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INTERVIEW

Japanese

ハンブレッダーズ

2018年11月号掲載

ハンブレッダーズ

Member:ムツムロ アキラ(Vo/Gt)

Interviewer:吉羽 さおり

"ネバーエンディング思春期"というキャッチで、今年1月に1stアルバム『純異性交遊』をリリースした4ピース、ハンブレッダーズ。そこから初のワンマンや自主企画イベントを開催し、イベントに出演すれば入場規制がかかるなど動員を伸ばしてきた彼らが、早くも2ndアルバム『イマジナリー・ノンフィクション』をリリースする。ムズムズするような思春期のくすぶりや葛藤、妄想の限りを尽くした前作での青さとはまた違った、彼ら自身のステートメントを放つ曲「弱者の為の騒音を」や、より皮肉やユーモアが効いた曲、あるいは包容力を感じる曲など、より眼差しの深い曲が揃った。うまく言葉にできなかったような感覚的なものを鋭く放つ、その鮮烈さはそのままに新しい面を見せてくれるアルバムだ。

-1stアルバム(2018年1月リリースの『純異性交遊』)以降は、ムツムロさんは作家として夢みるアドレセンスへの楽曲提供(「メロンソーダ」)などもされていましたが、そういうことはバンドやソングライティングに何か還元されている感じはあるんですか。

メンバーには"お前ばっかりいい思いしやがって"と言われますけど(笑)、自分のバンド活動に還元できたらいいなとは思ってやっているので、そのへんはうまくやれているかなと思います。

-バンド以外の曲を書くことで、改めてハンブレッダーズらしさやハンブレッダーズの面白さを客観視することもできるんですか。

そうですね。やっぱりバンドの言葉を書くと、4人の総意を書かなきゃいけないのかなっていうか。こうして言葉にすると堅苦しいですけど、特にリード曲では、自分だけではなくてバンドの意志を書きたいなというのもあるので。それが楽曲提供だと、好き勝手やらせていただくという、タガが外れた面白さっていうのがあり......。

-楽曲提供の方でタガが外れるんですね。

どちらかというと、そんな感じなんです(笑)。

-バンドの総意ということで、4人での意志を確認し合うまではいかなくとも、曲への思いについて言葉を交わすことは多いんですか。

僕が持っていったものに関して、"これどういうこと?"って聞いてくることは結構ありますね。今回のアルバムでは、それがより多くて。今までは僕の独壇場でやらせてもらっていたんですけど、"これはあまりハマり方が良くないんじゃない?"みたいなことを、メンバーも言うようになってきて。そこはちゃんと意志を汲み取って、"そうかもな"と書き換えたこともありました。

-それは、歌のノリやメロディと言葉のハマりみたいなところですか。

例えば、ドラムの木島は曲のメカニズム的なところというか、"この音は、サビの頭なのに強い音じゃない、聞こえやすい音じゃないね"とか言ってくれるんです。自分でもそういうところを考えて作ってたりはするんですけど、ドラマーの観点から"ここの音は一番うるさいところと当たるから"って言ってくれたりしますね。歌の意味に関しては、ギターの吉野(吉野エクスプロージョン)が言ってくれることがあります。口を出すということじゃなくて、"これどういう意味なの?"って聞いてくれて、"じゃあ、そういう意味を込めてギターを乗せるわ"っていう話はしていますね。

-そういうことが今回は強くなっているんですね。

強くなってますね、どんどん。4人の思想というよりは、4人で作ったと言う方が合っているかもしれないです。

-前回のアルバムは好評だったと思うし、いろんな反響もあったと思うんです。ライヴに来てくれる人やリスナーが増えてるなという感触もあったと思うんですが、聴いてくれる人がより増えている状況が、バンドのモチベーション、作曲へのモチベーションにも繋がっているんですか。

