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INTERVIEW

Japanese

the twenties

2015年04月号掲載

the twenties

Member:タカイ リョウ (Vo/Gt) ウルマ ヒロユキ (Gt) 徹 (Ba) アンソニーダイナソー (Dr)

Interviewer:天野 史彬

-「ポニカ」では"「いいんだよ」byロックンロール/「いいじゃん」byロックンロール/いいのか? ロックンロール 不安でしょうがないんだ"とも歌っていますけど、音楽やロックンロールが、自分を"肯定してくれた"という感覚も、タカイさんにはありますか?

タカイ:ありますね。めちゃくちゃあります。今こうやって音楽をやりながらちゃんと生きていけてる部分を考えると、音楽がなかったらどうなってたんだろうって......それは、ほんとに最近よく思いますね。俺って、ほんとダメなんですよ(笑)。でも、ロックンロールを聴いてると、外人でも超クズな人とかいるじゃないですか。ドラッグしまくったり(笑)。でも、どんなに私生活がダメダメでも、そういう人もステージに立つとカッコよく映るんですよね。そういう姿を見て、"別に俺でも大丈夫か"って思えたというか。あんな人たちでも音楽があればこんなにカッコよく映るんだから、俺もダメダメでもいいやって。音楽さえあればいいやって思って、その歌詞は書いたんです。

-じゃあ、今のthe twentiesの音楽が、自分と同じように自分をダメだと感じている人とか、「ポニカ」の歌詞にあるように自分を"社会不適合者"だと思っている人の居場所になって欲しいという思いはありますか?

タカイ:それ、めちゃくちゃ思います。そういう人たちに届いて欲しい。"俺ってクソだな"とか、"なんの取り柄もねぇな"って思ってる俺みたいな奴に俺らの音楽を知って欲しい。そこで俺と同じようにバンドやって欲しいとは思わないけど、"お前と同じようなやつがいるんだよ"って知って欲しい。俺が昔、"ダメでも音楽やっていけば意外と生きていけるんじゃないか?"って思ったのと同じようなことを感じて欲しい。今って、"自分、根暗だぜ"ってことを歌う音楽か、超ポジティヴな音楽か、甘ったるいラヴ・ソングか......そんなのばっかりだなって思うんですよ。歌う人の生き方とか環境が言葉として出てくる音楽が全然聴こえてこない。それなら自分は、ありのままの自分の言葉を使って歌詞を書こうって思います。俺が知らないだけかもしれないけど、でも、今そういうのはヒップホップのほうが多いですよね。ロック・バンドは一般受けを狙った言葉ばかりを書いてるし、その方が実際、ウケもいいし。でも俺がそれをやっちゃうと、俺が今まで生きてきた環境をなかったことにしてしまうような気がするんですよ。それなら、俺はバンバンぶちまけちゃろうっていう想いはありますね。俺らは、素性をぶちまけている、人間として出しているロックを、踊らせるサウンドに乗っけて出したいんですよね。

-みなさんは、今、タカイさんが語ってくれたような想いを同じように感じることはありますか?

ウルマ:生きてきた環境が違うから、共有することは難しいと思うけど、でも、この人(タカイ)がやりたいこと、発信したいことをどれだけ表現できるかっていうことでしかないと思うんですよね。この言葉を届けるために、どれだけ斬新なサウンドを出すかっていうことはあると思いますね。

-タカイさんの言葉を届けたいという意識は強くあるんですね。

徹:届いて欲しいですよね、やっている以上。

ウルマ:メロディを邪魔するようなリフは弾きたくないし、ヴォーカルを殺すようなリフも弾きたくないですね。そんなの、いくらでもできるんですよ。でも、それをやっちゃうとソロになっちゃうので。歌を歌う主人公がいるんだから、それを邪魔しちゃいけない。イントロのギターのリフで興味を持たせないと、歌詞が始まるAメロにもいかないですから。そういう面では、いかにフロントを出すのかっていうのは後ろの3人は考えていると思いますよ。

アンソニー:うちら3人がサウンドとしてやることは、歌がダイレクトに届くための後押しっていう部分はあると思いますね。

-さっき、タカイさんは"狭間で生きてきた"って仰いましたけど、それって、音にも表れていると思うんです。the twentiesの音楽って、曲自体はダンサブルでキャッチーだけど、言葉はディープで内省的だし。そもそも音楽が現実を忘れさせてくれる救いでもあり、現実を突きつける呪いでもあったっていう、その両義性がthe twentiesそのものなのかなって。

タカイ:両極端なんですよね。踊るのって楽しい感じだけど、俺らはサウンドが狂気的だったり、言葉が全然踊れる感じじゃなかったりっていう、そのギャップの中でお客さんが笑いながら踊ってたり、泣きながら突っ立ってるのをステージから見るんですよ。それが俺の中では面白いなって。そういう光景を見て、the twentiesってこういうバンドなんだなって改めて思うんですよね。そもそも、俺が今まで楽しんでたのは、単純に踊るロックなんですよ。で、感情的に突き刺さってきたのが、Kurt Cobain(※NIRVANAのフロントマン)みたいな存在で。このメンバーでやるとそれが混ざって、音自体は楽しい感じになるけど、俺が歌詞を書くと内情が出てくるんですよね。でも、今まではそれを意識してなかったんですよ。踊らせるサウンドの中に俺の感情を出していこうっていうわけではなくて、ただ自然とやっていた。でも、お客さんの反応を見て、あ、こういうことなんだって気づき始めて。リズムに乗って楽しんでる人がいる反面、言葉を聴いてボロッボロ泣いてる人とかいますからね(笑)。

ウルマ:こっちから見ると、光景が面白いよな。場全体が同じ空気になるんじゃなくて、それぞれが各々の反応をするのが面白いんですよね。

-なるほど。あと、Track.4の「keiki hAppy」では、社会的な言葉を歌詞で書いていますよね。the twentiesの音楽が、今の日本の社会とか、時代感に対して突き刺すものであって欲しいという思いもありますか?

