Japanese
片平里菜
2020年01月号掲載
Writer 山口 智男
主人公の1年間の成長を物語る12曲に、様々な転機を経た彼女自身の想いが滲む充実のコンセプト・アルバム
片平里菜が1月15日に4枚目のオリジナル・アルバムをリリースする。タイトルは"一年中"。3rdアルバム『愛のせい』から2年1ヶ月ぶりとなる。これまでおおよそ1年半から2年に1枚のペースでオリジナル・アルバムをリリースしてきたことを考えると、もともとアルバム作りは焦らず、一枚一枚じっくりと取り組むタイプのアーティストなのだと思う。
だから、これまでで最長のインターバルとはいえ、2年1ヶ月ぶりというのは、彼女のペースという意味では、これまでと変わらない。しかし、今回はファンを待たせてしまったという気持ちがあるのか、彼女いわく"お待たせしてしまったので、次は一年中そばにいられるように"という思いのもと、制作に臨んだという。
それで、タイトルは"一年中"。
『愛のせい』と今回の『一年中』の間にTHE BACK HORNを迎え、再レコーディングした「最高の仕打ち」を含むベスト・アルバム『fragment』をリリースしているから、実はリリースとしては1年2ヶ月ぶり。それでも"お待たせしてしまった"と彼女が感じるのは、メジャー・デビュー前から所属していた事務所を、2018年5月末に離れ、その半年後に個人事務所を設立したことをはじめ、彼女のキャリアに訪れた様々な転機が、ひょっとしたらファンを少なからず心配させたんじゃないかという思いがあるせいかもしれない。例えそれが前向きなものだったとしても、時に変化は人をワクワクさせると同時にドキドキもさせるものだ。
"一年中そばにいたい"という気持ちはもちろんだが、もし心配しているファンがいるなら安心させたい。もしかしたら、今回アルバムを作るにあたっては、そんな気持ちもあったんじゃないか。
ギター1本あれば、どこにでも出かけていって、ひとりで歌えるシンガー・ソングライターだ。そんなフットワークの軽さを生かして、ライヴは精力的に続け、新曲も披露してきた。あとはどこに出しても恥ずかしくない自信作を作ればいいだけ。
そして、完成したのが『一年中』というアルバムだった――なんて、勝手に制作のバックグラウンドを想像してみたが、今回の片平里菜は挑戦的だ。これは勝手な想像なんかじゃあ、ない。
"一年中そばにいられるように"という前掲の彼女のコメントには、実は続きがある。
"季節を感じながら歩んでいく12曲を作品にしました"
つまり、『一年中』は、春夏秋冬をモチーフに1年=12ヶ月にわたる主人公の人生を、様々な出来事や感情の動きとともに描いた12曲からなるいわゆるコンセプト・アルバムなのだった。
それで、タイトルは"一年中"。
共通するひとつのテーマやストーリーを持った楽曲からなるコンセプト・アルバムという表現スタイルは、THE BEATLESの『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』をはじめ、数々の名盤が作られた60~70年代、ティーネイジャー向けのポップスに過ぎなかったロックを、クラシック音楽にも負けない芸術に高めるという大きな成果を残した。その後、表現スタイルが形骸化してしまい、70年代後半、ロックの原点に回帰したパンク・ロックに駆逐されたコンセプト・アルバムというスタイルを、21世紀に蘇らせたのが21世紀を代表するパンク・バンド、GREEN DAYの『American Idiot』だったところが面白い。時代遅れと判断され、愛好家だけに認められていたコンセプト・アルバムに今一度、GREEN DAYが息を吹き込むことができたのは、ポリティカルなメッセージを訴え掛ける手段として、ロック・オペラ仕立てのコンセプト・アルバムというスタイルが有効だったからだが、コンセプト・アルバムどころかアルバムというフォーマットが熱心なファンや愛好家だけに求められるものになっている今この時代に、あえてコンセプト・アルバムを作る片平里菜を挑戦的と言わずになんと言えばいい?
