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INTERVIEW

Overseas

NOEL GALLAGHER'S HIGH FLYING BIRDS

 

NOEL GALLAGHER'S HIGH FLYING BIRDS

-ソロも3作目となりました。OASIS時代の3rdアルバム『Be Here Now』は、作っている最中の記憶があまりないほど疲れていたそうですが、人生2回目の3rdアルバムの制作はスムーズでしたか? お話をうかがっていると、これまでと少し異なる手法だったようですが、すべて順調にいきましたか?

そうさ。劇的な出来事なんて一切なかったね。いや、時間はかなりかかったよ。だが、かなり早い段階で、俺たちのどちらもが完全に満足しない限りアルバムには入れないということをお互いに誓ったんだ。一緒にやった曲の中でDavidが最高だと思うのに、俺が"うーん"と言って収録されていない曲が4曲ある。"お前はどうかしている! これらは素晴らしい曲だぞ"と言われたんだが、俺は"うーん、どうかな"と言ったんだ。というわけで、それらの楽曲を完成させることはなかった。かなり早い段階でお互いに約束し、それを守ったよ。新作に『The Man Who Built The Moon』という曲があるんだが、この曲にはいくつもの異なるサビを書いたんだ。最初に書いたやつは最高だった。それでも彼は"うーん。別のを試してみろよ"と言った。そこで俺は別のサビを作った。それからさらに別のサビも書いたんだ。どのサビもすべて素晴らしかったが、徐々に向上していった。そして、8回目までいったとき、"それだ!"とDavidに言われた。彼は正しかったね。俺は50歳なんだが......(※カメラに向かって)これは本当だ。実は50歳なんだ。歳を重ねるごとに、自分以外の誰かに"これまでとは違う何かを試してみなよ"と言ってもらう必要があるのかもしれない。だいたいみんな、自分がいつもやるやり方というのに落ち着いてしまいがちだ。新しいことをやる忍耐力や時間、エネルギーがないのかもしれない。そういう意味で触発され、彼と一緒に仕事をするという決断に至ったのかもしれないね。みんながこのアルバムを聴けば、きっと度肝を抜かれるだろう。まるで俺ではないかのような曲だってあるからね。でも、よく考えてみると、俺の曲に聴こえるんだ。わかるかい? 今、俺がいるのは最高の瞬間だ。

-"これまでとは違う"というお話が出ましたが、ソロ1、2枚目のころとの自分の違いを、どういうときに感じましたか?

これまで作ってきたレコードすべてで、俺はアコースティック・ギターを弾いている。すべてのアルバムのすべての曲でね。本作ではアコースティック・ギターは一切ない。いや、1曲だけアコースティック・ギターがあるが、それはJohnny Marrが弾いている。俺は弾いていない。それから、プロデューサーにここまで自由にやらせたということもなかったのだと思う。俺は正午から午後6時までしか仕事をしないんだ。そのあとは自宅に戻る。だから、これまでのレコードすべての制作では、午後6時にスタジオが閉まり、誰もが帰宅していた。一方Davidは朝の4時まで起きて、コンピュータで様々なことを試していたりする。翌日(スタジオに)行くと、"これを聴いてみて! どう思う?"と聞かれる。日によっては"うーん、これは好きではないね"と言うこともある。そうなるとまたやり直しだ。でも大概は"うわっ、これはすごい!"ということになる。そうなると、自分がそれまでに書いていたのでは上手くいかないのではと思い、また書き直さなければならないということもある。そうやってすべてひとつ上のレベルに上がるわけだ。1曲だけに集中するということはない。毎日、5曲ずつの作業をするんだ。クリエイティヴな旋風の中にいるようなものだったね。すごかったよ。ソロの最初の2作では、仲間やそのときにバンドにいた誰かが弾いていたが、Johnny Marrがプレイした1曲を除いては、すべての曲のギターは俺が弾いていて、そんなアルバムはかなり久しぶりだった。Davidはセッション・ミュージシャンを入れていたんだが、"ギターは誰が弾くの?"と聞くと、"ギターを弾くのは君だ。ギタリストなんだから"と言われた。俺は"オーケー"と言ったよ(笑)。

-今作のタイトルを"Who Built The Moon?"にした理由は?

これはどう説明したらいいかな。これが何を意味しているのかは教えないが、月を作ったのは誰かという意味にもなるし、"ムーン"というのはそういう名前の船のことだということもあり得る。つまり、ムーンを作った男というのは、船を作る人のことかもしれない。さて、自分で考えろ。俺はその意味を知っているが、教えないぞ(笑)。

-先ほど、Johnny Marrの名前が出ましたが、他には、どういう顔ぶれが本作に参加しているのですか?