タカイ:う~ん......正直、そこまでは考えてないですね。社会情勢を突き刺す歌を歌っていこうっていう意識は、なくもないんですけど、そんなに強くもないです。ただ、今回そういう歌詞を書いたのは、今、すごく不思議な世の中に生きてるなって思って。歌詞のそのままなんですけど、電球って、ほんとは5万時間光らせることができるし、5万時間光る電球を作る技術も人間は持ってるのに、それをあえて作らずに、2,000時間しか光らない電球を作って、それを売って、そのサイクルでお金を動かして、国を動かしていくっていう......そんな人間の、頭のいいようでせこい感じに対して、"これヤバくね?"って(笑)。こういう世の中の矛盾って、実は気づいてない人多い気がするんですよね。なので歌っとこうって。だから社会情勢がどうとかよりも、"俺ら、こんなアホな世の中で生きてるんだぜ?"って感じで書きましたね。たぶん、俺が馬鹿だからこういう書き方になってるんですけどね。頭がいい人は、それをまた上手く丸め込める言葉を持ってるんでしょうけど。でも、バンドって思ったことをポンって言っちゃってもいいものだから。

-今までの話も含めて、踊ることもそうだし、生きることとか楽しむことの裏にある現実とか矛盾を突きつけていく感じはthe twentiesにありますよね。タカイさんも、自分の育った境遇を歌詞に残していくことで、絶対的にその過去を忘れたり、なかったことにはしないわけだから。裏側にある闇の部分を知っているからこそ、踊ることや楽しむことはより切実なものになるんですよね。

タカイ:踊ってる光景って、言ってしまえば、人間には必要ないものじゃないですか。音楽自体、別になくてもいいものなんですけど、でも人はそれを求めるし、踊ると楽しい。それはすごく不思議な感じですよね。......もしかしたら俺は、どこかで踊ってる人を馬鹿にしてる部分もあるのかもしれないです。"この歌で踊るか?"って(笑)。そのへんは、普通のダンス・ロック・バンドとはちょっと違うと思う。今って、振り付けとかつけるバンドも多いじゃないですか。でも、その人が好きなように踊ればいいと思うし、個々のお客さんの感じ方で受け取ることができる音楽がもっと増えればいいのになって思いますね。最近はMVとかで振り付けをわざとつけて、お客さんを同じように楽しませよう、一体感を産み出そうとする音楽を目にするので。それが悪いわけでもないし、今のお客さんもそれを求めてるんだろうから否定はしないけど、でも俺たちはそれとは違う踊らせ方をしたい。人間ひとりひとりの、個人個人の感情で動かしていける音楽をやりたい。楽しさだけを求める人もいいけど、楽しいだけじゃない人にも届いて欲しい。人間的に死んでるような人たちが、この音楽を聴いてる瞬間だけワー!って楽しんで、終わって帰って"はぁ~"って溜息をついてしまうような聴き方もあると思うし。

-でも、その溜息をついてしまう感覚って絶対に必要ですよね。the twentiesが打ち込みを使わない人力であることの理由も、そこにあると思います? 例えば打ち込みのビートっていうのは、均一のリズムが延々と続いていくわけじゃないですか。ハウスなんかがその1番の例だと思うんですけど。でも人力のポップ・ソングだとそうはならない。3分なら3分、その曲が流れている間だけの魔法のようなカタルシスがあって、曲が終われば、そのカタルシスもスパッと終わる。

タカイ:そうっすね。やっぱクラブとか行くと、ズンズンズンって、打ち込みの音がずっと鳴っている中で曲が展開していって、お客さんの気分の落ちる瞬間がないんですよね。まぁ、自分の好みじゃない曲だったら落ちるのかもしれないけど、でも、ずっとビートが鳴ってる中で人が動いてる。今のダンス・ロック・バンドもそういう感じだと思うんだけど、でも俺らは"ダンス・ロック・バンド"じゃなくて、"ロック・バンド"の部分が1番で届いて欲しいんですよね。ロック・バンドとして踊らせているバンドでありたいというか。だから曲が途切れた後も、お客さんが今聴いた音楽を吸収してくれる時間があって欲しいし、お客さんが流れで聴いてる感じが嫌だなって思う。理想と現実のどちらもある、ドラッグみたいな音楽がいいんですよね(笑)。聴いてる瞬間はウワー!ってなるけど、終わると気持ちがすごい落ちるっていう......その落差が激しい音楽がいい。感情が激しいのがいいですね。