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INTERVIEW

Japanese

少年がミルク

2018年03月号掲載

少年がミルク

Interviewer:吉羽 さおり

これまでリリースした3作のミニ・アルバムで、オルタナティヴなサウンドにポップで痛烈なパンク精神を乗っけて、音楽シーンにパンチを繰り出し、爪を立ててきたシンガー・ソングライター、少年がミルク。ついに完成した初のフル・アルバム『トーキョー・ネコダマシー』は、一聴するととても良質なポップ・アルバムに仕上がっている。しかし、その口当たりの良さ、心地よさに、ハッとさせるような刺激物や、毒、えぐみが織り込まれた、心かき立てるポップスだ。2016年の1stミニ・アルバム『KYOKUTO参番地セピア座』でのデビューから1年半、少年がミルクは今、どんな世界を見ているのか話を訊いた。

-アルバム制作は、いつごろからスタートしていたんですか。

最初は、もうちょっと早くリリースする予定だったんです。昨年末のリリース予定で──でも、私はそういう予定を聞いちゃうと機嫌が悪くなるので、濁されているっぽいんですよね(笑)。で、その年末ごろには、まだ1曲しかできていなくて、それが1曲目の「トーキョー・ブルーガール」だったんですけど。それで、ちょっとずつ予定から遅れていって。

-最初の1曲が「トーキョー・ブルーガール」だったというのは、驚きですね。これまでとは全然タイプが違う曲じゃないですか。爽やかなシティ・ポップというか──

そうですよね。

-かといって、内容的には爽やかに収まっていないんですけど(笑)。このサウンドの感じは、特に打ち合わせをするでもなく作曲の水谷(和樹)さんがポンと出してきたものだったんですか。

そうですね。個人的には嬉しかったんですけど、3枚ミニ・アルバムを出して、ライヴを固めていって、そのライヴを観ていろいろと彼も考えたのかな。これまでは――例えば前作『空砲一揆アノニマス』(2017年5月リリースの3rdミニ・アルバム)では「I love you」とか、ロック色強めなものを推していて。これ、言っちゃっていいのかわからないですけど、私はそんなにロック、ロックしたくなくて。"うるさいのはもういいです"って、水谷さんに言っていたんです。もうそういう曲もあるし、って。もともと私がポップスが好きだというのを、彼が知っていて作ってくれた曲だったのかな。でも、できあがったときに、(所属事務所であるコドモメンタルINC.の)社長も"これをすぐにアルバムの縦軸となる曲にしよう"って言ってくれたんです。

-そうだったんですね。でもそこで、詞の内容もポップにしよう、とはならなかった。

そこは普通には歌えなかったので。半年とか1年経っても、自分がつまらなくならない歌にしなきゃなっていう思いはあって。ある種、音楽が消費していくものになっているからこそ、歌詞が書きやすくなったじゃないけど。書ける幅がどんどん許されているなと思っていて。

-ポップだからこそ立てられる爪っていうのがあるな、とは聴いていても思いました。

そこに少年がミルクがいくべきなのかな、とはなんとなく勝手に思って。これまでの作品も引き継いで、もっともっと自由に書けば、音楽性は幅広いものでもいいのかなと思いました。ただ、水谷さんから上がってきた曲に対して歌詞を書くという作り方自体は、変わっていないんです。でも今までよりも、アレンジ面でちょっと口を出した曲もありましたね。3枚のミニ・アルバムでとにかくいろいろやってみて、このアルバムでスタートしようという意識は最初からあったので、意見も言っていいのかな、みたいな。もっとストリングスを入れて、テンポを上げてくださいとか、アレンジへの口は出しましたね。

-これだけポップなサウンドでいて、"暴力みたいだった"というフレーズから始まる歌は、なかなかないだろうなと。それはすごく面白かったですね(笑)。

自分がそういう曲が聴きたいんでしょうね(笑)。街で流れている音楽や、溢れている心地よい音楽のなかでも、"こういう歌詞だったらきっと面白いのに"って感じるので。それをやりたかったんですかね。

-掴まれました。爽やかシティ・ポップ・サウンドで、東京のポップな描写もありつつ、ここに出てくる子たちは、街から弾き飛ばされちゃうんだなっていう。

そうそう、それ面白いですよね。結局、シティ・ポップ枠には入れてもらえないんですよ、これを出したところで。今回のアルバムは、ちょいちょい"東京"が出てくるんですけど、そういうイメージは常にありましたね。弾き飛ばされて、居場所はないけれども、ひとりで踊っているみたいな。

-例えひとりでいても、それでも楽しみがあるんだよという場所をちゃんと作ってあげているような気はしますね。

そうですね。そこは変わってないはずです。

-それをより感じたのは、アルバムの最後に収録された、「ERROR」という曲で。ミルクさん(少年がミルク)自身にも、自分の場所ができたんだなっていう感覚もあるし、音楽の面でも、自分のベーシックとなる場所ができたのを感じたんですね。そこから、1曲目の「トーキョー・ブルーガール」に戻ると、すごく納得するところがあった。

嬉しいです。いい曲順ですよね。曲順は社長が決めるんですけど、ひとりで盛り上がってましたよ(笑)。

-そこは変わらず、ミルクさん自身が考えるわけではないんですね。曲を書くときにも、ストーリー立てて、アルバムを考えて書くわけではないんですか。

そうなんです。なんとなく言いたいことを書いていって、それを社長がストーリーとしてちゃんと組み立てていくというか、こっちこっちっていう感じで順序立ててくれるんです。

-曲が並んでみて、自分で気づくこともありますか。

ありますね。3枚のミニ・アルバムでたくさん気づくことがあって、かと言ってすべて自分主導でやるのは向いてないのは知っているので、任せたいんです。ある程度、操作されたいというか(笑)。操作されているけど、性格悪いこと言ってるくらいの方が、ちょうどいい創作ができるなっていうのは、今回改めて気づいたところでしたね。ライヴでもそうなんですけど、ぶっ飛んだこととか、ふざけたこととかも、いい具合に歌えるようになってきたのかなっていう。これまではライヴも、ずっと怒りがあったんですよ。