Japanese
少年がミルク
2017年06月号掲載
Interviewer:吉羽 さおり
少年がミルクの3作目となるミニ・アルバム『空砲一揆アノニマス』のテーマは、ずばり"ラヴ・ソング"だ。これまでの2作で、ナイーヴな心の内や、ふつふつと煮えたぎる言葉を研ぎ澄まし、アーティストとして思いきり鋭いナイフを振るう音楽に落とし込んできた少年がミルク。今回もラヴ・ソングではあるが、一筋縄でいかないのは間違いない。しかし、作品を重ねてきたなかでの洗練や、もともとのポップスへの嗅覚の鋭さが相乗効果となって、毒々しくもポップで、想像的であり生々しい、矛盾をいとも簡単に同居させた音楽になっているのが、やっぱり面白い。
-今作『空砲一揆アノニマス』は、挑発的なラヴ・ソング・アルバムだそうで。全5曲それぞれ、短編映画のような物語があって、これまでの作品以上に映画的な匂いがするなと思いました。まず、なぜラヴ・ソングだったのか、そしてどんな作品をイメージして制作していったのでしょう。
これまで、1stミニ・アルバム『KYOKUTO参番地セピア座』(2016年リリース)、2ndミニ・アルバム『GYUNYU革命』(2017年2月リリース)と2作ミニ・アルバムを出してきて、いろんな曲、サウンドがあって、なんとなく少年がミルクっぽさみたいな道が見えてきた感じがしたんです。作曲をしている(水谷)和樹さんからもらう音源もそんな感じで、サウンド的にも固まってきたというか。"あぁ、こっちか、こっち行くんだ"っていう感じがあるんです。そんななかで、ラヴ・ソングはずっと書きたかったんですけど、書けなくて。
-その書きたかったのは、いわゆる正統派なラヴ・ソングですか。
いえ、それは書けないのは承知だったので(笑)。"少年がミルクが書いたラヴ・ソング"が聴きたいなと、そろそろ書けるかなと思ったんです。今回は、5曲ともいいペースで曲が届いて、いろいろと固める時間もあったので。珍しく、自分の中でコンセプトが決まっていましたね。
-なぜ今、ラヴ・ソングが書けるなと思えたんでしょう。
なんでかな......少年がミルクとして、数は多くないですけどライヴをしてみて、お客さんが増えてきて。コミュニケーションが取れるステージが見えてきたというか、だいぶコミュニケーションが取れるようになったので。恥ずかしくなくなったんですかね(笑)? あとは本当に、いつもあるテーマですけど、音楽業界に対しての思いが──
-皮肉はたくさん入っていますね。ラヴ・ソングを書くとなっても、そこは外さないんだなと思いました(笑)。
はははは(笑)。ちゃんと出てますかね。
-全員が全員、世の中のラヴ・ソングに対してイエスじゃないだろうっていう気持ちを、ものすごく持っているんだなと感じました。
裏切りたかったですね。特に、3曲目の「アンチラブソングヒーロー」にも書いたんですけど、自分が聴きたいラヴ・ソングがないぞと思って。たまには聴きたいじゃないですか。実際にはそういうことがなくても、曲で気分をちょっと味わいたいときとか(笑)。
-疑似体験的に、恋愛を味わおうと。
そういうときに、iPodとかでシャッフルで探してみたりするんですけど、"あら? 全然当てはまらないぞ"って。私のプレイリストは、(レーベルの)社長のパソコンから幅広く入れてもらってるんです。自分では絶対に選ばないものや、新しいものも入っているので。でも、聴いてみても"そうか......"っていう。
-ピンとくるラヴ・ソングがない。
そうですね。あっても、ラヴ・ソング以外になってきちゃうんですよ。......あ、クリープハイプの『世界観』(2016年リリースの4thアルバム)とかは聴いてましたね。ラップが入ってる「TRUE LOVE」。あれ好きだった。
-あぁ、少年がミルクとクリープハイプのスタンスや視点は、感覚的には近いかもしれない。
たしかに。ここまで書いていいんだなっていうのはありますね。すごく挑発的な人ですよね。表情とかにも出ていると思うんです、戦ってるなっていうのが。でも、性別として女ということでは、そういう歌を歌う人は、たぶんあまりいないかなと思うんです。
-そうですね、"ラヴ・ソングです"ってこの5曲を出してくるわけですし。
(笑)"誰が歌うんだよ!"っていうのは本当に言いたい。だから自分が歌うんだっていうわけでもないんですけど、"言いたい!"と思って。
-少年がミルクが思うラヴ・ソングはどういうものかっていうのは、何か言葉にして説明することはできますか。
ないんですよ。でも、やっぱりちょっと斜めの感じで、"みんなにとってはこういうのがラヴ・ソングなんでしょ?"ってなっちゃうんです。そういう意味でのラヴ・ソングしか知らなかったですね。
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