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INTERVIEW

Japanese

Crahs

2017年11月号掲載

Crahs

Member:クボタクト(Vo/Gt) クボケント(Dr)

Interviewer:蜂須賀 ちなみ

-そして、7月の"HandMade In Japan Fes 2017"からコンピレーション・アルバム『暮らしの音楽』の配布がスタートしたんですよね。

タクト:はい。外に発信していきたい気持ちがあるんだぞ! っていう狙いをより明確に伝えるために、あえて"ライヴハウス、CDショップ以外"限定というコンセプトにしました。

-でも普通に考えると、ライヴハウスの物販で置いておいた方が手に取ってもらえる確率は高いんじゃないかなと思ったんですよ。

タクト:いや、実際そんなことないんですよね。『暮らしの音楽』も1,000枚用意したんですけど、夏の1、2ヶ月で全部なくなっちゃって。何か、デザフェスや"HandMade In Japan Fes"の会場のお客さんは"え、CDがタダで貰えるんですか?"みたいな感じなんですよ。例えばミナホ("MINAMI WHEEL")やサカスプ("SAKAE SP-RING")に慣れてる人たちはバンドマンが外でCDを配ってるっていう光景が当たり前になってるから、CDが貰えることを別に特別に思わない。でもそういうところに来ない人たちにとっては無料コンピっていう概念が浸透してないんですよね。"CD=買うもの"っていうのがあるから、"え、9曲も入ってるのに、これ貰えるんですか?"っていう感じで、すごく興味津々で持っていってくれて。で、ハンドメイド系のイベントに来てるお客さんは意外とライヴハウスにハマりやすかったりするし、その逆もあると思うんですよ。要するにインディペンデントなものに関心を示しやすい人たちなので。

-自分だけのお気に入りを見つけられる場所ですからね、どちらも。

タクト:そうですね、その感覚を楽しんでる人たちだなと。

ケント:僕たちぐらいの規模のバンドだと、ライヴのときにライヴハウスで配るっていうだけだと、結局ライヴハウスの中で完結しちゃうんですよ、なんかもっと、ライヴハウスのお客さんを(外へ)連れ出したいし、外にいる人もライヴハウスに連れてきたいし......っていうのがあって。

タクト:ライヴハウスに来てる人たちもこのコンピをひとつの動機にしてハンドメイド系のイベントに遊びに来てくれればいいのに、って思うんですよね。だって800円で入れるんですよ? ドリンク代もないし(笑)、来てみたら圧倒的に楽しいので。そうやって僕たちが架け橋になって、きっかけを発信していきたいなって。

-ちょっとそこに関連してくるんですけど、2015年から続いてる主催イベントの"IDOBATA"は昼公演もやってるじゃないですか。

タクト:はい。昼のライヴって終わったあとに時間がめっちゃ余って最高なので、それをみんなに知ってもらいたいんですよね。帰るときも終電を気にして慌ただしくすることもなく、買い物してから帰ってもいいし、映画を観てから帰るのもありだし、早めに帰って家でゆっくりしてもいいし。

-それも"ライヴは夜にやるもの"っていう固定概念からは離れた結果だと思いますし、そうやって結果的に、いわゆるインディーズ・バンドの定型的な活動をどんどんはみ出していってる感じがCrahsにはあって。

タクト:"こういうもんなんだ"ってある程度決まってるイメージを"本当に正しいのかな?"って疑っていこうと思ってるんですよ。例えば、"なぜライヴを夜にやらなきゃいけないのか"っていうのを考えるじゃないですか。平日の昼はたしかに、みんな働いてたり学校行ってたりするからライヴに来るのが難しいと思うんですよ。で、そこからさらに"じゃあ土日ってなんでみんなやらないんだろう?"って考えてみたときに、なんでなんだろう? と思って。休日に渋谷とか原宿に行くと、みんな朝早起きして遊びに来てるじゃないですか。だからもしかして、バンドマンが朝起きられないからじゃないかなと思って(笑)。下北沢ぐらいですよ、13時ぐらいになるまで人が来ないのは。

-たしかに(笑)。それで休日の昼開催のライヴを始めたと。

タクト:そうですね。Crahsは基本的に"これやってみたら楽しいと思うんだよな~"っていうのを誰かが思いついて、それをメンバー内で話して、"あぁ、たしかに楽しそうだね"、"面白そうだからやってみようぜ"ってなる感じなんですよ。"自分たちのものを自由に発信する"っていうことさえ大事にしてれば、ブレることも散らかることもないかなと思うから、バンドマン然としたやり方に固執する必要もないという考えです。

-そういう考え方って昔からあったんですか?

タクト:多分以前はそこまで考えてなかったですね。でも――前身バンドのパンカホリックスは、もともと僕が23歳になる年にバンドを始めたからスタートが遅めだったんですよ。そのときライヴハウスの店長に"この人たち同い年だよ"って教えてもらって観に行ったバンドは第一線でやってるような、売れ始めてるバンドばかりだったんですけど、自分たちはライヴハウスに出始めたばかりだから何もわからないし、演奏も超下手くそだし、お客さんも集まらなくて。で、"これ、ライヴハウスだけでやってたら一生追いつくことができないな"って思ったんです。

ケント:やっぱり慣れてない人からしたらライヴハウスに来ることってハードルが高いことだと思うんですよ。だからライヴハウスで待ってると、聴いてもらうまでに時間がかかりすぎるというか、こっちからもっと出ていかないといけないっていう意識が常にあって。

タクト:それに、僕ら結成当初からバンドしながら別の仕事もやってるんですよ。3人とも音楽以外にもやりたい仕事があって。だから、ライヴを月10本できるような余裕のある環境にはいない。けれど、それを言い訳に負けたくはない。

ケント:ふふふ。そうだね。

タクト:月2本しかライヴができなかったとして、そうすると他のバンドの5分の1しか回数がないんだから、じゃぁ残りの足りない4をどう補おう? っていうのはパンカホリックス時代から考えてましたね。それもあって昔からMVに力を入れたりもして。

ケント:そのあと、パンカホリックスからCrahsに改名するときに、"自分たちの表現したものって何だろうね"っていうのを改めてメンバーでいろいろ話し合って。

タクト:そうやってCrahsになってからどんどん話し合いをしていって、トライ・アンド・エラーを繰り返したりしていってたんですけど、今年になってやっと"こういうことをやればいいんじゃない?"っていう形が見えて動き始めることができた、っていう感じですね。

-ではここで改めて訊きたいんですけど、Crahsにとってこの1年はどんなものでしたか?

タクト:一番大きいのはメンバーが抜けたことかな。ベースが抜けて3人編成になったので、今年はずっとサポート・メンバーを入れてライヴをしてたんですよ。去年までは正式メンバー4人でやれることにこだわってたんですけど、今はもう、"どうせベースを入れなきゃいけないんだったら、もう、ギターもキーボードもコーラスもいろいろ入れちゃおう!"みたいな感じで、ライヴは常にサポート・メンバーの人数がメンバーの人数と同じぐらいみたいな状況でやってますね。

ケント:人が増えた分、最初はアレンジ面で大変な部分もあったんですけど、やりたいことが自由にできる環境ができつつあるなっていう印象があって。逆にフットワークが軽くなったというか、自由度が広がったような感覚がここ最近あります。