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INTERVIEW

Japanese

彼女 IN THE DISPLAY

2017年10月号掲載

彼女 IN THE DISPLAY

Member:Ryosuke(Vo) 海 THE KID(Dr)

Interviewer:岡本 貴之

10月18日にリリースされる彼女 IN THE DISPLAYの6曲入りミニ・アルバムのタイトルは"GOLD EXPERIENCE REQUIEM"。そう、ファンならご存じの漫画"ジョジョの奇妙な冒険"のスタンド名から引用されたものであり、彼ら自身の1stフル・ベスト・アルバムのタイトル"GOLD EXPERIENCE"を受けての言葉でもある。バンド初の試みとして、いきものがかり、LiSA、cinema staff、School Food Punishmentらを手掛ける江口 亮氏をプロデューサーに迎えた今作で、彼女 IN THE DISPLAYが見せた"進化"とは? そして今の彼らが夢見る未来とはどんなものなのだろうか。

-まず、今作のタイトルについて教えてもらえますか?

Ryosuke:4年ほど前に『GOLD EXPERIENCE』(2013年リリースの1stフル・ベスト・ アルバム)というアルバムを出させていただいたんですけど、その作品は僕らのなかでひとつのけじめだったんですよ。そこから4年間やってきて、そろそろそれをフィーチャーしてもいいんじゃないかっていう話が出て。"ジョジョの奇妙な冒険Part5「黄金の風」"に"ゴールド・エクスペリエンス"というスタンドが出てくるんですけど、それが最終的に"ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム"っていう最強のスタンドになって戦うっていうストーリーがあるんです。僕らもこの4年間でそういう進化を遂げられたかなっていう意味合いを込めたタイトルです。初めて聴く人とかジョジョを知らない人は"なんのこっちゃ?"って思うかもしれないですけど(笑)。知っている人は、アルバムを聴いたら納得するんじゃないかと思います。

-これが1~2年前だったらこういうタイトルはつけられなかった?

海 THE KID:つけられなかったですね。Ryosukeが言ったように進化したということもあるんだけど、このアルバムが区切りみたいな気持ちもあって。次がより進んだものになるだろうっていうことを匂わせる、という。ファンの方たちにも、"ここで『GOLD EXPERIENCE REQUIEM』っていう作品を出すんだったら、次は......"みたいなことを想像させるタイトルでもありますね。次に繋がるストーリーも考えつつやっている感じです。

-なぜ、ここが区切りになったんです?

Ryosuke:人との出会いが大きかったですね。いろんな人の力を借りてできあがった感じが強いんですよ。今回の収録曲は6曲なんですけど、制作にかけた時間はフル・アルバム以上ですし。そんななかで、自分らだけでやっていたと思っていたところを、いろんな方とのチーム、仲間がいたからこそできたっていう気持ちがあるので。そこは僕らなりのけじめだし、進まなきゃっていう気持ちでしたね。

-今作は初めてプロデューサーを立てて制作したそうですね。

海 THE KID:そうです、これまではバンドのセルフ・プロデュースでやってました。プロデューサーの江口 亮さんはスタッフの方から紹介していただいたんですけど、こんなにハマる人がいるんだっていうくらい、性格から何からハマる人でした。

Ryosuke:毎晩飲んでたもんね(笑)。

海 THE KID:もう、録りの時間より飲みの時間の方が多かったくらい。

-やっぱり、お酒が飲めるというのは彼女 IN THE DISPLAYと接するうえで重要というか(笑)。

Ryosuke:ははははは! どんなバンドなんすか(笑)。

海 THE KID:でも本当に、バンドをちゃんと育てようと思ってくれているプロデューサーで。僕らのイメージだと、プロデューサーが入ると好きなことができないとか、肩からカーディガン掛けてるみたいな(笑)。そんな感じかなと思ったら、考え方もめちゃくちゃ現役のバンドマンで。そこにすごく生かされたというか、人との出会いが区切りになったというのは、江口さんの存在が占めている部分がかなり大きいですね。5人で作っていたのが当たり前なところからマネージャーが入って6人になってやってきたなかで、今はもうそれ以上に輪が広がって、僕らの知らないところでもいろんな人が動いているっていうのを感じるようになってきたんですよね、今回の制作で。それはこのタイトルをつけるには十分な要素でした。

-それまでセルフでやってきたバンドがプロデューサーを立てるとなると、その理由や目的が大事になってくると思うのですが、そのあたりはメンバー間ではどうだったんですか。

Ryosuke:僕らは、何事も否定するのではなくて、何でも1回取り入れてみようっていうタイプなんですよ。だから、もし合わなかったら"すいません、僕らのスタンスはこうなんで"ってお断りすることももちろん考えていました。でも江口さんの人柄もあって、僕ら自身、思い込みを壊してもらえたし、すんなり受け入れることができましたね。自分らの思っている100倍良かったので何の抵抗もなかったです。

海 THE KID:楽曲的なことでいうと、自分たちとしても次の作品をラウドっぽい方に戻すのか、ギター・ロックの庭をかじったような歌モノの方、両極端でどっちにいくのかなって悩んでいるところもあって。でもそれを相談しながらやったんですよね。江口さんは彼女 IN THE DISPLAYの大切な要素に、楽曲に加えるエッセンスとして"これはどう?"っていう提案をしてくれたというか。だから俺らが持っていたものをきれいに成形してくれた感じなんです。装飾もきれいにしてくれて。それでできあがった作品が最高になった感じです。

-曲ごとのテーマってどんなところを目指したんですか。

Ryosuke:1曲1曲はわりと作った段階で、僕らが思ったものと江口さんの助言と、そのやりとりのなかでできたものなので、完成してから"あ、こんな曲になったんだ"って実感したところが大きかったですね。だから、最初からこうって決め込みすぎてはなかったんですけど、曲ごとにテーマはありました。"映画「ワイルド・スピード」っぽくいこう"とか言っててできあがったら、スピード感が全然違うとか(笑)。そういういい脱線の仕方をしたというか、結果的にそれが僕ららしさとか江口さんの新しいエッセンスがうまく混ざった要因かなって。

-以前、ライヴを観たときにRyosukeさんが終始満面の笑みでライヴをしていて。それはたぶん、今のバンド全体の表情がこういう笑顔なんだろうなって思ったんですよ。

Ryosuke:あ、それは嬉しいですね。

-ただ、そのイメージを持って今作を聴くと、すごく内省的な歌詞にギャップを感じるというか、正直暗い印象を受けたんです。その間には何があるのかなって。

Ryosuke:あぁ~なるほど。そこでいうと根本の人間の話になるんですけど、僕はそこまで明るい人間じゃないんですよ。ライヴは楽しい方がいいって思うからそういうふうにやってるんですけど。わりと内にこもっちゃうタイプというか。そういう部分をアーティスティックに持っていって、ライヴはそこで初めて自分を出せる場にしたいというか。そこにちょっとしたギャップが出てくるのかなって思います。昔は、そこも自分のなかでまとめなきゃって悩んだときもあったんですけど、僕が歌詞を書いていいよって任されているわけだし、隠しちゃいけないなって。そこは素直に書いたつもりです。だから、ライヴも書いた曲も両方素直な自分かなって思ってます。