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INTERVIEW

Japanese

少年がミルク

2017年06月号掲載

少年がミルク

Interviewer:吉羽 さおり

-だからこそ、自分で実際に書いてみたらどうなのかということだったんですね。今回は、5曲それぞれいろんな書き方をしていますよね。例えば「qualia」(Track.2)なら、ふたりそれぞれの視点で書いたり。

それは面白かったですね。結構、今までは内向的で、閉じこもって書いて歌ってるというか。そのコンセプトはずっとあるんですけど、そういう人が、ふたりの歌を書くっていう。すごく苦労したんですけどね、「qualia」は。でも、そういう映画や曲は好きなので。ただのBGMになりがちな洒落たサウンドとか、そういう音楽ではなく、ちゃんと心に傷を残すようなものにしたかったんです。だから別に、毎日聴いてとは言いたくないんですよね(笑)。本当に必要なときに1曲だけ、この5曲の中から聴いてくれたらいいな、みたいな。ズシンと、たまに聴いてくれたらいいんです。

-今、世の中の人が思うラヴ・ソングって、相手を思うときめきや切なさだったりを描いていることが多い気がするんです。でもここでのラヴ・ソングは、恋愛の終わりだったり、喪失感、あるいはひとりの感覚を描いた曲が多いですよね。

あぁ、そうですね。でもたぶん、常にそうだったのかもしれないです。誰かといても、喪失感があるというか。

-"僕ら"という言葉も出てくるけれど(※Track.4「聴こえないくにのくちづけ」)、それはひとりとひとりの印象がある。

ラヴ・ソングを聴くけど、"お前、ひとりだからな"って言いたいのかもしれないですね(笑)。でも、すれ違いを描くのは楽しかったですね。「qualia」でも、すれ違っているし。お互い、嘘をついていることがバレてないと思って接してることって、たぶん日々多発していると思うんです。そういう面白さっていうか。でも、セックスは本気でするみたいな。でも終わった瞬間、嘘みたいな(笑)。

-ものすごいかりそめ感ですね(笑)。

かりそめ感ですね。そういうものが好きなんでしょうね。いつもアルバムの曲順とかライヴのセットリストを決めるのも、完全に社長に任せているんです。そこのセンスは尊敬しているので(笑)。で、並んだものを聴いたときに面白かったのは、1曲目の「I love you」ではいつものファンタジー要素があって、だんだんとリアルみたいな感じになっていって。最後は、ナイフのような「軽蔑」(Track.5)で終わるという。

-曲調的には、ラストに「聴こえないくにのくちづけ」がきた方が、物語としての美しさはあるんです。と思いきや、最後に曲調も内容もロックな「軽蔑」がくる。"キミがキミになって 僕が僕になれただけ。そこにある音楽は交わらなくていい"という歌詞で締めくくる、なかなか強烈な曲で。

かわいそうですよね、この人(笑)。

-"軽蔑"って昭和歌謡のタイトルのようですけど(笑)。

そういうところもありますよね(笑)。でも、いい言葉ですよね。

-この思いきり突き放した曲も、ラヴ・ソングだって言い切る面白さもある。先ほど、自分が聴けるラヴ・ソングがない、少年がミルクがラヴ・ソングを書いたらどうなるかという話がありましたが、それはリスナーもそうだと思うんです。きっと、今たくさんあるラヴ・ソングと自分の思いがなかなかフィットしないな、という人に、こういう曲もあるよと、提案できると思うんです。

そこに関しては、ちょっと急いでます。急いでそういう子を、"いいよ、OK。そのままいこう"って。自分を変えないで、っていうのはありましたね。特に今はいろんな聴く手段があって、もしこれまで届かなかった人にも届くのだったら刺激したいなって。それはリスナーだけじゃなくて、今回はクリエイターの人とかも挑発というか、刺激できたらいいなって思っていたんです。つまんないじゃないですか、今。服とかもベーシックになっているし。デザインがシュッとしてきていたりとか。以前から、歌詞を書いているときはファッション的なものも頭にあるんです。コーディネートするじゃないですけど、ヘンテコな合わせ方をしたりするのが昔から好きで。言葉の合わせ方も、そうなっちゃいましたね。「I love you」とかもそうですし。

-その、自分なりの組み合わせの妙は、どこで培ったものだと思いますか。

それは自分でも思うんですよね......聞かれたりもするんですけど、何なんだろう? たぶん、貧乏で、でも服と音楽がすごく好きで。子供のころに雑誌とかを切り抜いて、欲しいものを集めてコラージュしたりするじゃないですか。小中学生のときは、そうやってスクラップばかりしていたんです。で、その傍で好きな音楽が流れていて。自分の手作りの世界、みたいな。今、それができているなって思うんです。

-当時から、視覚的なところと聴覚的なところが一致した感じだったんですね。それで、自分の理想的な世界を作るっていう。

そうですね、ちぎって貼って。人が作ったものを、さらに自分でカスタマイズしちゃうみたいな。そういう意味では、ずっと変わらないのかもしれないですね。ただ、今はその方法が電子的になっているだけで。

-それは、人と違ってもいいんだって子供ながらに思っていたんですかね。

違わないとイヤでしたね。そういう音楽やマンガを、古本屋に行って探したりとかは未だにしますし。

-そうすることで、自分のあり方を追求したり、模索していたのかもしれないですね。

だから友達がいないんですかね(笑)。うまく生きるために、外に出るときはちょっと人に合わせてみたり、身なりを変えてみたりしてきたんですけど。今の社長に出会って、自分がちょっと変わっているということに気づかされたんですよ(笑)。やっと今、そのすり合わせというか、偽らずにいていい自分と、歌いたい音楽が一致してきて。

-小さいころから自然と築かれてきた、少年がミルクなりの文化があるんでしょうね。でも学生生活なんて特に、いわゆる女の子のグループに馴染めないって大変でもありますよね。

それがずっと続いてますね(笑)。溶け込もうとして失敗っていう。