がる2曲になったんじゃないかと思います。