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INTERVIEW

Japanese

とけた電球

2018年12月号掲載

とけた電球

Member:岩瀬 賢明(Vo/Gt) 境 直哉(Key) 高城 有輝(Dr)

Interviewer:蜂須賀 ちなみ

-そのあたりについては後ほど詳しくうかがいますね。4曲目の「日々のかけら」はどういうイメージから生まれた曲なんですか?

岩瀬:歳を重ねるごとに友達が少なくなっていっているなぁって、最近ふと思って。僕も多少悩みがあったりするけど、そういう悩みを話せるような友達もいつの間にかいなくなっていると感じて、悲しくなってしまったんですね。今の日々も嫌だし、自分に悩みを話せる友達がいないっていう状況も嫌だけど、僕自身は、僕の友達にとってのそういう人になれたらいいなと。そういう気持ちを込めて作りました。

-岩瀬さんの書く歌詞には、"留まる"と"進む"や"忘れてしまう"と"覚えている"という対比がよく登場しますね。それらの表現は、自分の中のどういう感情から出てくるものだと思っていますか?

岩瀬:僕、なんでもやることが結構遅くて後回しにしちゃうんですよ。本当はそういうところをちゃんと変えたいし、朝も早く起きたいって思ってるんですけど、結局次の日には忘れてるんですよね。それでまた同じような問題が起こったときに"あー、またダメだった......"って落ち込むようなことがすっごく多くて。だから、変わりたいけど変われないとか、忘れたいけど忘れられないとか、そういう真逆のものがずっと心の中にあるんですね。

-そういう感覚って小さいころからあったものなんですか?

岩瀬:いや、小さいころは結構活発......だったよね?

高城:そうですね、鬼ごっこで骨折するぐらいには。

-だいぶヤンチャですね(笑)。

岩瀬:結構外でも遊んでいたし、友達も多かったし、バンド始めたてのころはもうちょっと明るい子だったんですけど、19~20歳ぐらいから"別に外に行かなくてもいいかな"みたいなメンタルになってきて。僕、留年して高校に4年間通ってたんですよ。そこでもともと友達だった人と会う機会が少なくなって、最終的に人に会わない生活に慣れていったというか。その結果が今ですね。

-そういうふうに性格が変わっていくと曲の作風も変わってきそうですよね。学生時代からの付き合いだという境さんや高城さんから見て、そのあたりはいかがでしたか?

境:変わってると思います。僕の勝手な分析ですけど、『最初の恋のように』は岩瀬が10代のときに書いていた曲が多いから"好きだ!"みたいな曲が多かったし、留年しちゃったときも"なにくそ!"というか、そういうのが出たストレートな曲が多かったんですよ。そのあとの『魔法が使えないから』(2017年リリースの2ndアルバム)では恋愛の曲が多かったんですけど、今回はそこからの過渡期というか。たぶん、人間的にも一番曖昧な時期なんですよね。大人にはなりきれてないけれど、もうそろそろ子供じゃない、みたいな。

高城:たしかに、言われてみればそれはすごく腑に落ちる。葛藤みたいなね。

境:そう。それで思い悩むようなフレーズが自然と多くなっていったのかなって、個人的にはそう分析してますね。それがこの"STAY REMEMBER"というタイトルにも繋がったんだろうなって僕は思ってるよ。

岩瀬:そうなのか。僕は自分で自分の曲を評価できないからなぁ......。

-ひとりの人間の変化がこうして曲に表れるのって、めちゃくちゃ面白いですよね。

境:めちゃくちゃ面白いですね。特に僕らは岩瀬の人間性というか、大人になってきた過程を知っているので。だから他の人よりも岩瀬の曲を楽しめているのかもしれない(笑)。

岩瀬:僕は実体験から曲を書くことが多いので、長いこと一緒にいる人からすると"あぁ、あのときのことね"みたいになるかもしれないです(笑)。

-岩瀬さんはラヴ・ソングをよく書きますけど、その中で自分の情けなさを歌ってしまうじゃないですか。あれはどうしてなんだろう? と私は不思議に思ってて。例えば「覚えてないや」には"幸せにできる気もしないし"というフレーズがありますけど、好きな相手にこの歌を捧げたいのだとしたら"お前のことは俺が幸せにしてやるよ"ぐらい言った方がいいんじゃないですか?

岩瀬:............すみませんでした。

高城&境:ははははは!

-いや、怒ってるわけではないんですけど(笑)。

岩瀬:でもたしかに、なんでこんなこと言っちゃうんだろうね? いっつもひと言余計なんだよなぁ......。

境:そこも含めて受け入れてほしいの?

岩瀬:いや、そうじゃないんだけど......ステージに上がってるときは最強な気持ちでいられるんですけど、プライベートではもう、自分に自信がないんですよね。だから女の子と付き合ったとしても、いつも終わるときのことばっかり考えちゃうし、"これからずっと楽しい日々が続くね"みたいなことは考えられないというか。

-ミスコンの女子大生になりたいのだとしたら、そういう面は表に出さず、明るくてキラキラした曲を書けばいいんじゃないですか?

岩瀬:なんか、来世に期待してるんですよね。

境:現世はもういいってこと?

岩瀬:現世というか、今の自分のことが別に嫌いじゃないので。僕は自分の曲が好きだし、僕が今こんな感じだからこういう曲も書けてるし、ここから何か劇的に変わりたいみたいな気持ちはなくて。きっと羨ましがってたいんですよ、女子大生に対しては。"いいな、いいな~"、"まぁ俺はなれないけど"みたいなマインド、"こいつらをいつか見返したい"みたいな嫉妬心が僕を強くするんですよね。たぶん、僕は卑屈なんです。

-卑屈な性格でなければ、バンドをやっていなかったと思いますか?

岩瀬:絶対やってないです。自分が今うまくやれること、人から評価されることって音楽ぐらいしかないなって思うんですよ。もし僕が活発な性格のまま歳をとっていたら、音楽は、僕の未来の選択肢のひとつにすぎなかった気がするので。

-モチベーションはやっぱり"評価されたい"なんですね。おそらく、例えば整った容姿や外交的な性格のような、人から愛される要素が先天的に備わっていたとしたら、別にわざわざバンドをやる必要がないということだと思うんですよ。それって逆に言うと、岩瀬さんは、愛されるためにバンドをやってるっていうことなんじゃないかなと思いました。

岩瀬:そうですね。そうだと思います。僕らしさが一番出ているのが音楽だと思ってるので、そこが人に評価されて愛されるんだったら嬉しいし、バンドとしても愛されたいと思ってます。