Paul Wellerが1曲弾いているほか、ベースを弾いている男には会ったこともないんだ。ロサンゼルス在住なんだが、彼に曲を送り、一夜明けると俺たちが寝ているうちにインターネットで素晴らしいベース・ラインを送ってくれるんだ。彼はJason Falknerという名前でファッキン天才だ。まだ握手したことすらないんだが、それでも彼がすべての曲でベースを弾いている。そして以前にも一緒に演奏したことがあるドラマー Jeremy Staceyが何曲かドラムを叩いている。素晴らしいバッキング・シンガーがいて、えーっと、全員の名前は思い出せない。あまりにも多くのミュージシャンが参加しているんだ。多分、30~40人ものミュージシャンが参加している。お金がかかって仕方がないよ(笑)。でもいいサウンドに仕上がった。

-今作のレコーディングはどこで行いましたか?

一部をベルファストで録ったし、それからまたロンドンの"The Pool Recording Studio London"というところでもやったが、ここからそう遠くない。元水泳プールだったのをスタジオに改造したというところだ。そして"HOXO"というところでもやったね。Edwyn Collinsが以前所有していたスタジオだ。それからまた"ストレンジ・ウェイズ"という『Chasing Yesterday』をレコーディングしたところでも一部レコーディングしたね。

-レコーディングで特に楽しかったエピソードを教えてもらえますか?

1曲目(「Fort Knox」)はレコーディングの最終日にやったんだ。本作に入れるつもりもなく、行き場のないアイディアだった。"Audrey Gbaguidi"という名前の女の子をDavidが知っていて......。彼女はフランス人で、えーっと、どこ出身だったかな。ガボンとかなんとかいうアフリカの国だったが、思い出せない。きれいな娘でね。Davidが彼女をセッションに招いたんだが、彼に"あの娘は何をするの?"と聞くと、"わからない"と言われた。"どの曲で歌うことになっているんだい?"と聞くと、"オープニングの曲だ"と言われた。「Fort Knox」のことだ。それからもう1曲「Be Careful What You Wish For」もそうだ。というわけで、彼女があるスタジオの部屋にいて、僕たちは別の部屋にいた。そして彼女が歌い始めた。歌詞などなく、この世のものとは思えないもので、僕はただ"ファック・オフ! アメイジング!"と思ったんだ。僕らはお互い顔を見合わせて"ワオ!"と言った。彼女は素晴らしかったね。

-素晴らしい出会いだったんですね。

それからCharlotte Marionneauという人もそうで、「It's A Beautiful World」のフランス語の箇所で、そのセクションがどうあるべきかを話し合っていたとき、スポークン・ワードを入れたらどうだろうと俺が提案したんだ。そのアイディアをしばらくキープしていたんだが、その箇所がフランス語であるべきだというアイディアを出したのも俺だった。なぜそれがフランス語でなければならなかったのかはわからない。ただ、それがいいアイディアだと感じたんだよ。その曲をCharlotteに送っておいて、彼女が来てからやったんだが、俺たちは"ヤバい!"と思ったんだ。そのあと、彼女が何を言っていたかという内容を英語で読んだとき、"すげぇ!"と思ったね。信じられないほど感動的だった。本作でプレイした人たちすべて、歌った女の子たち全員、それにパーカッション、ブラス・セクション、ベースをプレイした男たち全員が最高のミュージシャンだった。彼らに対してなんの指示をすることもなく、"やるのはこの曲なので、これに何か弾いてくれ"とだけ言ったんだが、彼らがプレイしたのはどれも素晴らしかったね。Johnny Marrのことも"すげぇ!"と思ったね。今回もまた、だ。彼は俺の友人で、"この曲を弾いてくれ"と言ったんだが、彼に"何を弾いてほしいの?"と言われて"わからない"と言った。するとハーモニカを出してきて吹いたんだ。"うわっ!"と思ったね。信じられなかった。そんなクリエイティヴな人たちと一緒にいて、彼らが自分の曲に取り組んでいるというのはとても光栄だったよ。

-前作のリリースからは様々な出来事が世界でも、そしてあなたの人生でもおそらくあったのだと思いますが......。

俺の人生で? 俺の人生ではなんもないよ。

-特にどんな出来事がこの最新作の曲作りに最も影響を与えたと思いますか?

曲の中の歌詞の僅かな一部とかかな。インタビューの冒頭で言ったように、俺の歌は普遍の真理を扱っていることが多いので、ニュースが俺のやることに影響を与えることはない。パリやマンチェスターでのテロリストの攻撃を目にするのや、日本上空で北朝鮮がミサイル攻撃するというのは悲しいが、それについて曲を書きたいとは思わない。そうする人もいて、それはそれでいいと思うけれど、そういうことは俺がやることではない。テロリズムや憎しみのある現在の世界のあり方を考えると、音楽をもっと世界にもたらすべきだと感じるね。そしてそういう曲はある種の喜びを秘めているべきだ。ソングライターとして最も難しいのは、喜ばしいことについて書くということだ。そして喜ばしい曲を書くというのは、この世界で毅然としているということだ。これはただ俺がそう思うということなんだが、今では人々は喪失、痛み、暗闇、怒りといったことについての曲を書く。でもソングライターとして喜びの曲を書くということは物事に屈しないということだ。クソみたいなことや憎しみに直面しても、"美しい世界だ。なんてことだ"と言えるというのは、物事に屈しないというメッセージだと思う。