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INTERVIEW

Japanese

グッバイフジヤマ

 

グッバイフジヤマ

Member:小島“lue”秀和(Gt) 中澤健介(Ba) 中山卓哉(Vo/Gt) 高原星美(Dr)

Interviewer:山元 翔一

-あ、「Let It Be」はPaulの曲ですもんね。

中山:JohnがいなくなったあとにPaulがインタビューでまったく同じことを語っていたんですよ。"煮詰まったときにそこにいるはずのない君に語りかけてしまう"って、Johnに対して言っているんですよ。だからこの曲は僕とPaulから見たJohn Lennonについて歌っている曲ですね。で、サビの"STAND BY ME"はPaulが言っているという空想で書きました。他人とわかりあうことなんてできないと思うし、そんなことはないとも思います。この「レノンとマッカートニー」は僕が勝手に書いた曲だけど、僕の空想の中のPaulは"そばにいてよいつまでも"ってJohn Lennonがカバーした「Stand By Me」のオマージュで歌っているわけだから。わかりあおうとはしてるのかな?って思います。

-Track.3「やまぐちみかこに騙された」は大槻ケンヂ原作の小説"グミ・チョコレート・パイン"をモチーフにした楽曲ですね。原作に通じる"つまらない奴らと僕との違いは何もない""結局僕には何もないんだ頭でっかちの空っぽでした"という歌詞もありますが、中山さん自身は、この小説の主人公の大橋少年に共感する部分であったり、存在を重ねたりする部分はありますか?

中山:そうですね。17歳のときにこの"グミ・チョコレート・パイン"を読んだので自分と重ねてしまう部分はたくさんあります。やっぱり当時の自分も17歳特有の"自分は何か特別なものがある"っていう勘違いをしている凡人のひとりで、イケてる奴を妬んで。でもイケてる奴はイケてる奴で実は悩んだりもしていて。他人だって自分とそんなに変わらないのに決めつけちゃって、カテゴライズして......。でももう17歳ではない27歳の僕だから、というかみんな思うんですよね、きっと。"つまらないと思っていた人は僕と何も変わらないんだ""考えも変わらない同じ人間なんだ""そしてそんなことがわからなかった自分が情けない"っていう曲ですね。そして自分をそんなふうに思わせてしまった"グミ・チョコレート・パイン"の山口美甘子に騙された、っていう曲です。

-Track.4「はっぴいえんど」では、幸せな結末を期待しても叶うことはないという人生における報われなさや、漠然とした憂鬱を描いていますよね。サウンド的にはいわゆるシティ・ポップ然とした部分がありつつも、その括りとは異なる精神性のもとに作られた楽曲なのかなとも感じました。

中山:ある本を読んでいて、主人公の女の子が恋をしてはっぴいえんどを聴いているんですよ。けどその話は、というかその作者の作品はいつもあまりいい結末ではなくて、それがリアルだなって思ったんです。この曲は、"人生ってなかなかハッピーエンドはこないよな""わかってるけど期待しちゃうよな"という気持ちをそのまま書いた曲で、幸せな結末の"ハッピーエンド"と、バンドの"はっぴいえんど"がたまたまかかっている曲です。サウンドについては、はっぴいえんどはまったく意識していません。この曲は2年前くらいにできた曲なんですが、その当時はこういう曲をやっているバンドはあまりいませんでしたね。で、そのあとHAPPYとかYogee New Wavesとかが出てきて、この曲とはちょっと違うかもしれないけどシティ・ポップの要素が強い音楽が話題になって。そういう意味では、はっぴいえんどの影響が色濃い音楽が再燃しているこのタイミングでこの曲をリリースするのが少し嫌な気分ですね(笑)。

-またこの曲のMVにはゆるめるモ!の、あのさんが出演していますよね。このMVではどんなことを表現したかったのでしょうか?

中山:これから17歳を通り過ぎる人たち、今17歳を通り過ぎている人たち、17歳を通り過ぎた人たち――昨日、今日、明日の17歳に向けて作ったミニ・アルバム『スイートセブンティーン』のジャケットとその中の楽曲のMVに、若さから溢れ出る"今"の輝きをパッケージしたかったというのが理由です。そこで、僕らがファンであるゆるめるモ!のあのちゃんにオファーしたところ、快諾していただけました。

-Track.5「めんどくさがりな僕とおせっかいな君」は実話に基づいた楽曲のように思えたのですが、どういった想いが込められていますか?

