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INTERVIEW

Japanese

Eve

2020年02月号掲載

Eve

インタビュアー:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)

2020年、シンガー・ソングライター Eveに注目をしたい。ネット・カルチャー発で圧倒的な支持を得ている新しい才能だ。2月12日にリリースした最新作『Smile』には、JR SKISKI 2019-2020キャンペーン・テーマ「白銀」、ガーナチョコレート"ピンクバレンタイン"テーマ「心予報」など全13曲を収録。さらに、5月23日には初のアリーナ・ワンマン・ライヴを横浜ぴあアリーナMMにて開催する。新たな時代を作るEveに、最新作について話を訊いた。

-これまでのEveさんらしさと、さらに音像の進化を感じさせてくれる素晴らしいアルバムとなりましたね。1曲目はインストの「doublet」から始まります。

今回はインストが2曲あって、歌モノが11曲という13曲構成になっています。「doublet」には"よく似たものの一方"という意味があって。"不思議の国のアリス"のルイス・キャロルという作家が、僕はすごく好きなんですけど。彼が"ことばの梯子"という言葉遊びを発案していて。それを"doublets"と呼んでいました。そこからのイメージですね。これまでアルバム『文化』(2017年リリースの4thアルバム)も『おとぎ』(2019年2月リリースの5thアルバム)もそうなんですけど、僕は自分自身が生み出す作品に二面性があるなと感じていて。例えば、ミュージック・ビデオにしてもそうなんですけど、もうひとりの自分っていう表裏があって。そのもうひとりの自分をミュージック・ビデオでは"人外"という言葉(造語)で置き換えているんです。今回『Smile』はタイアップ曲も多いし、コンセプト縛りで作った作品ではないんですけど、ある程度曲が揃ってきて、それを俯瞰して並べたとき、楽曲たちに執着の想いを感じました。自分は自分のために曲を書いてるなと改めて感じて。そう思えてからはアルバムに落とし込んでいく流れがスムーズでした。

-執着は、表現者にとって大切なキーワードですよね。ちなみに「doublet」での、ギターのアンサンブルとストリングスで表された導入部。Eveさんは、どんな景色を思い描いていたのですか。

ひとつは心の叫びみたいなものをイメージしていて。最初はちょっとトリッキーなクセのあるギターから入って。そこから僕のコーラスのアレンジが入って叫びっぽくしたかったんです。心の内の叫びのような。そこから2曲目の「LEO」へと意識的に入りたくて。

-2曲目「LEO」は、アルバムのキーとなる秀逸な曲で。Eveとして、新境地へ辿り着いたと思いました。ドープなサウンド感、途中ヴォーカルにかかるエフェクティヴな叫びが狂おしくも切ない感じに表現されていて。それこそ"LEO"というタイトルも意味深でシンプルですよね。

"LEO"というタイトルにはゼロという意味を込めています。"レー・オー=00"という。去年の頭に「闇夜」(TVアニメ「どろろ」第2期エンディング・テーマ)を作り始めた頃にNumaさん(ギタリストであり編曲を担当)と『おとぎ』にはなかった新しい感じだねって話していて。「LEO」もそこからヒントを得て、アレンジの方向性を固めていきました。今回のアルバムで一番言いたかったことが言えている曲ですね。

-「闇夜」があったからこそ、生まれた曲なんだろうなと感じました。

気づいてほしい人間っていうのと、気づかなければいけない人間というふたつの要素、二面性がこの曲にはあると思っていて。世の中には気づかれずに忘れ去られていく人がたくさんいると思うんです。だけど、そういう人にも目を向けてほしい、気づいてほしい、あなたにもっていう......。

-世の中、不景気もあって文化や生活など生きるコミュニティの断絶が進んでいます。

息が詰まりそうな気持ちとか、吐き出したい怒りや悲しみ、苦しみ、できるなら今全部叫んでほしい。目を逸らしたい気持ちもわかるし、弱さを見せるのに勇気がいるのも知っている。痛々しい姿を見せると軽蔑する人だっているじゃないですか。だけどそうやって自分を騙して騙して生きてると果てには壊れてしまう。誰ひとりとして理解しあえないこの世界で共通して心に飼っているのは孤独であり、孤独があるからみんなは愛を求めるんだと思います。......愛想笑いでも苦笑いでも作り笑いでもない、心の底から君の笑顔、スマイルが見たいっていう。それだけは忘れたくない。だから人生に絶望を感じてしまわずに歩み寄ってほしいんです。そして今、偶然にも困った生活をしていない人、たまたまそちら側にいて何も知らないあなたにも、気づいてほしい、そんな曲。......うまく説明できているかな?

