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INTERVIEW

Japanese

片平里菜

2016年04月号掲載

片平里菜

Interviewer:吉羽 さおり

-片平さん自身、書いたときに自信があったんですね。

そうですね。サビのメッセージは、今までにあまりなかったし。ちょっと達観してる感じが、作りながらも中島みゆきさんの「糸」(1998年リリースのシングル表題曲)とかにも、リンクしていると感じてて。もちろん、あの名曲は超えられませんけど(笑)。そういう曲ができたらいいなと思ったんですよね。

-心の機微と困難を超えていくときの感覚が、繊細且つシンプルに描かれていますよね。特に歌詞の頭の方に出てくる、強くなることで孤独や傷をかき消すという感覚は、これまで片平さんが歌ってきたことだと思うんです。

そうですね。

-後半では"弱くなっていく私を/愛おしい気持ちで守って"というフレーズが出てくる。この、鎧を脱いだ感じがすごくいいなと思ったんですね。

うん、弱くなりたいんです(笑)。弱くなりたいなって、最近思ってて。じゃないと誰からも愛されなくなっちゃいますからね(笑)。特に女の子は、強くなりすぎるのもよくないのかなって。でも、本当に、弱い自分をいろんな鎧で守ったり、いろんなものを背負って、そういう弱い自分やズルい自分と向き合わず、認めずに生きていってしまうというところが人にはあると思うんです。

-そうやって強くなろうとしてしまうほどに、だんだんと人のことも見えなくなってしまうこともありますね。

そうですね。弱いことを認めることで、わかることもあったり。

-これはアニメの台本からのインスピレーションですか。

アニメの内容として、結構クセのある人たちが集まってる印象があったんですよね。でも、ほんとはただの弱い人間なんだよっていうのを認めて支え合うことができたら、互いの傷も癒すことができるんじゃないかと思って。傷や痛みを知っているからこそ、人にやさしくできるんだよっていうことを知ったときに、過去が無駄になっていないことがわかる。アニメを通してその感じを味わいながら、観終わったあとに、この曲を聴いて自分に返ってもらえたら素敵だなと思ったんです。

-そこでこのタイトルの"結露"なんですが、とても印象深い言葉ですよね(笑)。

そうなんです。でも実は文字の意味合いというよりは、"結露"という文字の形というか、字面がいいなと思ったのが最初だったんですよね(笑)。でもアニメでの、閉鎖している家の中、閉塞感の中で、何か結露のように張りついているものというイメージがあって、ビビッときたんですよね。アニメの内容的には、なかなか本音を表に出せなかったり、心に闇を抱えてたりする30名がひとつの場所に集まって、その中でトラウマを解消していくっていう感じの話なんですけど。その過程で、いろんなものや思いが露わになっていく。そこからイメージしたものが、"結露"という言葉に結びついたんだと思うんです。

-パッと思い浮かんだ言葉だったんですね。

このウェットなサウンドの感じにも合っていると思いますしね。でもほんとこの文字の感じも好きなんですよね。"結"という現実的な感じと、雨に路と書く"露"の感じがよくて。すごく感覚的なタイトルですけど、歌詞の中の言葉だとタイトルとしては弱いなと思っていたので、この言葉がぴたりと合った実感がありました。あまり歌には使わない言葉なのも、いいなと。

-すごく謎めいたタイトルで、どんな歌だろうと聴いてみると、そのタイトルの意味合いみたいなものがぼんやり浮かび上がる感覚がありますね。今回はタイアップで、自分の得意分野でスタートしながらも、新しいことにチャレンジをしているし、アルバム・リリース後ということも考えると新鮮でこれからに繋がりそうなシングルになっていますね。

正直、あまりポップとは言えない曲をこうして表題曲でリリースできるようになったことが、進歩だなと思うんですよね。2ndアルバムまではとにかくいろんなことをやってきて、自分の中でのいろいろな曲をポップスとして昇華してきたからこそ、今こうして自由にできているのだと思うので。これからも何かにとらわれずに、やってみたいことを貪欲にやりたいですね。

-アルバム・ツアーを終えた、この先見ているものは何かありますか。

アルバムのツアーが終わったあとにも、今度は弾き語りツアーがあるんです(笑)。個人的にも暖かくなってどんどん外に出たい、旅したい気分ではあるので、それはマイペースに歌いながらやっていきたいですね。あとは、せっかくここまでバンドでやってきて、すごくいい感じになっているので、この夏もバンド・セットでいろんなライヴに出たいなという気持ちでいますね。

-新たな曲へのアプローチとしてはどうですか。

これまで結構、いろんなバンドやアーティストさんやアレンジャーさんと楽曲制作をしてきて。もちろん自分の核となるメロディと言葉と意志というものがあって、そこに肉づけしていくという曲の作り方だったんですよね。それをやり尽くしたというわけではないんですけど、最近は一度ちょっと骨だけになりたいなっていう気持ちでいるんです。

-いろいろチャレンジしてみた後の自分の素の姿をもう一度見てみたい?

はい。というのは、強くありますね。

-では、この『結露』がリリースされるってことはすごくいい方向に向かっているんじゃないですか。

ほんとにそう思いますね。今回はまたレコーディングでもワクワクしていて、楽しいものになったので。この先もすごく楽しみですね。