収録曲の選曲、曲順、そして曲間まで、アーティストがこだわりながらアルバムを作ったとしても、リスナーが聴きたい曲だけを選んで聴けるサブスク全盛の時代。逆に、そういうリスナーにアルバムという作品を手に取ってもらうには、全12曲を聴いたとき、ひとつの世界観が完結するコンセプト・アルバムという表現スタイルは案外、有効なのかもしれない。今回、彼女がそこまで考えていたかどうかはわからない。
単純にアルバムを待っていたファンのそばに"一年中そばにいられるように"という思いを込めながら、彼女いわく"自分を新しく作っていくことを意識して挑戦してきた1年間"を表現するためには、その1年=12ヶ月の心象風景を、12の楽曲に託すというやり方が一番相応しかったからというだけなのかもしれない。が、理由はともあれ、片平里菜は時間をかけ、そこにしっかりと思いを込めながら、ひとつの作品を作り上げることに歓びを感じるアーティストだということと、彼女が優れたストーリーテラーだということを、今一度、アピールできると考えるなら、『一年中』を作った意義は大いにある。
『一年中』はアコースティック・ギターの弾き語りに若干のアンビエントな音色を加えた「デザート」で始まる。主人公の愛を求める気持ちを歌ったスロー・ナンバー......と言っても、どこか波乱を含んでいるようにも思え、決して甘くはない。そこから2曲目の「冬の魔法」で物語はテンポ・アップする。ベースがグルーヴィに鳴るフォーク・ロック調のポップ・ソング。そして、そこに描かれている舞い落ちる雪の中、無邪気に笑う恋人たちの姿が、すでに過去のものであることが、3曲目の「ラズベリータルト」で明かされる。そこから主人公の心の旅が始まるのだが、片平里菜がそこで歌うのは、別れを経験した主人公が新しい恋に出会いながらも、決してそれだけに溺れず、改めて自分と向き合いながら成長していく物語だ。その中で変わっていく季節がいろいろな表情を見せるように"一日中 抱き合ってる"と、どこか刹那的にアコースティック・ギターで弾き語る「一日中」のような官能的な曲がある一方で、人生を謳歌している同世代の女性にエールを送るはつらつとした「JUMP」や、ファンに"ありがとう"と歌い掛けているようにも聴こえる「オレンジ」のような曲もあるところがいい。
バンドの演奏は、片平里菜自ら奏でるアコースティック・ギターも含め、エレクトリック・ギターがキラキラと鳴るフォーク・ロック調が中心になっているが、フォーク・ロックと言っても、60年代のそれでも、80年代のネオアコでもなく、シンセ、打ち込みのビート、轟音ギター、ピアノ、ウクレレなどを使いながら、曲ごとに趣向を凝らしたサウンドメイキングは、まさに現代風。90年代のオルタナを通過した感性がそこここに息づき、アルバムの聴きどころになっている。
そして、物語は今一度確かなものにした夢を叶えたいという気持ちとともにピアノ・ポップの「晴天の兆し」で"快速で行くよ"と歌い、ピアノ・バラードの「明日には」で自分の可能性を信じながらいったん幕を下ろす。20代後半の女性と思しき主人公の成長物語は、誰もが共感できる普遍的なものだが、前述した「オレンジ」をはじめ、曲によっては片平里菜自身の心情吐露に思えるところが興味深い。そこには様々な転機を迎えるなかで感じたり、思ったり、考えたりしたいろいろな想いが反映されているに違いない。ちなみに「オレンジ」は東日本大震災以降、地元福島をはじめとする様々な被災地に足を運び、震災復興イベントに出演しながら現地の人たちと交流するなかでできた曲だそう。フィクションとしてももちろん聴きごたえはあるが、虚実ないまぜになっていると思えば、言葉ひとつひとつの聴こえ方もまた違うものになる。『一年中』は、そんなところも想像を膨らませながらじっくりと味わいたい充実作なのだった。
VIDEO MEASSAGE
▼リリース情報
片平里菜
4thアルバム
『一年中』
2020.01.15 ON SALE
PCCA-04887/¥3,000(税別)
amazon
TOWER RECORDS
HMV
[PONY CANYON]
1. デザート
2. 冬の魔法
3. ラズベリータルト
4. sunny(album mix)
5. 夏が待ちきれない
6. 一日中
7. JUMP
8. 赤い目の空
9. bloom in the city(album mix)
10. オレンジ
11. 晴天の兆し
12. 明日には
「ラズベリータルト」、「冬の魔法」先行配信はこちら
- 1
LIVE INFO
- 2025.02.22
-
ビレッジマンズストア
おいしくるメロンパン
四星球
kobore
Vaundy
リアクション ザ ブッタ
OKAMOTO'S
ラックライフ
SILENT SIREN
osage
くるり
WtB
大原櫻子
MYTH & ROID
ぜんぶ君のせいだ。× TOKYOてふてふ
映秀。
THE BACK HORN
tacica
Aimer
MAN WITH A MISSION
ザ・ダービーズ
"ブクロック!フェスティバル2025"
4s4ki
go!go!vanillas
Appare!