中山:僕はいつもいつもめんどくさがりで、"めんどくさい"が口癖で、大学のころに3年間付き合っていて同棲もしていた彼女によく"めんどくさいって言うのやめなよ"っておせっかいなことを言われていたので、それを書いてみました。

-Track.6「スイートセブンティーン」はいわゆる表題曲ですが、後悔や退屈、孤独といった今作の鍵となる要素が詰め込まれています。今作とこの楽曲を通して、なぜ後悔、退屈、孤独といったことが表現されているのでしょうか? また、その根底にはどんな想いがあるのでしょうか?

中山:「やまぐちみかこに騙された」に繋がるんですけど、やっぱり17歳くらいの年齢のときって他人と自分は違うと思い込んで、ただがむしゃらに進んで後悔をして、何もわからないしどこへも行けないし力もないし退屈でしょうがなくて、周りが輝かしく見えてしょうがなくて。で、自分は特別だという思いから中途半端な孤独を選んで、それを拗らせてしまって......。全然楽しくなくて、全然良くなかった17歳だけど、それでも輝かしく見えてしまうのは何なんだろうという思いでつけたのが"スイートセブンティーン"というタイトルです。

-中山さんはブログでもジャンルで括られることやカテゴライズされることの窮屈さを綴られていますよね。あらゆる面で供給過多な時代において、ジャンルやカテゴリーは良くも悪くも重要な指標となってしまうと思います。そういった時代背景においてグッバイフジヤマはどんな音楽を鳴らすべきだと考えますか?

中山:こういう質問をされるアーティストは多いと思いますし、みんな多分こう答えるんです。"ジャンルやカテゴリーに縛られることなく、僕らなりのいい音楽を鳴らしていきたいです"。たしかにその通りなんですけど、そんなことをしたうえでもジャンルに縛られてカテゴリーにわけられて、インスタント・ミュージックとしてこの時代に殺されてしまう音楽がたくさんあると思うんです。それはとても悔しいなと思ってて。そういう思いがあったうえで"ではそんな中で自分たちはどんな音楽を鳴らすべきか?"と問い直すと、まあ自分たちらしく何にも捉われずにやるべきだなと思いますね(笑)。

-こういった時代に対して中山さんはどういったことを必要とし、求めますか?

中山:何でも手に入りやすいから思い入れが少ないってこともあるし、本当は不便なことがとても愛おしいことなんだなって最近強く思っています。でも、1度進んだものは戻れない。便利だから人と直接関わらなくてもいろいろなことができてしまいますが、便利なことを否定するのではなくて、人と関わることを避けない時代になったらいいなって思いますね。やっぱり文字だけじゃわからないし画面越しじゃわからないし、例えばライヴは生で観るとすごく迫力があって生で聴くとすごく楽しくて。連絡を取り合っている人だって、直接会うと喧嘩もするし楽しく笑い合えるし、いろいろなことを共有できることが大事だなって思います。

-今作をリリース後、10月25日には念願の渋谷CLUB QUATTROでのワンマンがありますね。グッバイフジヤマとってこの日はもっとも重要な瞬間のひとつとなると思いますが、今の気持ちとライヴに対する意気込みを教えてください。

小島:精一杯やろうと思ってます。絶対成功させようと思ってます。

中澤:もしもこの日が失敗したとしたら、二度と立ち直れないくらいの挫折をするくらいの気持ちで挑もうと思います。

中山:僕はこのワンマンが成功しようが失敗しようが特に何も変わらないと思うんですけど、だけど今まで出会ったたくさんの人に"今のグッバイフジヤマ最高だよ"って伝えたい。たくさんの人に会いたいと思って大きいところでやろうと思いました。憧れの舞台、絶対成功させたいと思います。

高原:何の因果かわかりませんが、僕がSTANCE PUNKSのワンマンを観に初めて渋谷CLUB QUATTROに行ったのが17歳のときのことでした。自分がバンドを始める前に憧れの人が立っていた舞台に初めて立てる日ですし、グッバイフジヤマの"初めての" 渋谷CLUB QUATTROはこの日しかないので絶対に絶対に成功させたいです。