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INTERVIEW

Japanese

Eve

2020年02月号掲載

Eve

インタビュアー:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)

"この人生は歩く影法師のような物語 意味なんてない だけど"


-9曲目は、この冬CMでもかかりまくっている「白銀」ということで。すごいことですよね"JR SKISKI"のタイアップって、日本の冬を代表するような広告展開なので。しかもここで突き抜けたキラーチューンがきたな......と。展開構成もまったく無駄がなく絶妙ですよね。

JRさんからお話をいただいて、僕も数々のCMは知っていたので楽しみでした。で、楽しみすぎて打ち合わせ前までに曲を作ってしまって。なんとなく"これはバラードだ!"と、ミドル・テンポなイメージが湧いて。デモでワンコーラス作っていったんですよ。当日の打ち合わせでは、もちろんそれを言わずにお会いして。話を聞いていくにつれて、"疾走感のあるEve君らしい曲が欲しい"と言われまして、"なるほど!"と(苦笑)。もちろん、どちらかと言えば僕は疾走感ある楽曲が得意だったので、あまり迷うことなく完成しました。今年のキーワードとなるキャッチコピーが"この雪は消えない"という。イメージとして、そのワードをいただいて。僕も以前の話になりますが、スキー場に行ったことがあるんです。すごいまっさらな、海原のような雪を見て感動したことを覚えています。僕は雪が降ってるところに住んでなかったので、雪はどうしても神秘的で心が弾む感じなんですよ。だからこそ"白い海原"っていうイメージがひとつ生まれて、そこから広げていきました。「レーゾンデートル」と一緒で、素直に書けた覚えがあります。

-Eveさんらしい曲ですよね。そして、イントロのギターがこれまたかっこいい。

スキー場で流れることはイメージしながらNumaさんとアレンジを進めていきました。「白銀」という曲を作れて良かったですねぇ。

-2020年を代表する冬うた、ウィンター・ソングの完成ですね。

歌詞としては、雪の冬の恋愛観とかいうより、男女で刹那的な瞬間みたいなもの。何を具体的にエモいというのかはわからないですけど、そういうエモーショナルな部分、熱量を意識しながら作っていきました。

-そして、雰囲気ある世界観や歌詞で気になったのが11曲目「mellow」。サウンド感を表したシンプルなタイトルです。またなんでこのタイトルにしたのかなと。

この曲で一番言いたかったのは最後の2行なんです。これが言いたくて。それだけなんですよね。

-アルバムがその2行の言葉によって締まりますよね。

"この人生は歩く影法師のような物語/この人生は歩く影法師のような物語 意味なんてない/だけど"っていう。僕はシェイクスピアが好きで、彼の言葉からの引用だったりします。

-なるほど、人生もまた舞台であり、人間関係において家族や恋人、友人などいろいろな役を演じているということですね。ある種、Eveさん作品において大事なテーマのひとつでもありますよね。

シェイクスピアの言葉からこれまでも「ドラマツルギー」や「お気に召すまま」(『文化』収録曲)という楽曲が生まれていて。今回の「mellow」の"この人生は歩く影法師のような物語"っていう歌詞も本当にそうで。出番のときだけ、舞台の上でわめいたりはしゃぎまわったりしていても、舞台が終わったらそのあとは消えてなくなってしまう。人生というものは、すごく儚いものなんだって。本当にそうだなと思うと同時に、だけど、それってとても切ないじゃないですか......。そこへ向けた思いを最後に置きたくて「mellow」という曲を作りました。

-だからラストに"だけど"って入ってるんですね。執着だ。

そうですね。

-アルバムの流れでいくと12曲目が「ognanje」。ここでインスト曲が入ります。鈴虫みたいな音から始まり、夜の野原っぽくもあり、完全に主観ですがSFっぽさを感じたりして。

当初は「mellow」で終わる予定だったんですけど、何か引っ掛かるものが自分にあって。そのあとに「胡乱な食卓」っていう曲を入れたかったんです。結局のところ歌の入った11曲っていうのは、理想像や憧れなど、自分の都合のいい主観的な解釈で書いてるなって思っちゃったんですよ。もちろんそれだけじゃないんですけどね。前作『おとぎ』から繋がっていて、オープニングもまどろみから夜明けがあって目が覚めるという。

-ストーリーがあるのですね。

「mellow」の最後でスパっときれて12曲目にいくんです。ここで、我に返って現実に目を向けなければいけないんだなって13曲目に「胡乱な食卓」を置きました。12曲目「ognanje」は、"取り替え子"という意味で。昔、ヨーロッパのどこかで人間の子供がひそかに連れ去られたりしたときに、その子の代わりに置き去りにされる子っていう意味なんですけど。結局のところ「doublet」にも「LEO」にも同じことが言えるんですけど、自分はどちら側にいるのではなく、どちら側の立場にも立ってみなきゃいけないと思うし、立ってみたいと思うんですよ。

-なるほどねぇ。二面性という考え方、一貫しているね。

11曲目の「mellow」で終わればハッピーエンドじゃないですけど、自分の都合のいい解釈で終わってしまうんです。物事の善悪は主観でしかないので。そう自分の中で解釈して死んでいけるんだったら、それはそれで幸せなことかもしれないけど、果たして実際はどうなんだと考えたときに目が覚めたわけですよ。自分はそれでもやっぱり前を向けているのか、嘘をついていないのか、いい子を取り繕って本当のスマイルでない笑顔を振りまいていないか。自分の食べているものも味もわからず、ただただ腹を満たすだけの毎日があって、嘘のつき方も間違っていないか。そういった日常における本当に些細なところから、もう1回自分を振り返ったときに本当に自分は幸せなのかっていうことを問い掛けたくて。それで、最後に12曲目、13曲目という2曲を追加しました。

-図らずも、コンセプチュアルな要素を感じられるのは、こういった構成力、そしてEveさんの軸がブレずにいることの表れなのですね。ちなみに、5月23日には、1万人規模の横浜ぴあアリーナMMでの初のアリーナ・ワンマン・ライヴの開催が発表されました。アンダーグラウンドからメインストリームへ向けて、Eveさんの覚悟がさらに深まってきたのかなと。

すごい大きな会場で冒険的ではあるんですけど、そこでどんなライヴを見せられるのか自分自身ワクワクしています。やっぱり自分から生まれてきた子たち(楽曲)を良く見せたいじゃないですか。我が子を一番立派に、演出も含めてその子に一番相応しい形で届けたいと考えています。このライヴで、自分はどんな景色を見られるのか楽しみです。

-そういえば、13曲目ラストに「胡乱な食卓」という曲がありましたが、エドワード・ゴーリー("うろんな客"という作品がある)もお好きなんですか。"胡乱な"という言葉からふと繋がりました。最後におまけの話になっちゃいますが。

そうなんです。エドワード・ゴーリーが大好きで。冬のツアー"Eve winter tour 2019-2020[胡乱な食卓]"っていうのは、ゴーリーからのインスピレーションです。さっき話したルイス・キャロルやシェイクスピアもそうだし、惹かれる表現者の方はリスペクトしていますね。ゴーリーの絵本は、ほぼ全部持ってます。ルイス・キャロルもそうなんですけど、ナンセンスな感じがいいですよね。意味がないことをひたすら突き詰めたり、それを面白おかしくしたりとか。そこにあのイラストでちょっとした不気味さも相まって。でも、かわいらしさもあるというセンスに影響を受けています。