モチベーションもそうだし、ちゃんと意味のあることを歌わないと、という意識にも繋がっています。意味のある音楽をやらないとっていう。

-そうなんですね。ハンブレッダーズの曲でいいなと思うのは、10代のときに音楽を聴いた鮮烈な感触を、ちゃんと思い出させてくれる感じがあるんですよね。"こういう感覚あったな"とか、"こうやって音楽を聴いて泣いたり笑ったりしたな"とか、そういう自分の音楽体験を、曲を聴くことで思い出せるんです。シンプルな言葉で書いているけれど、それが鮮やかに刺さるなと。

ありがとうございます。

-今回の「弱者の為の騒音を」を聴いてもそうだし、「口笛を吹くように」もそうだし、すごくハッとさせられるものがありました。先ほど、リード曲にはより意味のあるものを、という話が出ましたが、「弱者の為の騒音を」は、メッセージにしたいことがより強くなった感じもありますね。

歌詞からいろんなことを考えてくれたらなっていうのが一番にありますね。噛み砕いて言うと、子供すぎる人と大人すぎる人っていうのが個人的に苦手なんです。自分の好きな人や尊敬している人っていうのは、子供の一面も持っていて大人の一面も持っている人が多くて。そういうところに、自分もちゃんとあれたらなという意識がありました。

-なぜそういう思いを曲にしたいと?

バンド結成9年目とかなんですけど、前のアルバムは、9年間自分たちが培ってきた経験を書いていたりしたけど、今回のアルバムは、経験だけじゃなくて、自分たちが持つ思想をもっと出していって、世の中の人にどう受け止められるんだろうか、というところを見たかった、というのがあって。今までのような、共感してもらえる音楽じゃなくて、考えてもらう音楽を作りたかったんです。聴いて噛み砕いてみて、"これはハンブレッダーズが間違ってるよ"とか、"これはハンブレッダーズの言うとおりだと思う"っていうところまで、ちゃんと考えてほしいなっていう意識はありました。

-"弱者"っていうと強い言葉ですが、これはどういうところから出てきたんですか。

これも、いろんな意味があるんですけど。相対的な、"強者"の反対語の弱者というのがあり。あとは考え方が凝り固まっている人っていうのが一番の弱者なんじゃないかなって思うことが、すごく多かったんです。例えば、"〇〇は××だ"って定義することって、その枠に考え方をはめ込むことじゃないですか。それっていうのは、便利な反面すごく想像力を欠如させてしまっていることだと思っていて。普段、身近に溢れるコンテンツからも、そういう言葉の不便さを感じるようになっていて。頭を使わなくなっていく若者とか大人とかを見て、そういう人って本当は弱いんじゃないかなって思ったんです。何か物事に相対したとき、その人の気持ちになって考えられる人の方が、人間として絶対に強いんじゃないかなと思って。そういう意味で"弱者の為の騒音を"というタイトルにしました。

-いろんな人が発信する術を持っている世の中は、すごく自由に思えるけど、すごく窮屈でもありますよね。

本当にそう思いますね。

-あるようなないような規制も実はいっぱいあって、表現し切れないものもあるし。極端になりがちだと思うんです。でも音楽っていうのは、そこを壊せる表現ができると思うし、この曲ではそういう投げ掛けがありますね。

嬉しいですね。不思議なもので、言葉を書いていると言葉にできない思いを意識したりすることが多いんです。例えば、"愛"という言葉があって。"愛"という言葉を付けてしまうがゆえに、自分の気持ちというものが"愛"というものに定義されてしまったりするんです。でも、愛情に近いけどちょっと違う感情っていうものも、"愛"っていうものにしてしまうというのは、よろしくないかもしれないということを考えて。でも、自分もそうしてしまうこともあるし......。そういう人のためのロックンロールであればいいのかなって思っていたりもしますね。

-そういうことで、ひとつの言葉を選ぶにも繊細になりますね。

慎重になります。逆にリード曲以外に関しては、まったく頭を使わずに書いたりもしているんですけど(笑)。