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INTERVIEW

Japanese

MOP of HEAD

2017年07月号掲載

MOP of HEAD

Member:George(Machine) Kikuchi(Gt) Hitomi(Ba) Satoshi(Dr)

Interviewer:山口 智男

2015年のアルバム『Vitalize』で完全復活をアピールしてから2年。MOP of HEADは自ら殻を破りながら前進し続けてきた。全曲でゲスト・ヴォーカルを迎えるというインスト・バンドとしては掟破りの作品となった前作『and Touch You』から1年ぶりにリリースする今回の『Aspiration』では、あらゆるダンス・ミュージックをバンド・スタイルで演奏するというそもそものコンセプトを覆すテクノ・ナンバーに挑戦。さらなる前進を印象づけているが、ダンス・ミュージックの定義が曖昧になってしまった今だからこそ、自分たちが作るべき音楽があると考える彼らに、新作に込めた思いを訊いた。

-2年ぶりのSkream!登場なので、前々作の『Vitalize』をリリースしてから今回、『Aspiration』をリリースするまでの2年間の活動について、まず聞かせてください。

George:『Vitalize』はフル・アルバムだったんですけど、それを作っているときぐらいから、フル・アルバムという形は時代に合っていないんじゃないかみたいなことは思っていたんですよ。アーティストとしては、本当はフル・アルバムを作りたいんですけど、今は十数曲まとまった形よりも、むしろ1曲1曲が聴かれるような時代になってきている。だから、フル・アルバムを1回作って、次の2枚ぐらいはコンパクトな作品を作ろうと考えていたんです。それで、ほぼ全部インストの『Vitalize』を作ったあとに、全然違うことをやろうということで、全曲ゲスト・ヴォーカルを入れるというインスト・バンドでいうタブーを1回、早めにやっておこうって思いました(笑)。もっとキャリアを積んで、結成15年、20年ってなったときにいきなりヴォーカルを入れるよりも、今やっておいた方が......まぁ、先にディスられておこうかなっていう(笑)。困ったみたいに急に歌モノを出したら、絶対に何か言われるじゃないですか。それを若いうちに食らっておいた方が大人になってから活動しやすいし、いろいろ言われることに対しても大丈夫だと思える免疫もついてきていたんで、一度振り切って、インストっぽい歌モノではなくて歌モノを作っちゃおうって、2016年7月に『and Touch You』をリリースしたんです。そこで参加してもらったヴォーカリストの人たちが素晴らしくて、そういう人たちと一緒に作ったことで勉強になりましたね。しかも、タイミングもすごく良かった。LEO今井さんに参加してもらったんですけど、METAFIVEがバコーンと――

Kikuchi:行くちょっと前だったんですよ。

George:METAFIVEがあれだけ売れたあとだったらできなかったと思います。

-それで『and Touch You』はディスられたんですか(笑)?

George:いや、いい評価をいただきました。

Hitomi:全然ディスられるってこともなくて(笑)。

George:マイナス思考だったんですよ(笑)。もちろん、いいものを作りたいと思って作ってるんですけど、インスト・バンドの歌モノって、内容よりもコンセプトに焦点が当たりがちというか、インスト・バンドなのに歌を入れたということの意味合いをまず考えられちゃうんです。僕らは全然そんなことは考えてなくて、いい音楽は歌があってもなくても変わらないと考えてたんですけど、そこをちょっと気にしていたんです。どう見られるんだろうって。だから作品そのものに関しては、僕らはもちろん自信がありましたし、いい評価ももらえましたし、あの作品から入ってくれた人たちもいるので、そういう意味では作ってよかったと思います。歌モノをやったことで、ちょっと一般の人たちに近づけたかな(笑)。でも、未だに思うんですけど、歌が入るだけでこんなに評価が変わってしまう世の中って終わってるんじゃないかって。そういうパンク精神は常にある(笑)。音楽が好きなら、極端な話、歌が入っていても入っていなくても、どっちでもいいと思うんですけど、ホント、みんな歌が好きですよね。だから、余計にね。かっこ悪いものは作れないと思ってたんで、『and Touch You』を作るとき、そこはかなり意識しました。

-『and Touch You』以降、ライヴのお客さんが増えたんじゃないですか?

George:今まで来なかったような人が来るようになりましたね。僕、ライヴのとき、お客さんが喜ぶようなMCってできないんですよ。その代わり、正直に思ったことを言うっていう事故る率の高いMCをするんですけど、それが歌モノをやったことでちょっと中和されるというか、自分のいけない部分が隠れるのがいいなって最近思いました(笑)。俺は案外、酷いままでいいのかもしれない。

-今回の『Aspiration』にも、そんなパンク精神は反映されているんでしょうか?

