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LIVE REPORT

Japanese

ハンブレッダーズ

Skream! マガジン 2019年05月号掲載

2019.03.23 @渋谷CLUB QUATTRO

Writer 吉羽 さおり

"お待たせ!"、"みんなが家でいつも聴いている音楽をいっぱい歌うので聴いてくれ"。ムツムロアキラ(Vo/Gt)のこの言葉で、ハンブレッダーズにとって初のワンマン・ツアー["Cagayake!BOYZ"ワンマンツアー]がスタートした。東京公演はその初日。そのうえ都内でのワンマン・ライヴは初であり、ムツムロの喉の不調により年末年始のライヴがキャンセルとなった経緯もあって、冒頭の"お待たせ!"に観客は爆発的なエネルギーで応え、1曲目の「口笛を吹くように」からバンドの鳴らす爆音とともにシンガロングする。"終わらない青春を鳴らしに来ました、ハンブレッダーズです"(ムツムロ)と言って「スクールマジシャンガール」、「フェイクファー」を連投。バンド・アンサンブルは馬力も音量も最高潮を更新しながら、気持ちが昂って思わず走り出してしまうような青春期の暴発感や、先走る妄想と臆病な一手でアワアワするだけの青い春の叫びを音に映していく。フロアをみっしりと埋め尽くす少年少女たちが、その音と歌に拳を突き上げて応えている光景は、とてつもなく美しくて熱い。ハンブレッダーズが「DAY DREAM BEAT」でヘッドフォンから流れるロック・ミュージックに心撃ち抜かれ"自分の歌だとハッキリわかったんだ"と歌ったように、ここに集まった人もまた彼らの歌に撃ち抜かれ、秘めた思いを共有する親密さがある。

疾走感溢れるロックだけでなく、ギター・サウンドの醍醐味を味わわせるのもまたハンブレッダーズの魅力だ。「常識の範疇」での吉野エクスプロージョン(Gt/Cho)とムツムロの息ぴったりにハモるギター。木島(Dr)とでらし(Ba/Cho)によるファンキーなビートやスラップ・ベース。「嫌」での跳ねたビートとスムースなギターとの渋みすら醸し出す絡み。特に名実共に表情豊かな吉野のギター・プレイは思わず見入ってしまうし、60年代、70年代ロックのねちっこさや土臭さを感じさせる。爽やかで甘酸っぱさもある曲にも、泣きのチョーキングをぶち込んでくる感じも面白い。そして中盤は特に女性の歓声が大きく響いた、恋心を綴る「ユーモアセンス」、「エンドレスヘイト」と続いて、"久しぶりの曲をやります"(ムツムロ)と「席替え」を披露。「付き合ってないけどお互いに」も加わって、恋を知ることで気づく心の機微を切なく音にした。

2018年1月に1stアルバム『純異性交遊』、同年11月に2ndアルバム『イマジナリー・ノンフィクション』をリリースし、東京でようやく実現したワンマン。ライヴ中何度も"楽しいなぁ"、"嬉しいなぁ"と心の声が漏れていた4人だが、"ずっと楽屋でワクワクしてたよね?"(吉野)、"めちゃめちゃ緊張してて──"(ムツムロ)、"歌詞、飛びがちだもんね(笑)"(吉野)とムツムロが突っ込まれるシーンもあって、照れを隠すように「チェリーボーイ・シンドローム」をパンキッシュに叩きつけ、大合唱を起こす。「ミッドナイトフリクションベイビー」で、吉野の真骨頂たる全身で表現するようなギター・ソロで沸かせるとライヴは終盤へ。「CRYING BABY」に始まり、「DAY DREAM BEAT」ではイントロのギター・リフに歓喜の声が上がり、大合唱が巻き起こっていく。どんな時代の音楽にも、"大人になって聴いてももちろん最高だけれど、この曲に10代で出会っていたらどんなに良かっただろう"というものがあるけれど、ハンブレッダーズの曲はまさにそういう曲の揃い踏みだ。"ロックンロールという音楽がすべての弱者のためにずっとありますように"(ムツムロ)、そう言ってラストは「弱者の為の騒音を」を大きく打ち鳴らし、"こどものままで おとなになろう"と会場一体で歌い上げた。

アンコールではでらしが、初のワンマン・ツアーがスタートし、東名阪の会場がソールド・アウトしたことを告げ、また8月には対バンによる東名阪のクアトロ・ツアーを行うことも発表。そして新曲「ファーストラブレター」をいち早く披露し、「RADIO GIRL」、「逃飛行」をプレイして、熱狂の初の東京ワンマンを終えた。今年さらに輝いて世に出ていくだろうハンブレッダーズの記念碑的なライヴだった。

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