さとうもか
THREE1989
eastern youth
片平里菜
DENIMS / 大黒摩季 / Ryu Matsuyama(O.A.)ほか
藍坊主
Czecho No Republic / YONA YONA WEEKENDERS / CHIANZ ほか
LEGO BIG MORL
wacci
アーバンギャルド
9mm Parabellum Bullet
- 2025.02.23
-
リアクション ザ ブッタ
Vaundy
ビレッジマンズストア
OKAMOTO'S
THE YELLOW MONKEY
Hedigan's
RAY×BELLRING少女ハート
w.o.d.
SCOOBIE DO
AIRFLIP
WtB
ぜんぶ君のせいだ。× TOKYOてふてふ
DIALOGUE+
moon drop
BIGMAMA
Czecho No Republic
GREEN DAY
tacica
Appare!
⾬模様のソラリス
阿部真央 / wacci / アルカラ ほか
コレサワ
片平里菜
- 2025.02.24
-
4s4ki
OKAMOTO'S
アイナ・ジ・エンド
ラックライフ
くるり
w.o.d.
SCOOBIE DO
Panorama Panama Town
女王蜂
moon drop
THE BACK HORN
kobore
WANIMA × MONGOL800
ぜんぶ君のせいだ。× TOKYOてふてふ
東京初期衝動
go!go!vanillas
Appare!
ZEDD
大原櫻子
SAKANAMON / 藍坊主 / SPRINGMAN / omeme tenten
KiSS KiSS × 豆柴の大群都内某所 a.k.a. MONSTERIDOL
SpecialThanks
フレデリック
"ブクロック!フェスティバル2025"
Nothing's Carved In Stone
indigo la End
tricot
- 2025.02.25
-
NEW ORDER
This is LAST / the shes gone / reGretGirl
THE ORAL CIGARETTES
GREEN DAY
サカナクション
秀吉
the paddles
- 2025.02.26
-
ZEDD
This is LAST / the shes gone / reGretGirl
UNISON SQUARE GARDEN
anewhite / 3markets[ ] / ガラクタ
TOOBOE × Chevon
ザ・シスターズハイ
GREEN DAY
米津玄師
サカナクション
- 2025.02.27
-
WANIMA × MONGOL800
片平里菜
マカロニえんぴつ
ザ・ダービーズ / THE NOiSE
UNISON SQUARE GARDEN
NOT WONK
SILENT SIREN
NEW ORDER
米津玄師
- 2025.02.28
-
miwa
WANIMA × MONGOL800
打首獄門同好会
FUNKIST
マカロニえんぴつ
GLIM SPANKY
そこに鳴る
ANABANTFULLS
ラックライフ
女王蜂
オレンジスパイニクラブ
Dear Chambers
礼賛
RAY
カズミナナ / Lay / sEina / 栞寧
- 2025.03.01
-
ストレイテナー
サカナクション
Vaundy
moon drop
ぜんぶ君のせいだ。× TOKYOてふてふ
片平里菜
THE BACK HORN
Czecho No Republic
4s4ki
FUNKIST
リアクション ザ ブッタ
tacica
miwa
藍坊主
TENDOUJI
This is LAST
バンドじゃないもん!MAXX NAKAYOSHI
w.o.d.
