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INTERVIEW

Japanese

ハンブレッダーズ

2018年11月号掲載

ハンブレッダーズ

Member:ムツムロ アキラ(Vo/Gt)

Interviewer:吉羽 さおり

-思えば、前作からは約1年くらいですよね。その間での心境の変化があったということなんですかね。

1stアルバムをリリースする少し前から、全国のいろんなところでツアーをやっていて。初めて行く土地も多かったんです。そのときに、ちゃんと待ってくれている人がいるということにすごく感動したんですよね。そうなってしまうと、その人たちが日々どういう葛藤を抱えて生活しているのかとかも気になってきちゃうし。となると、世の中のことにもすごく関心が出てくるんですよね。どうすればその人たちが幸せになれるのかとかも考えてしまうし。世の中への自分の関わり方というのも考えてしまうし、待ってくれている人への関わり方も考えるし──じゃあ自分は今、何を歌おうかというのもすごく考える1年ではありました。

-その変化を実際に形にしてバンドとしてプレイすることへの、自分自身での葛藤というのはなかったですか。

あったと言えばありました。昔の話ばかりになってしまうんですけど、1stアルバムはたくさんの人に自分たちハンブレッダーズを見てほしい、聴いてほしい、それで共感してほしいという意識がすごくあったんです。でも今回は、共感じゃなくて、そのアルバムを聴いて思考してほしいと思ったので。俺たちが正しいことを言ってるのか、間違ったことを言っているのかも、ちゃんと噛み締めて考えてほしいし、はてなマークを出すなら出してほしいしという、そういう音楽をちゃんとやりたいなと思ったのはありました。

-先ほどバンド、4人で音楽を作るようになったという話がありましたが、こういう強い問い掛けっていうのは、そういうふうにバンドとしてひとつにまとまった強固さがないとできないことですね。

そうですね。これまで自分が言ってきたことと全然違う言葉を並べたので。それでもハンブレッダーズというサウンドになるんだっていう、自信ができたかもしれないです。

-ちなみに、そのサウンドで言うと今回は特にギター・ソロが満載でいいなと思いましたけどね(笑)。ちょいちょいギター・ヒーロー感を出してくるっていうか。

そうなんですよ(笑)。どちらかというとダーク・ヒーローなんですけどね。ヴィラン側なんですけど。今回、音がいいんです。スタジオもすごくこだわったというか、ちゃんといい音で録りたいねというのが真っ先にあったので。

-他の収録曲についても聴いていきたいんですが、3曲目の「嫌」などは、明るい曲調と、相反するシニカルな内容の温度差が面白い曲です。

曲が明るいとどうしても暗い言葉を乗せたくなっちゃうんですよね。「嫌」という曲は正直、中身自体がなくて。ギターが遊んで面白いことをしているので、じゃあ面白い言葉を乗っけてみようっていう。遊び心だけで書きましたね。

-「エンドレスヘイト」もかなり遊びを感じました。

これは個人的なシュプレヒコールというか。これはアルバムの中でも一番個人的な話をしている曲だと思います。

-イントロ部分でこれまでのハンブレッダーズ・サウンドではなかった90年代オルタナの響きがあって。且つ、歌詞に"Hello hello how low?"とNIRVANAの「Smells Like Teen Spirit」の一節が入っているという、わかる人はわかる仕掛けもありますね。

イントロはあとづけだったんですけど、もともとNIRVANAのオマージュがあって、じゃあNIRVANAっぽいイントロにしちゃえばいいじゃんって、安直に作りました(笑)。レコーディングのときもエンジニアさんに"NIRVANAっぽいエフェクターがあればいいんですけど"って聞いたりして。

-「CRYING BABY」は、そういう遊びとはまた違ってますよね。

これは先ほど言った、全国各地で待ってくれている人がいて、そういう人たちに向けて作った曲なんですけど。一見ラヴ・ソングじみていても、全然ラヴ・ソングではなくて。ハンブレッダーズを必要としてくれる人というのがひと言でどういう人かはわからないんですけど、そういう人たちの生活を思い浮かべて、どういうときに楽しくなって、どういうときに暗くなって、というのを極力想像して。その人たちの生活に寄り添う曲をというか、くじけたときに聴いてもらえる曲になればいいなと思って、作詞しました。

-ツアーの賜物ですね。

本当にそうですね。メンバーもその曲が一番好きって言ってくれていて。そのへんは、僕だけの思想じゃなくて、みんなの総意で書けた歌詞かなと思います。

-そういう素直な曲もこのアルバムならではかもしれない。

昔だったら絶対に書かなかったと思うし、前のアルバムに入っていたとしても、全然説得力がないと思いますしね。でも、そういうのが本当に夢みたいだなと思うんです。メンバーとは10年一緒にいるので、ひどいときもずっと見てきているんですよ(笑)。学校での立ち位置も、ひどい面もいっぱい見てきて、放課後も一緒に過ごしたり。そういうメンバーとライヴで各地に行くと、待ってくれている人がいるっていうのは、本当に素敵なことだなって思うんですよね。もちろんライヴには来ていなくても、部屋の中でCDで聴いてくれていたりする人もいると思うんです。そんなことが起こるっていうのは、本当に夢みたいなことだなって思って、アルバムのタイトルも、"イマジナリー・ノンフィクション"という、幻想的な非現実、という対義語なんですけど。現実の方が、本当に夢みたいなんだよっていうことをちゃんと伝えたくて、つけたんです。

-前回は1stアルバムということでリリース後の期待感はあったと思うんですが、今回の方がリリースされてからのリアクションにドキドキするというか、そういう思いがありそうですね。

あるでしょうね。批判されたりするとか、"何言ってるんだ"という意見もあると思うんです。"弱者"という言葉を使っているし。でも批判はそんなに怖くなくて。SNSでも、何言ってるんだって思ったりはしますけど、リアクションが怖いとかは個人的にはないんです。メンバーは心が弱いところがあるかもしれないですけどね(笑)。アルバムを聴いて、何か考えてもらえるんだったら、それが一番いいだろうなと思ってます。