Japanese
惑星アブノーマル
2016年06月号掲載
Member:アレックスたねこ(歌) テナ・オンディーヌ(Syn/Key)
Interviewer:吉羽 さおり
-そもそもですが、いつもよりも作曲で時間がかかったのは何が理由だったんですか?
テナ:歌詞も"できない"とかいろいろ言ってたよね?
たねこ:歌詞が出てこなかったんです。出るっちゃ出るんだけど、恋してないから?
-恋してないけど、思い切り恋してるモードにもっていかないといけないぶん、大変なことに。
たねこ:そう。恋してないのに恋してるモードにもっていかなきゃいけない苦痛って、意味わからないですけどね(笑)。そういう気分じゃないのになあって思うこともあったり。でも、お芝居が好きなので、観劇したり、いろいろな映画を観たりしてテンションを上げて。そうやって自分の気持ちを持っていきました。なので、エンジンがかかるまでは時間がかかりましたけど、エンジンがかかってからは、結構ポンポンと出てきました。よね?
テナ:うん(笑)。
たねこ:最後、曲が全部できたときにスタッフに言われましたもん。"人間って、叩けばどうにかなるんだな"って。それ、私のことかなって。なので、叩いてもらってよかったなとは思ってますけどね(笑)。
-いやいや、疑似の恋愛感情だったとしても、ここまでもっていけるってなかなかのものですよ(笑)。
たねこ:頑張りましたよ! 「BE P!NK」(Track.2)とかはふざけていますけど、映画の"アラジン"(1993年公開)を意識して、ちょっとエジプトっぽい感じの曲にしています。少し前にインド映画のダンス・シーンが流行ったじゃないですか、ああいう、ちょっとふざけたテンションにしたいなって思ったんです。もしも、「BE P!NK」でMVを撮るならインドっぽいような――っていっても、少し前に平井堅さんがやっていましたけど(※2014年リリースの37thシングル表題曲「ソレデモシタイ」のMV)。そんなイメージとか、恋愛でのお花畑感はありました。
-お花畑感はすごくあります(笑)。Track.3「スターライトマリッジ」なんてまさに、脳内ミュージカルが始まっている感じです。
たねこ:ほんとそうですよ。「スターライトマリッジ」は、私が暗いときに聴いたらきっと一番嫌いな曲(笑)。発売が6月だったのと、アルバムのコンセプトが恋愛だったので、せっかくだからマリッジ感も出そうと思ったんです。1番はわりと明るいけど2番は暗い、別れちゃうんじゃないかっていうような歌詞を考えていたんです。でもハッピー感を出していこうということで、全体的にお花畑な感じに仕上がりました(笑)。
-先ほどお芝居をよく観るという話を聞いたときに、ああなるほど、と思いました。全体的にそういうトーンがありますね。
たねこ:好きなんですよね。"ズッキュン娘"という劇団があって、そこで2年前くらいからずっと惑星アブノーマルの曲を使っていただいているんです。合うみたいなんですよね、ミュージカルみたいなところが。劇団主宰の藤吉みわさんという方は、私の曲を聴いて台本を作ることもあるらしいんですよ。一番始めのころは渋谷Milkywayでやっていたのが、今や吉祥寺シアターをソールド・アウトさせるくらいまでになっていて。なんか一緒に成長している感じが感動しました――って、ズッキュン娘の話になっちゃいましたけど。
-それほど、この音から絵が浮かぶところがあるんだと思います。恋愛事に限らず、描かれていることって、内に秘めた過剰な感情だったりすると思うんですよね。
たねこ:そうですね。うん、私だったらここまで言えないっていうところも言っている曲が多いですね。
-それが、お芝居ではよりフィットするんだと思うんですよ。
たねこ:お芝居感とか、この滑稽な感じを楽しんでもらいたいなと思っていますね。今回はよりアッパーなので、内容も楽しめるようにも作っていますけど、楽曲、サウンドを聴いてノるだけでも楽しんでもらえる作品じゃないかなと思ってます。
テナ:今回はたねこのデモの段階から、お客さんと一緒に踊れそうなとことか、ライヴでお客さんとコーラスの掛け合いをするところが入っていたんです。そういう、"お客さんに参加してもらいたい"という意識が感じられたんですよね。ワーッと強い感情をお客さんに見せつけるだけじゃなくて、一緒に楽しもうよという気持ちが込められているのを感じて。私も、演奏するときはテンションを上げて、お客さんと一緒に盛り上げられるようにとか、フレーズでも意識しています。
たねこ:テナが最初に持ってくるフレーズが結構細かくて、難解だったりするんです。さっきも言っていた芝居と音楽の違いって、参加型かどうかが大きいと思うんですよ。やっぱりライヴに来てもらったら、ただ観てもらうんじゃなくて、一緒に楽しむっていうことを、これからはもっともっと強くしていきたいという思いがあったので。テナが持ってくるフレーズも、"もっとキャッチーにして"とか"もっとわかりやすいのにして"って、結構変えてもらったりしたんです。
テナ:そういう意味では、今回はかなりアッパーですよね(笑)。イエイ、イエイっていう感じが出てる。
-それは、これまでのライヴでの体験をもとにして、音に反映したんですか。
たねこ:そうですね。もともと私が芝居出身だったから、たとえお客さんの反応がなくても、そういうものだと思っていたんです。でも、こうしてバンドを何年かやっていると、音楽ってそうじゃないなと。特に最近は、時代的にも、ライヴは全員が主役で全員が楽しめるものが一番いいなと思ったので。
-このハイパーな恋愛観と多幸感とで会場が一体化するって、かなり面白いかもしれない。
たねこ:みんなお花畑状態で(笑)。でも、それが理想ではあるかもしれない。恥ずかしいことを言わせたいっていうのもあるので。そんな思いで会場が満たされたらいいなという願いは込められていますね。
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