Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Japanese

Bird Bear Hare and Fish

2018年09月号掲載

Bird Bear Hare and Fish

Member:尾崎 雄貴(Vo/Gt) DAIKI(Gt) 佐孝 仁司(Ba) 尾崎 和樹(Dr)

Interviewer:金子 厚武

-僕が今回のアルバムで特に印象的だったのは音像/音色の面で、Kanye WestやBeyonceの作品に関わっているエンジニアのAndrew Dawsonをミックスで起用していることが、本作の一側面を象徴しているように思います。この起用とその狙いについて話してもらえますか?

雄貴:ラップとかリリックというよりは、ヒップホップのサウンド感に魅力を感じたんです。例えば、Kanye WestのTR-808のリズムマシンしか使ってないアルバム(『808s & Heartbreak』)とかが好きで、実際TR-808のサウンドをサンプリングして、取り入れてみたり。TR-808にしか出せないムードがあって、それが今の自分たちの音楽をより面白いものにしてくれたので、エンジニアもその方向の人がいいと思って。

-サンプリングは本作のサウンドメイキングのひとつの軸になっていますね。

雄貴:サンプリング自体には前から興味があって、BOMBAY BICYCLE CLUBがピアノのサンプリングとかを大々的に取り入れたときに、インディーでウェットなサウンドにサンプリングが入るっていうのが、俺らには新しく聴こえたんです。そのころからサンプリングはやりたいと思ってたんだけど、それに耐えうる曲がなかったし、許諾も大変だから、なかなかできなくて。でも今回は、自分たちの昔の音源とか、今までのレコーディングで録り溜めたものをチョップしたりしてサンプリングしてるんです。そういうのを仁司がアイディアとして入れてくれて、そこからインスピレーションが湧いて、「ウクライナ」とかもギターのサンプリングがすごい入ってるんですよ。後ろでレイヤーっぽくなってるのがそうだったり。なのでサンプリングに関しては、"ヒップホップから"というよりは、もうちょっといろんなところからインスピレーションを受けた感じですね。

-でも、それを生かすための人材として、Andrewは適役だったと。

雄貴:今までは自分たちの好きな作品のクレジットを見て、その人にお願いすることが多かったんですけど、今回は繋がりがある人がいいなっていうのもあったんですよね。何をどういう意図でトラッキングしたのかを実際に見てないと、大事なフレーズがなくなっちゃったりすることもあって。なので、僕らと2週間泊まり込みでレコーディングをしてくれたChris(POP ETCのChristopher Chu/Vo)が、目の前で見てきたことを直接伝えてくれることが重要で、それで今回はふたりのエンジニアをChrisに紹介してもらったんです。

-アルバムには幅広い曲が収録されていますが、ざっくり大きく分けると、Andrewがミックスを手掛けた打ち込み寄りの曲と、Brian Phillipsがミックスを手掛けたロック寄りの曲に分けられるかなと思います。それは制作およびレコーディングを行った芸森スタジオとわんわんスタジオ(※プライベート・スタジオ)の環境の違いの表れでもあるのかなって。

雄貴:そうですね。今回は録る場所をすごく選びながら作りました。芸森スタジオって、宿泊施設もついてるんですけど、会議室みたいなところもあるんですよ。普段はヨガ教室とかをやってるような(笑)。そういう場所でクラップとかスナップを録ってて、そこのムードが大事だったんですよね。100トラック入ってたとして、そのトラック1個1個の色や匂いを大切にしました。前は"いい音"を録ることだけに集中してて、面白いルーム感とか、そこまでまだ頭が回らなかったんだけど、今はそれぞれがいい演奏をできるようになったから、もっとマイキングとかに気を使えるようになって。なおかつ、それを偉いエンジニアの指示でやるんじゃなく、僕ら自身のアイディアでいろんなことができたので、最終的なミックスを聴いても、それが生きてるというか、匂い立つ感じになったなと思います。

-では、具体的な曲についても聞きたいので、それぞれが気に入ってる曲、試行錯誤した曲などを挙げてもらえますか?

佐孝:「夏の光」に関しては、さっき雄貴も言ってたように、"この曲があって、みんなでそこに向かう"というよりは、各々が自分でいいと思うコードやフレーズを入れていくっていう作業をして、方向性が二転三転した曲で。最初はシンセ主体で、TR-808のビートが少しあるくらいの曲だったんですけど、みんながフレーズを入れていくなかで、展開が徐々に開けていって、最後は生ピアノと生ドラムが入りました。最初のデモからは想像もつかないくらい変わったので、BBHFの制作をよく表している曲だと思います。

和樹:逆に「Work」に関しては、今はわりと音数が少ない、すっきりした作りになってるんですけど、もともと結構な量の音が入ってたんです。でも兄(雄貴)が"なんか違う"って、突如30トラックくらい消し始めて、それを見ながら俺は恐怖に駆られてました(笑)。消したらもとに戻せない状態だったから、"大丈夫なのかな?"って。でも、音を一気に抜いたことによって、奇跡的なバランス感が生まれたんですよね。自分は保守的なので、消すのが怖いタイプなんですけど、時には勇気ある抜きも必要なんだなって。

雄貴:今の制作形態になってからは結構ありがちなんですけど、みんな音を重ねていくから、限りなく積み上がっていって、巨大なサンドウィッチみたいになっちゃうんですよ(笑)。でも、それだと食べれないから、怒られる覚悟でこっそりトラックを消して。別に"プロデュースする"みたいな気分でもなく、風通しを良くするためにやってたので、アレンジとしてやっていたというか。みんながアイディアを入れてくるのと一緒で、僕もアイディアとして抜いてたんです。なんで戻せない状態で消してたのかはわかんないですけど(笑)。

-DAIKIさんは1曲挙げるとしたらどれになりますか?

DAIKI:「次の火」のギターのリード・フレーズはすごく時間がかかりました。やってることは単純なんですけど、シンプルなことほど難しいっていうのを痛感したというか、"これできてるのかな?"っていうのがずっとつきまとってて。なので、ギターやアンプをいろいろ変えて、かなり試行錯誤をした曲ですね。

-雄貴さんはどうでしょう?

雄貴:「Hearts」かな。今までは音楽がインスピレーション源になることが多かったんですけど、この曲はアレンジの段階からディズニーの"リトル・マーメイド"のイメージがあったんです。海の底で貝殻のドラムを叩いてるような感じとか。Paul Simonの「Graceland」とかも、アフリカの音楽ではあるけど、僕は海の感じもするんですよね。なので和樹に"カニさんみたいに叩け"って言って。そうしたら、不思議とその感じが出たんです(笑)。このアルバムは、ところどころディズニーの映画からインスピレーションを受けた部分がありますね。僕が大好きなPhil Collinsも"ターザン"の曲をやってたり、ディズニーはいろんなインスピレーションに溢れてるなって思います。