さとうもか
MAN WITH A MISSION
ザ・ダービーズ
osage
フラワーカンパニーズ
9mm Parabellum Bullet
PIGGS
Lym
YOGEE NEW WAVES
大原櫻子
"見放題東京2025"
映秀。
くるり
kobore
shallm
- 2025.03.02
-
ぜんぶ君のせいだ。× TOKYOてふてふ
Vaundy
サカナクション
moon drop
片平里菜
GLIM SPANKY
FUNKIST
猪狩翔一(tacica)
go!go!vanillas
秀吉
ゲスの極み乙女×ブランデー戦記
かすみん(おこさまぷれ~と。)
9mm Parabellum Bullet
さとうもか
MAN WITH A MISSION
藍坊主
WONK
w.o.d.
空白ごっこ × クレナズム × Hakubi
佐々木亮介(a flood of circle)/ 荒井岳史(the band apart)/ hotspring ほか
BRADIO
眉村ちあき
LACCO TOWER
Hedigan's
くるり
I Don't Like Mondays.
Halujio
フラワーカンパニーズ
センチミリメンタル
- 2025.03.04
-
片平里菜
三四少女
礼賛
輪廻 / マリンブルーデージー / CARAMEL CANDiD / サブマリンオルカ号
ZOCX
This is LAST / the shes gone / reGretGirl
サティフォ(ONIGAWARA)
- 2025.03.05
-
Apes
アイナ・ジ・エンド
Yogee New Waves
マカロニえんぴつ
Cody・Lee(李) / 浪漫革命 / SKRYU
SIX LOUNGE
UNISON SQUARE GARDEN
- 2025.03.06
-
片平里菜
Yogee New Waves
マリンブルーデージー
三浦透子
アイナ・ジ・エンド
a flood of circle
マカロニえんぴつ
荒谷翔大 × 鈴木真海子(chelmico)
SAKANAMON
UNISON SQUARE GARDEN
- 2025.03.07
-
フラワーカンパニーズ
四星球
THE YELLOW MONKEY
ビレッジマンズストア
kobore
礼賛
カメレオン・ライム・ウーピーパイ
SCANDAL
THE BACK HORN
OKAMOTO'S
w.o.d.
ズーカラデル
ザ・ダービーズ
YAJICO GIRL
リュックと添い寝ごはん
レイラ
- 2025.03.08
-
Lucky Kilimanjaro
never young beach
四星球
リアクション ザ ブッタ
a flood of circle
サカナクション
GRAPEVINE
SUPER BEAVER / 東京スカパラダイスオーケストラ / WurtS ほか
片平里菜
WONK
MAN WITH A MISSION
ぜんぶ君のせいだ。× TOKYOてふてふ
moon drop
礼賛
osage
GLIM SPANKY
秀吉
SCANDAL
おいしくるメロンパン
OKAMOTO'S
w.o.d.
mzsrz
BLUE ENCOUNT / 崎山蒼志 / CHiCO ほか
PIGGS
FINLANDS
sumika
緑黄色社会
Nornis
go!go!vanillas
Aimer
- 2025.03.09
-
さとうもか
四星球
a flood of circle
サカナクション
マカロニえんぴつ / Saucy Dog / ヤングスキニー ほか
osage
君島大空
yama
ぜんぶ君のせいだ。× TOKYOてふてふ
moon drop
KALMA
kobore
リアクション ザ ブッタ
4s4ki
THE BACK HORN
GLIM SPANKY
OKAMOTO'S
ズーカラデル
FUNKIST
Co shu Nie / 七海うらら ほか
FINLANDS
SCOOBIE DO
Base Ball Bear / 橋本絵莉子
miwa
藤巻亮太
go!go!vanillas
Aimer
RELEASE INFO
- 2025.02.25
- 2025.02.26
- 2025.02.27
- 2025.02.28
- 2025.03.01
- 2025.03.04
- 2025.03.05
- 2025.03.07
- 2025.03.12
- 2025.03.14
- 2025.03.19
- 2025.03.26
- 2025.03.28
- 2025.04.01
- 2025.04.02
- 2025.04.04
FREE MAGAZINE
-
Cover Artists
フラワーカンパニーズ
Skream! 2025年02月号