-なるほど、本作"Smile"というタイトルの意味が浮かび上がってきますね。そこから存在証明「レーゾンデートル」へとなだれ込んでいくことに意義を感じます。この曲は、自分を乗り越えていくことで存在価値と立ち向かう力強いナンバーだと思いました。ある種、これまでのEveさんのイメージを体現している曲。Eveさんらしさが集約したナンバーですよね。

まさしくそうで。この曲を作るときは自分の中で新しいことを意識的にしようという考えはいったん置いておいて、今の自分のストレートな表現を貫きたいなと。何も考えてないっていう言い方をするとちょっと語弊があるんですけど、本当にスラスラ書けたというか。すごい素直な曲ができたと思っています。

-歌詞のフレーズで"だけど 夢に目覚めた君は何をみるの"というフレーズが強力で。リスナー側に突き刺さっていく言葉ですよね。

この曲で言いたいことは、例えば"終わらない夢を持ち続けて頑張ればきっと成功するよ"とか、そういうことが言いたいんじゃなくて。結局、最終的には自分自身がどうするかであって。その先がどうなるかは、自分自身でしかないのだから、自分の目で確かめてほしい。確かめるには、その終わらない夢から覚めないといけない。これが、この曲で伝えたかったことです。やっぱりこれもdoublet、二面性になっているなって。"夢"と"現実"が作用している。それで言うと「LEO」は"愛"と"孤独"だと思っていて。自分の中に孤独を飼ってない人は、本当の愛に気づけないんじゃないかっていう。

-奥深い世界観が繰り広げられていきます。そんななか、8曲目はダンサブルな「心予報」ということで、ライヴで盛り上がるEveさんが見えるなぁと。バレンタイン時期のCMタイアップ曲でもあるという。

僕自身チョコレートがすごく大好きで。"ガーナ"や"コアラのマーチ"、"チョコパイ"など美味しいですよね。タイアップのお話をいただいて最初はびっくりしましたけど、新しいチャレンジだなとワクワクしながら作りました。まずイメージに赤と白とピンクという色を思い浮かべていて。そうしたら、今回ロッテのバレンタインのキャンペーン・テーマが"ピンクバレンタイン"だったんです。自分だったらどんな作品ができるかなって考えたときに、心情みたいなものを色で表そうと思って。それを天気予報のように"心予報"というタイトルで表現してみました。

-タイアップなど、ある種制約となる枠組みも楽しんでクリエイティヴに落とし込めるのは成長されたEveさんのすごさですね。お互い刺激を与えあって、結果シナジー効果が倍増する、みたいな。

そうですね。これは一緒にやらなかったら絶対に生まれてこなかった曲だと思います。自分にもこういう曲が書けるんだって、終わってみて思いました。アルバムの中に並ぶと見え方も違って、すごくアクセントになって。やって良かったと思います。音で言うと、今回は新しく音楽プロデューサーのTAKU INOUEさんが入ってくださって。TAKUさんはエレクトロなサウンドが得意な方なのでリアレンジしてもらいつつ。Numaさんのギターのサウンドも相まって、「闇夜」とは真逆の違った方向で新しいものができたなと思っています。

-四つ打ちダンサブルなポップ・チューンという、Eveさんらしさのフォーマットを感じさせつつも、再構築されているように感じたのは、そんな要素なんですね。

ジメジメした感じがいつもより全然ないなって。それはTAKUさんの力や、新しい要素が入って生まれた曲だからですね。こういう作り方は初めてだったので。新しい体験をさせてもらえました。すごい楽しかったです。