George:そうですね。新しいジャンルや音楽が、もはやそういうふうに扱われなくなっているような気がしているんです。特にクラブ・ミュージックはそうなんですけど、10年ぐらい前ってインターネットが一番、新しい音楽を掘れて、面白いっていう認識がDJ界隈でもあったんですけど、今ってネットで音楽を聴くことが当たり前になってきたせいか、珍しいジャンルがないというか、誰でも知ることができる環境にある。ってことは、国内外問わず、新しいクラブ・ミュージックのジャンルって、実は新しくないんじゃないかって。そうなると、新しいことを追求しながら音楽をやることは、それほどクリエイティヴじゃないんじゃないかと思えてきて、それなら、自分たちが今まで聴いてきたもののリメイクってわけじゃないんですけど、こういう音楽もあったんだよってことを提示していった方がいいんじゃないかと今回は考えました。だから、1曲目の「Galactic」なんてあからさまに10年前のフランスのエレクトロをイメージしている。そういう意味では、より素直になっています。2013年に『BREAKING OUT BASIS』っていう2ndアルバムを出したとき、シカゴでJukeっていうメチャクチャなダンスをするクラブ・ミュージックが流行っていたんですけど、当時、新しいものに飢えていた僕たちはいち早く、バンドで無理矢理そのJukeをやってみたんですよ。

Kikuchi:そしたら総スカンを食らって。

Hitomi:浸透しなかったねぇ。

George:でも、最近になって、"バンドでJukeやるのヤバいっすね"って言われることが増えてきて、いや、もっと前に言ってくんねぇかなって(笑)。生きていく才能がないんだなって思いましたよ。時代に合わない(笑)。時代を先取りできたという意味ではよかったんですけど、こっちにも生活があるわけで(笑)。でも、当時のJukeみたいな尖ったジャンルが今はないから――

Kikuchi:トロピカル・ハウスは?

George:でも、ずっとあるものだからね。だから余計にオールドなテクノの方に興味が向いちゃっているんです。

Kikuchi:それで今回、「Acid Pilot」(Track.5)っていう生楽器ゼロの楽曲を1曲作りました。

George:昔の機材をそのまま使って、ちゃんとしたテクノを作ろうと思いながら作ったらできちゃったんですよ。

Kikuchi:でも絶対、歌が目当てで買った人は飛ばすよね。

George:その気持ちはわかる(笑)。

Kikuchi:あれを聴いてほしいんですけどね。

George:だから俺たち、生きる才能がないんだよ(笑)。ダンス・ミュージックっていう言葉自体が難しくなってきた。広がることはすごくいいことだと思うんですけど、最近、打ち込みや同期を入れるバンドって多いじゃないですか。僕、マニピュレーターの仕事もするんですけど、"クラブっぽくしたいんですよね"っていうそのクラブがクラブじゃなくなっちゃっている。要はバンドマンが言うクラブって、キックが4つで鳴ってればいいってだけの話なんですよ。だから、そこは僕たちがダンス・ミュージック然としたものを常に示していかなきゃいけない。歴史があってのものなんで、それを踏まえて作っていきたい。今回はそういう意識が強いかもしれないです。

Kikuchi:だから今回は1曲1曲、コンセプトを決めて作っていったんですよ。

George:さっきも言いましたけど、1曲目の「Galactic」は10年ぐらい前のフランスのエレクトロ。当時の盛り上がりって、今のEDMと全然違って、メチャメチャおしゃれだったんです。JUSTICEから急にそうなってきたと思うんですけど、バンドやDJの衣装がDior Homme。なんだそれみたいな。遊びに来ている人たちもおしゃれで、すっげぇかっこいいと思いました。そこから、あのジャンルってあっという間に終わっていったんですけど、今、東京にいながらバブリーな雰囲気が感じられるんですよ。オリンピックの影響かもしれないけど、人々がポジティヴになってきていて、クラブも盛り上がっていて――

Kikuchi:EDMの存在がでかかったと思います。クラブを遊び場として捉えるようになった。EDMってちゃんと歌とメロディがある、いい曲が多いと思うんですけど、それって入り口になるにはよかったんですよ。

George:みんなおしゃれになってきたよね、ライヴを観に行くときの服装が。イヤなんですよ、短パンにタオルでライヴに来られると(笑)。家じゃねぇんだからさ。

Kikuchi:あれは何なんですかね。いや、ディスってるわけじゃなくて、検証なんですけど(笑)。

George:それが最近変わってきた。お客さんの自己主張が強くなってきた気がします。

Kikuchi:あの光景が異常なんですよ。みんなで同じ格好をしているっていう。あんな振り付けみたいなの、全員一緒にやらなくていいじゃないですか。

Hitomi:Suchmosのライヴ映像を観たら、ライヴを観ているみんなが手を上げていて、気持ち悪って。

George:Suchmosだけじゃないでしょ。

Hitomi:でも、あのジャンルでそのノり方するの!? って。

Kikuchi:ね、それは意外だった。

George:こっちが16分でグルーヴを作っているのに4分で合わされると、作った意図が伝わってねぇなって思う(笑)。逆にハード・レイヴみたいな奴がいると信用できる。お前、絶対に友達いないだろって思うんだけど、そういう奴を救ってやりたい。

Kikuchi:抱きしめてやりたい(笑)。

George:少数派のために音楽をやるべきではないとわかっているんだけど、気持ちはそこにある。